日常エッセイ−11
「TBS番組『ガチンコ』への投書」
(1999年6月8日執筆)
’99年6月8日(火)、TBSで放送された「TOKIO/ガチンコ」(21:00〜22:00)を観て、私は少なからず愕然とした。日本のモラルって、どうなってるんだ?!と感じたからだ。
まずは観ていない方のために、番組の詳細から説明しよう。
この日のメインの内容は、TOKIOリーダー城島のボランティア企画、第3弾。「人のためになることをしよう」をスローガンに、リーダー城島と長瀬、佐藤珠緒(だっけ?)が新聞に載った、コソボから日本に避難してきた一家を訪れ、「コソボを救おう」と言うのだ。(ちなみに、1弾は献血、2弾は都の財政問題だったらしい)
城島ら(TV局側)は、大阪の親戚を頼りに避難してきたコソボ難民の家族に話を聞こうとするが、その親戚(難民の兄)が最初に現れ、「予約もなく困ります。コソボがどういう現状か知っていますか? もっと勉強してから来て下さい」と冷たく言われ、一時引き下がる。が、その後、リーダーとプロデューサーの2人で説得を開始。結局話だけは聞けることになる。
難民家族は両親と子供が3人。コソボでの壮絶な現状を聞き、珠緒は泣き出す。話を一通り聞き、リーダー城島が「僕たちに何か出来ることは……?」と言うが、通訳役をしていた日本在住の奥さん(日本人)が「ボランティアは本来押し付けるものではない」と抗議。これに対し、城島は見当外れなコメントを返す。
結局、TOKIO側は古着を送ることを決意。自分たちの古着に加え、芸能人の古着を回収する。滝沢からは10万円のヴィンテージのGパン……。その他にもキャミソールや水着なども物色。
余りの内容に呆れ、ガチンコHP上で意見を求めていたので、以下の文章を当日中に投書した。寄せられた意見は、審査の上、HP上に掲載されるという。
いつも楽しく番組を拝見しています。プータローが社会人になるべく頑張っている姿、本日('99/6/8)放送など心温まる勢いで、最初は「おやまぁ」と思って観ていたのが嘘の様に、今では真剣に応援しています。
が、本日の「コソボ難民を救え」は酷すぎます。こんなデリケートな問題を、アポなしで(TVという性質上、実際はどうだか分かりませんが)いきなり訪れ、「お話を聴きたい」には唖然としました。相手の方もおっしゃっていましたが、何も勉強せずに乗り込んでいって、「コソボで大変な事が起っている!さぁ助けよう」などという姿勢で臨むべき問題ではない筈です。「僕たちは新聞でしか知らないので……」と長瀬君は言ってましたが、新聞だけでもしっかり読んでいたらあんなに無神経に訪れることは出来ない筈です。
しかも話を聞ける段階まで無理やり持ち込んだものの、相手の状況をまるで理解していない的外れなリーダーの態度も、観ていてこちらが恥じ入りたい心境でした。相手は「村が焼かれ46人死亡した」「いとこの家族が死んだ」という話をしているのに、「何か出来ることはありませんか」って……。通訳役をなさっていた奥さんもおっしゃってましたが、そんなレベルの問題ではないでしょう。生きている現実が別世界で、コソボの壮絶な現状をチャチな想像力でしか理解できないのは分かりますが、ならばこんな問題を取り扱うこと自体避けるべきです。
あれだけの話を直に聞かされながら、出した結論のお粗末なこと……。「古着を送ろう!」って……。相手は明日生きていられるかも分からない状況下にいる人たちなんですよ? バラエティ番組ではありますが、ここまで手を出した以上、有効な手助けの方法がもっと他にあるでしょう。服を送るよりも、この番組を通してコソボの現状をより正確に日本の視聴者に伝えることの方がよほどコソボのためになります。(幸い、ニュースを観る層とそんなに重ならないでしょうし、こういう番組でコソボ問題を扱えば凄くためになると思います)
しかも送る服が「10万円のGパン」。難民の方がそれを知ったらどう思うでしょう。キャミソールにしても何にしても、平和ボケの国から贈られる見当外れの物資をコソボ国民はどう受け止めるでしょう。同じ日本国民として、「頼むから止めてくれ」という気持ちです。
「人のためになりたい」という想いが100%嘘でないなら、もっと手段を考えた方が良いと思います。どんな番組であれ、せっかく高い視聴率を維持している番組がコソボ問題を取り扱うのは、やり方さえ理性的であれば非常に有効な筈です。戦争や政治問題は決して理解できないような難しい問題ではありません。もっと気軽に、日常的に話し合わなければならないことです。それをふざけた形態を取りながらも、先駆的に取り入れて行くことで、「ただのバラエティ」から「ちょっと先行くバラエティ」に脱却を図ることも出来ますし、それは番組プロデューサーの腕にも掛かっているのではないでしょうか。
多くの若者が観る番組を作る権限を与えられている人が、少しの理性と知性を持って番組を作って下さればいいのになぁ、と思います。「そんなことに主旨を置いてないんだよ」と言うなら、中途半端にコソボ問題など取り扱って欲しくないですし。
今後、是非頑張って下さい。
当然のことながら、私の投書がガチンコのHPに載ることはなかった。審査の上、公表するには不適切と思われたのだろう。ちなみに、この回の放送分の感想で掲載されていた投書は20通ほどあり、
「リーダーの直向きな姿勢に感動しました」という内容一色だった……。
「私も古着集めに協力したい!」
「ガチンコって社会派の凄い番組だと思う!」
多分こんな投書の方が多いのは予想していたが、私のような感想の人は一人もいなかったのだろうか。それとも、「あちゃー」と思うような人はわざわざ投書をしないのか、はたまた否定的な投書はすべて排除されるのか……。
何にしても、日本の行く末が心配になる一件だった。