stay in IRELAND

愛蘭滞在記(5)〜Limerick編E


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 現在のコースも残すところ1ヶ月、このコースが終了したらパリ旅行を経て次なる新天地に赴きます。現在のフラット暮らしも来月で終了。迎える年末年始に向けて色々と忙しい日々が続きそうです。
 思えば1年留学の折り返し地点に来たようで、月日ばかりが着実に過ぎて行くことに焦りますが、「ここに来たからこそ得られた」と自信を持って言えるモノも現れています。その最骨頂がアミットです。――と言うことで、「切れちゃったら嫌だなぁ……」と心配していたアミットとの交友も一方的にではなく続いており、来年の3月の再会に備えて、英語の勉強に精を出すのでした。(ってか、ヒンドゥ語の勉強に精を出さないように自分を戒めています……)
2002年11月14日(木)〜12月6日(金)の小見出し一覧
 11/14(木) インド人との共同生活2  11/15(金) 世界共通の表情  11/16(土) 頑張り過ぎはダメ
 11/17(日) 小休憩  11/18(月) 小休憩  11/19(火) 小休憩
 11/20(水) ヤル人はヤル  11/21(木) 間違ったヤル気  11/22(金)@ 勝つ人はいつも同じ
 A みんな勝手だ……  11/23(土) 仄かにサドンデス  11/24(日) 小休憩
 11/25(月) 6分の4の悲劇  11/26(火) 衝撃事件と家内引越  11/27(水) 魔除マイケル
 11/28(木) 心は次に……  11/29(金) 留学生それぞれ  11/30(土) 怒涛のインド下調べ
 12/1(日) 小休憩  12/2(月) インド人の太鼓判  12/3(火) 私の次に……
 12/4(水) 小休憩  12/5(木) Out of control 状態  12/6(金) 冬将軍来たる


2002年11月14日(木) インド人との共同生活2
 そんなに関連がある訳でもありませんが、取り敢えず11日の日記「インド人との共同生活」の続きです。

 他人と一緒に暮らすのは(相手さえハズレなければ)楽しいものです。フラットメイトとの関係というのは不思議なもので、家族でも親友でも恋人でもないけれど、下手なクラスメイトよりもよほど親しくなれる(可能性を秘めている)上に、ひとつ屋根の下に暮らしているものですから共同生活者としての親近感が(起こる相手には)沸き起こり、友達以上家族未満といった関係を築け(ることもあり)ます。(※確率論としてはかなり低いらしい)
 ――こんな理想的なことが書けるのは、単に私が同居人に恵まれ、かなりラッキーな経験をしたからに過ぎず、現実問題としては( )付きの太字で示す条件でふるいにかけられ、最終的にはこうなるのが通常なようです。
「え? ハウスメイト? 別に仲良くも悪くもないよ。普通かな。会えば『ハーイ』くらいは言うし。それにあんまり会わないしね」
 考えてみれば我がフラット初の西洋人、新入居者マイケル(アイリッシュ)とは正しく上記のようなドライな関係を築いているので、私が存分に楽しんでいる「他人との共同生活」というのはもしかするとただ単に「インド人との共同生活」ということなのかもしれません。サラ、アミット、シュリ……と仲良くやっていますが、ナズやザックやキャルとは仲良くやっていませんし、考えてみればアイリッシュどころかインド人以外とは友達になっていないじゃありませんか! ヤバ……。

 そうは言っても何も無いよりはあった方がマシで、何よりも私自身がインド人との共同生活を非常に楽しんでいるのでイイのです。
 英語の勉強をしに来て、以前から興味を持っていたインドに触れる――なかなか遭遇できる状況じゃありません。神様の計らいだとしたらこれはもう神様は私に「インドに行け」と言っていると思うので、素直にその流れに乗って、来年3月にはインドに行こうかと計画中です。
 ずっと行きたくて、それでもどこか心の底では「一生行かないだろうな」と諦めていたインドですが、アイルランドに来たからこそ渡印の切っ掛け(=アミット)を掴めたのだと思うと、人生の転がり方って凄いなぁ……と感銘を受けます。
 動くことで全く予想もしていなかった道が見えてくるというのは、人生に彩りを加えて、生きる楽しみを与えてくれるアクションだと思います。休暇が少ないとか、転職が困難とか、終身雇用制度とか、若さ至上主義というのは、このアクションの発生率を抑えに抑えてしまう物悲しいシステムで、多くの日本人がこのシステムに雁字搦めにされて人生を楽しむチャンスを潰されているのかと思うと、「そら人間荒んでくわな。世の中歪んでくわな」と今の日本の状況に納得してしまうのであります。

