過去の職場&就職体験記 (1)大企業での地獄−08
第8話「退職レポート」
(1997年9月執筆)
今回は、退職した後の解放感に浸りながら書いた「就職最前線トーク」です。ノビノビしていますねぇ。余程嬉しかったんでしょうねぇ。N社を辞めて。まだこの時は次にどんな世界が待ち受けているか、知らなかったんでしょうねぇ……。
とりあえず、以下が1997年9月に書いた「就職最前線トーク」です。どうぞ。
入社当初から「いつまで勤めるのかなー」と辞めたい願望100%だった私ですが、ついに9月19日をもってN社を退職いたしました。
我ながらねー…根性が無いことに掛けては最高に根性あるから。まーさー、逃げるが勝ちって言うじゃない?(←完全に自己防衛) 辞めるにあたって結構周りから色々言われましたが。特に友達の親からは言われたわ……。勿論、非難の意味合いで。(影響及ぼすと思って心配だったんだろーなー。実際ムチャムチャ羨ましがられたし)
でもさー、私勤め始めてからずーっと胃が痛かったんだよね。土・日で友達と遊んでる時も、「楽しいなー」って思ってる時も、ずーっとずーっと胃が痛かったのよ。夜になるとジンマシンが出たし……。それがさぁ、「辞める」って決心した途端にこの胃痛とジンマシンが治ったんだわ。
4月から泣き言ばっかりだったのを見てるせいか、凄く親しい友人は「良かったね。辞めて正解だよ」と言ってくれたんですが、中途半端な知り合いからは、もー……。「辞めてどうするの? 本当にそれでいいの? また次の会社が気に入らなかったら辞めるの? 社会でやってけないよ」と畳み掛けて言われたとも。別にお前に食わせて貰おうとは思ってねーよッ!って感じ。こっちだって散々悩んで安定した生活捨てる覚悟決めてるのに、「考えて行動してる?」とか無神経なこと言うし。私の人生のことは貴様より私の方が考えてるわいッ! それこそハゲるほど考えたわッッ!
会社では部長、課長、部の人たち、親しい同期の順に退社宣言していったんだけど、そのずっと後退職日の2日前に営業仲間41人にe-mailで「9月19日をもって退職いたします」って発信したんだ。多くの人は(あまり顔を覚えてないような人まで)「驚いたけど、決めっちゃったなら仕方ないね。これからも頑張れ。君ならやれる」的な軽いメールを4〜5行程度で返信してきたんだけど(さすが営業……)、約1名から凄いメールが来たさ。名前聞いても顔も思い出せないような奴よ。80行くらいあったかな。
内容はかなり正確に覚えてるけど、手元にプリントアウトしたものがあるんだわ(←我ながら根深いものがあるなぁ……) いや、記念にと思って出力したんだわ。えーっと、コレコレ。こんなん。2度読み直した後の気持ちを( )で挿入してみました。
(※注意:なぜ「2度読み直した後の」なのかというと、最初読んだ時はちょっとムッとしただけであまり怒ってはいなかったんだけど、2度目読み直した後にはカンカンだったからです)
平素大変お世話になっております。(←世話なんぞしとらん!っちゅーねん!)−中略− 辞めると聞いて驚きました。貴女の決断は本当に正しいの? 本当に納得してる? 逃げじゃないの?(←私にとっては個を殺して安定した会社にしがみ付く方が「逃げ」なの!)………………。どこにでもいるみたいね。頼んでもいないのに親切かまして的外れな奴……。ねぇ、コレ読んでムカツクのは私の方に問題あるのかな。これって親切と受け止めるべきなんかなぁ……。確かに彼の言っていることは正論だと思うのよ。サラリーマン社会での正論だけど。
誰かに相談した?(←したわい。お前にしとらんだけじゃッ!) 会社なんてどこも同じだよ。(お前は何社知ってるんじゃ) むしろウチの会社は制度とか凄くいいし、酷い会社なんていくらでもあるよ。贅沢言う前に(←いつお前に言ったッ!)自分の居場所の良いところを見たら?
