日常エッセイ−13

「エステ業界裏話」

(1999年3月執筆/1999年9月3日加筆)



 職を転々としていると、しかもその就職先にあまり一貫性がないと、様々な人種、様々な業界に触れることが出来る。情報収集にはもってこいで、これこそが転職人生のささやかな特権である。本当にささやかだが。

 話を戻すが、どんな業界でも裏話と言うのは問答無用に面白い。今回は、ある職場で出会った女性から入手した「エステ業界裏話」を紹介したい。男性には関係ない話題(最近そうでもないのか?)だが、参考までに。

 彼女は20代後半の数年間、エステの営業(カウンターレディ?)をやっていたと言う。彼女が教えてくれるエステ業界の裏事情が凄いのなんの。端的に言ってしまえば、「エステって恐い」の一言に尽きる。

 もちろん良い会社もあるそうだが、やはり大概において恐いらしい。
 なんでも、普通の会社というのは、消費者を保護するために高額商品を一度に売り付けない規制を設けているらしいのだが、エステ業界というのは(規制している会社もあることはあるが)、あの大手中の大手エステ・▲・ミ○ードでさえ、その規制を設けていないと言うのだ。極端な例で言えば、1回の契約で100万円を超えるコースを押し付けられることもあるそうで、CMも頻繁に流れているし安心なのでは……という基準は間違っている、と教えて貰った。

 彼女が勤めていたところは良心的なところで、大手のエステ店から流れてくる客が多かったそうだ。彼女の店では最高でも1年ローンで月2万円程度のコースだったらしいが、流れてくる客の中には「現在、月額どれくらいのローンを組んでるの?」と聞くと、20代前半の子で「大体5〜6万円くらい」などと言うケースもあったそうだ。
 5万円って……月給の約4分の1を注ぎ込んでいるのか?!
 いやはや、何と言うか……。大きなお世話だとは承知しているが、どうせなら自分の内面を磨くことにお金を掛けたらいいのに……とか思ってしまう。
 何にしても、女性の綺麗になりたいと願う気持ちは凄いパワーで、そこに付け込む輩がいるのは当然と言えば当然だし、消費者が利口になるしかないのだろう。

 私自身、エステに行こうと思ったことはないので関係ないが、彼女の話を聞いて、こういうことはどこの業界も基本は一緒なんじゃなかろうか、と思い、ちょっと恐くなった……。

 高額のコースを契約してしまった後で正気に戻った客が消費者センターなどに助けを求めても、大概のケースが自分の意志でサインをしてしまっているため、訴えるのが難しいのだとか。それに何よりも訴えるのには相当の根気と情熱がいる。平たく言うと凄く面倒で、大抵は泣き寝入りで終わるらしい。

 エステ業界の客を陥れる一般的な手口として、電話などで勧誘される1回の無料体験コースで、「カウンセリングのため」と称して個室に入れられたら、まず要注意だそうだ。酷い会社に当たれば絶対に逃げられないと言う。実際に彼女が友人の勤めるエステの無料体験コースを受けようとしたところ、その友人から
「ウチの無料体験は止めときな。いくらアンタでも絶対に契約させられるよ」
と警告されたと言う。内部事情を知る彼女でさえ「絶対に契約させられる」って……どんな勧誘なんだろう……。逆に興味津々だ。

 簡単に言ってしまえば、「契約書にサインするまで、客は意地でも逃がさない」という古典的な手口を取るらしいが、このレベルが想像を絶していると言う。
 ──想像を絶する勧誘。うう……っ。是非体験してみたい。こうなると、エステの無料体験よりも、勧誘の手口の無料体験の方がよほど興味深い。

 とにかくこの古典的な手口で、来客者の8割を契約までに漕ぎ着けると言うのだから、なかなか天晴れではないか。営業をやったことのある人間にはこの数字の恐ろしさがよく分かると思う。契約率が8割とは驚異的だ。きっと物凄い営業なのだろう。
 ああっ。是非奇蹟の生還者の2割になってみたい……。

 他にも、脱毛○回コースの回数券を買おうとすると、「1年間有効のパスポートの方がお得ですよ」とそそのかされ、そちらを購入すると、最初の数回は簡単に予約が取れるのだが、4〜5回目くらいから予約がまるで取れなくなり、結局年間のパスポートはほとんど使わない内に予約を取るのを諦めて通わなくなる人がほとんどだそうで、エステ会社側もそれを狙っている……という手口が王道だとか。
 また、お得な商品券と言うのも曲者だそうで、最初によく聞いておかないと、その商品券にも有効期限がある場合があるとか。

 アドバイスとしては──こんなことは常識なのだが、それでも──絶対に1度に高額のコースやパスポートを買わないこと!だそうだ。数ヶ月は様子を見てからでないと、本当に絞り取られることになるらしい。

 永久脱毛も、下手なエステティシャンに当たると、結局は練習台にされて、痛い上に失敗に終わることもしばしばだそうである。永久脱毛とは、毛穴に針を刺して、その針に電気と熱を加えることで毛根を殺す、といった方法らしいのだが(恐いよー……)、これが下手な技術者だと、刺し過ぎたり、角度が悪かったりで、痛い上に毛根が死なず、再び毛が生えてくると言う……。
 聞いてるだけでも恐い。そんな痛い思いをしてさえも永久脱毛ってしたいものなのだろうか……。確かに毎回剃るより全然楽なのだろうが、それでも痛くて恐いよりはマシだと思うのだが……。

 この話をしていた時、私を含めて女性が4人いたのだが、彼女も、他の彼女も脇下の永久脱毛しているという。私以外の3人全員がしているということは、もしかしてそれが主流なのかと思い、なんとなく
「やっぱ永久脱毛って、した方がいいですかね?」
と聞くと、彼女たちはちょっと考える素振りをしてからこう言った。
「うーん……あんま良くないかも……。やっぱさー、脇毛って無意味に生えてる訳じゃないんだねー。脇の永久脱毛した友達、みんな『やらなきゃ良かった』って後悔してるもん」
 意外な発言に、思わず「何で?」と聞いたら、
「今まで脇毛があったお陰で汗がそこで止まってたのが、脇の脱毛してから汗が流れちゃって大変なの。夏なんか悲惨だよー。パンツんトコまで汗が流れてくるもん」
という答えが返ってきた……。

 一見どんなに無価値なものでも、ちゃんと役目ってあるんだなぁ……と、妙に感動した一件だった。
 私も水泳やってるもので、過去に「永久脱毛か……」と考えたこともあったのだが、もうこんな恐いことはさすがに考えない。人生の大半を共に過ごしている大切な、でも憎いアンチクショウなのだ。大事に取っておこう。(←馬鹿)
 しかし恐い……。針刺して電熱流すって……。針刺して電熱……。うーん、うーん……。

 さて、恐い事実ばかりを並べてしまったが、これはあくまでもエステ業界の一面である。基本的には恐い業界らしいが、しっかり選べば良い店もあるらしいので、エステに通うならよくリサーチしてからにして頂きたい。そして何度も言うが、まとめ買いや一気に契約することは絶対に避けるように。

 以上。



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