日常エッセイ−04

「自動車教習所での思ひ出」

(1996年2月執筆)



 ’94年2月、自動車免許を取るために教習所に通っていた頃、私と言えばトラックの運ちゃんを見かける度に胸をトキメかせていた。私は、免許取るのスッゴク苦労した部類の人間なのである。詳細を話せば、仮免の筆記試験は2回落ちたし、技能試験は5回落ちた、という輝かしい経歴の持ち主である。冗談や脚色ではなく真面目に……。

 仮免の筆記試験は、まず模擬テストを受けて50問中45問以上正解でないと受験させて貰えないのだが、その模擬テストなど20回以上受けた。確か。
 模擬テストは無料なので金銭的には問題ないが、その代わり人としてのプライド問題が生じていたように思う。前もって勉強しておけばちゃんと数回で合格したのだろうが、タダならその場(模擬テストを受けること)で勉強しちゃえ!という乱暴な考えでいたのが、そもそもの敗因かもしれない。

 教習所手帳などというものがあったが、私の筆記模擬テストの記録欄は、スペースが足りなくなり紙が2枚ほど付け足してあった、という記憶が残っている……。しかしこれはささやかな自慢だが、このテストで点数が落ちたことは一度もないのだ。初めが20点くらいで、あとは1〜3点ずつ確実に上がっていったのであるッ! うなぎ上りってヤツか?!(言葉の使い方間違ってるのは承知してます……)

 最後、ようやく48点で合格した時など、受付のお姉さんは凄く喜んでいた(これ以上付き合うのがよほど嫌だったのだろう)
 しかし神様もそう甘くはない。本番は100問中95問以上が合格なのだが、30人くらい受験者がいて、不合格は私ともう一人だけだった……。
 合否発表の時、教官が「鷹瀬さん、××さん。お二人はこちらの部屋に来て下さい」って言った時には、成績良すぎて特別に呼ばれたのかと思ったくらい自信があったのだが……(←超ウルトラスーパースペシャル=ハイパーミラクルボンバー大馬鹿野郎)

 しかも、ホウホウのテイで筆記が合格したと思ったら技能では5回も落ちた……。
 技能試験の方も並の落ち方はしなかった。技能試験とは、教習所内にA〜Eまで5つコースがあって、それを70点以上で運転すれば合格する実技テストである。コースは試験当日の朝、試験直前に発表される。点数の付け方は減点方式で、最初の持ち点が100点、減点ランクは5点・10点・20点・その場で失格(検定中止)の4つだ。
 ……私は減点で落ちたことは1回も無かった。5回とも「検定中止」で落ちたのである……。

 1回目は初っ端から接触事故で検定中止。2回目は一時停止の標示無視。3回目は何だっただろうか……忘れてしまった。もうこの頃になると一生免許取れないような気になって、送迎バスの中で黄昏ていた記憶がある。窓を少し開けて涙ぐんだこともあった……。
 それでも4回目はかなり上手く行っていた。なのにあともう少しという所で検定中止……。

 何があったのかと言うと、十字路で脇から他の検定車が飛び出てきたのだ。しかし私の方が優先道路だったので、ブレーキを踏まずにそのまま行こうとした。そうしたら教官に補助ブレーキ踏まれて検定中止……(補助ブレーキ使われるとその場で失格なのである) 後で教官に「惜しかったね」って慰められたのだった。しかし、そんな教官が何を思ったのか思い立ったように訊いてくる。
「左角から車が来るの、見えてなかった?」
 私は何を馬鹿なことを、と言うように、堂々とこう答えた。
「もちろん見えてましたよ」
 すると、教官は物凄く驚いて、
「じゃあ何でブレーキ踏まなかったの?!」
と、勢い込んで言うのだ。私は思わず本音を言った。
『私が勝ーつッ!!』と思って……」
 教官は一瞬言葉を失ってから、肩を落して一言。
「君……それは落ちて当然だよ……」
 5回目の試験は凄かった。流石に私もプロになっていて(←何の?)、運転は非常に上手かったのである。そして最後までミスもなく、今回は貰ったッ!と思っていた。しかし、試験が終わってから教官が「この試験は無効ですね……」と言うのである。私には何がなんだか分からなかった。半泣き状態で理由を聞いた。そうしたら理由は……半端じゃなかったのだ。
「君は違うコースを走ってました」
 ……走ってる途中で一言云えよッッ!!(怒)

 こんな辛い経過(?)を経て仮免試験に合格し、私は路上に出たのである。路上に出てからはトントン拍子で本免許獲得まで漕ぎ着けた。
 何だか恥を曝すだけ曝してるようだ。

 とにかく私が言いたいのは「辛いことがあったら私を思い出してっ!! 人間、下には下がいるのよ!」というコトなのである。(アレ? 本当にこんなことが言いたかったのかな?)
 何にしても、努力だけではどうにもならないことは、やはりある。しかし絶対に終わりはあるのだ。終わりそうもない時は自分で終わらせるに限る。鬱な気持ちも突き抜ければ笑い話だ。

 と、いう訳で、失敗も度重なれば小話になるという実証なのだった。



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