例えば貴女の希望の職に就いたとして、希望通りのことが出来ると思てるの?(……もう……なんなんだよ……お前) −中略− 1年目で何が分かったの?(←じゃあお前は10年目で何が分かるんだよ) コレが嫌アレが嫌って言ってないで(←だから言ってないっちゅーねんッ!!)、自分が何をしたいのかハッキリとした形で人に伝えてみた?(←お前にゃ伝えてないだけじゃッ!)
まぁ貴女は一人で考えるのが得意だろうし、好き嫌いのハッキリしてる人だから、他人が何を言っても影響しないんだろうけど(←私の何を知ってるんだろ。1ヶ月半の付き合いで。しかも話したことすら覚えてない奴なのに) もう一度自分が何を考えているのか確認した方がいいのでは?
前に「物書きになりたい」って言っていたけど、文章を書くならそれこそ色んな経験をしなくちゃならないと思うよ。(←心配しなくても転職先で毎日イベント起こってるわ!) まぁ、貴女は女の子だから、これを機会に色々考えてみるといいかも知れないね。(←私が男でも会社辞めたし、人生考えるのに男も女もあるかッ! ボケぇッ!)
でも貴女の書く文章は面白そうだし、読んでみたいという気持ちもあるな。何か出版することになったら是非知らせてください。(←誰が教えるか! 寝言は寝て言えっ!!)
−以下略−
ただ全然親しくもないのに、こういう内容のメールを送ってくるって言うのは、凄く親切なのか暇なのかお節介なのか、よく分からないよ……。分かることは、この人は骨の髄からサラリーマンで、いわゆる企業社会が基準で生きているんだなーってこと。「大会社を辞める」って言うことが「凄く良くないこと」で、「会社で辛い思いをすること」が「みんなして来た当たり前のこと」っていう諦めが、既に根強く精神を巣食っている、という事実が絶望的に虚しい。
彼にとって会社では「我慢するのが当たり前」「辛いのが当たり前」「それが社会と言うもの」っていう大前提があるのだと思う。半分はその通りだと思うけど、そういう社会に属すことが出来ない人間が飛び出してしまうことに、凄く否定的というか……。なんか……こう……言葉の端々にいちいちカチンと来るんだよねー…。
しかも、そもそも会社辞めて苦しい思いするのは私な訳よ。で、コイツとは縁も所縁もない訳よ。顔も思い出せないような間柄なのに……。二人の間には友情も愛情も無いと言い切れるし、金を借りたことも無ければ、話したことさえ覚えていないような奴なのよっ!? そんな相手に、なんでここまで言わにゃアカンのじゃッ! 貴様は私を産んだのかッッ!って感じよ。
最後の方では「アホか、コイツ」ってなこと抜かしてるし。『でも貴女の書く文章は面白そうだし、読んでみたい…… −略− 何か出版することになったら是非知らせてください』って……――どーゆーつもりぃ?ってカンジ。真面な神経してるならなかなか言えない台詞だよね。私の性格知ってるなら、ちょっと考えれば分かるだろう。誰が教えるかッ!
退職にあたってもう一人との遣り取りも印象に残ってるなぁ。S川っていって同じフロアに配属された唯一の同期なんだけど、コイツ、41人の同期営業マンの中で一番嫌いな奴だったんだわ。なんかこう……キラキラ君なのよ。「僕、頑張ってまーす!」って身体全体で表現しようと躍起になってる人種。一番苦手なタイプ。
研修中から「なーんか鼻につくなぁ……」って思ってたんだけど、日を追うごとに嫌いになったわ。人より早く来て、やる事もないのに遅くまで残ってるタイプの男。「何もなくても残らなきゃ。残業も仕事のうちだよ」とか堂々と言い切ってる彼を見て、正真正銘の馬鹿者だなって思ったこともありました。私は時間内に仕事を終わらせる人の方が優秀だと思っているので、こういう奴は敵ですね。
私は全身で「お前が嫌いだ!」って言ってるつもりなんだけど、まるで気が付かないみたいなのよね。配属されて1週間くらいの時の会話から私とS川の関係が分かると思うので紹介します。奴がわざわざ私の席まで来て話していった会話です。
S川 「調子どう?」………………改めて振り返ると、凄い会話だ……。
鷹瀬 「別に。普通」
S川 「いつもスグ帰ってるよねー」
鷹瀬 「やることあれば残ってるよ。無い時は帰ってるけど」
S川 「仕事は自分で捜さなきゃ駄目だよ。ヤル気ないんだねー」
鷹瀬 「ヤル事もないのにぐずぐず残ってるのって、所詮その程度の人間だよ」
S川 「ばっかだねー。こういうコツコツやってる事が認められるんだよ」
鷹瀬 「はは、どうだかね。アンタ、所詮歯車なんだから、せいぜい使われないように頑張りな」
S川 「自分の事を歯車だと思ってる奴が、所詮歯車なんだよ」
鷹瀬 「自分は歯車じゃないって思ってる奴で本当に歯車な奴が、世の中で一番お気の毒な人種なんだけどね。気付かないってのも幸せかもね」
S川 「相変わらず後ろ向きだねー」
鷹瀬 「はは。同じ方向、向いてないって」
私、結構人間好きだから普段は愛想良いのよ。(残業とか飲み会の時には仏頂面をしてるけど……) だから↑のような会話してたら尊敬してる先輩がぎょっとしてた。その日一日よそよそしくされた。
コイツと会話する度にこんな雰囲気になるから話すのイヤなんだけど、何かっちゃー寄ってくるのよ。で、いちいちカチンと来るコト言い残してくのよね。何が目的なんだろ……。
まぁでも私も酷いこと言い返してるけど。我ながら「ここまで言っていいのかっ!?」って思いながら会話できるのは彼くらいかな。だって普段思っても言えないようなこと全部口にしてるもんな。私こんなこと言われたら殺意抱くな……ってこと言っても、平気で寄ってくるしね。どーゆー神経してるんだろ。厭味通じてないのかな。厭味って通じて初めてその効果を発揮するのよね。通じないとその刃は自分に返ってくるからね。コイツと話すともぅボロボロよ。
でも普段誰にも言えないような痛烈な皮肉言えるからスッキリもするけど(←私の方が余程性格的に問題ある) あっちはあっちで私をバカにしたいらしいんだけどさー……放っとけって感じ。
で、コイツが辞めると聞きつけてまーた性懲りもなく寄ってきたよ。その時の会話から。
S川 「……ねぇ、本当?」……普通出来ないって。こんな会話。時間が経つといい思い出かもな。非常に珍しい体験させてもらってる訳だし……結構楽しい思いさせてもらった訳だし……S川君に感謝するべきなんだろうか……。
鷹瀬 「何が?」
S川 「辞めるって……」
鷹瀬 「ああ、そのこと? 本当だけど」
S川 「えぇ? なんで? 何でオレに相談してくれなかったん?」
鷹瀬 「えぇ? なんで? 何で君に相談しなきゃなんないのぉ!?」
S川 「だって、同期じゃん」
鷹瀬 「冷静になんなよ。『同期である』というコトと『だから相談する』ってことはね、イコールでは結べない事象だよ。『相談する』とイコールなのは『友達』ってことでしょ? だから君には相談しなかったの」
S川 「えー! 何だよ、薄情な奴だなぁ!」
鷹瀬 「だからぁ! 薄いも厚いも、そもそも君と私の間には『情』なんか存在してないんだってば」
S川 「あーでも残念だなぁ……。あとちょっとしか時間ないんだろ? 今度食事でもしようよ。奢るからさ」
鷹瀬 「冗談止めてよ。あとちょっとしか時間無いんだから、有効に使わせてよ」
はっ! 私も古い記憶は完全に美しいものとしてしまう傾向にあるよ。いかんいかん。
なんにしても、大企業の歯車生活はこれで終り。さらばサラリーマン人生。次も一応サラリーマンになる訳だけど、10人の会社じゃ歯車もクソもあるかい、って感じだし。会社のために仕事をしようとは思わないし。私は自分のために仕事をする。
私の心がサラリーマンになることは、この先永遠にないだろう。って言うか、私の場合、結局一度もサラリーマンになったことはなかったけどね。
先行きは不安だし、今度の会社は多分一生いられるような所ではないと思う。でも、今後は鎖に繋がれたような会社生活は送らない。楽しんで仕事をしよう。頑張ろう。行ける所まで行ってみるのも、悪くないだろう。
今はそう思う。今は、ね。