 話を戻しまして、インド人です。いや、同居人シュリです。
 本日夜に四川風チキンチャーハンを作って食べていると、既に夕食を終えて部屋で勉強していたシュリが台所にやってきて、エヘヘと笑いながら言うのです。
シュリ 「今日はホウレン草カレーに挑戦してみたんだよ。食べてみる?」
 うわもう腹を痛めて産んだ息子のようにカワイイ……。(※表現に難あり) 食べる食べる食べてみる。
 ついこの間まで米も炊けなかったシュリが、先日のチキンカレーに引き続き、今日はホウレン草カレーに挑戦したのかと思うと何とも微笑ましいと言いますか……。しかもよく考えてみれば、私が食事の用意をしたときの台所は、シュリがこのホウレン草カレーを作った後の台所……うおー、綺麗だったよー。何の違和感も抱かないほどに! 台所の掃除、ついにマスターしたんだね!
 色々な感情が渦巻く中、彼の差し出すホウレン草カレーを試食させてもらうと、これがまたさすが本場インド人と申しましょうか、なかなか堂に入った味がして美味しいのです。
鷹瀬 「これ、本当に美味しいよ。チキンカレーに卵カレーにホウレン草カレーか……。これでレパートリーは3種類になったんだね。凄いなぁ……」
シュリ 「まだたった3種類だけどね」
鷹瀬 「でももうこれで取り敢えずは生き残れるじゃない?」
シュリ 「まぁね。今はフライドライスの作り方を知りたいんだ。多分中華料理だと思うんだけど、トーコ作り方知ってる?」
鷹瀬 「フライドライスってのが何を指すのか分からないんだけど……炒飯のことなのかなぁ……。『チャーハン』っていう正式名称じゃなかった?」
シュリ 「『フライドライス』って名前しか聞いたこと無いけど……そのトーコが食べてるみたいなヤツなんだけど」
鷹瀬 「ああ、これがチャーハン。そっか、『炒飯』って英語で『フライドライス』だわ。これチキンチャーハンなんだけど、シュリ、鶏は大丈夫だったよね? 食べてみる?」
シュリ 「うん。……あ、これ凄く美味しいよ! どうやって作るの?」
鷹瀬 「簡単だよ。えっとね……〜略〜……って感じで。簡単でしょ?」
シュリ 「でもきっとトーコみたいに美味しくは作れないだろうな……」
鷹瀬 「こんなん誰でも作れるよ。ホウレン草カレーの方が難しいって。このカレー、本当に美味しいよ」
シュリ 「いやいや……」
鷹瀬 「なんのなんの……」
 ――誉めちぎり合戦ッ!! よっしゃ場が和んだところで王手(?)だッッ!!(いや、別にコレが目的で誉めていた訳ではないのですが……渡りに船で……つい……)
鷹瀬 「あ、そうだ。シュリ……明日、ゴミの回収日だよ。そこのゴミ箱もゴミ一杯だし、ゴミ出して貰えると有り難いなぁ……」
シュリ 「本当、誰も捨てに行かないよね、このゴミ。もう一杯なのに」
鷹瀬 「もうかれこれ3週間ほど私が毎回ゴミ袋換えててね……週に1度のBINMAN(家の外にある回収用の大きなゴミ箱)出すのも私が連続で3回やっててね……今週こそは誰かにやって欲しいと思っているんだけど……」
シュリ 「分かった。僕がやるよ。明日の朝、出せばいいんだね?」
鷹瀬 「シュリも明日授業あるんでしょ? 朝だと時間がないと思うから、今日の夜のうちに出しておいた方が確実だと思うケド……」
シュリ 「いいよ。このゴミを外のBINMANに入れればいいんだよね?」
鷹瀬 「うん。そんで外のBINMANを家の前の道路際まで出しておくの」
シュリ 「OK。やっておくよ」
 軽快に返事をして、しかしすぐに動く気配がないシュリ。「やっておくよ」というのは「後で」ということなのでしょうか……。でも後っていつ? 本当にやってくれるの? また明日になったら「忘れちゃった」なんてことにならない? 心配……ああ、心配。そわそわ。まだ? ねぇ、まだ換えないの? いらいら。
 何分、日本人の中でも堂々と「セッカチ」に分類される私が、インド時間に身を委ねられる訳がありません。
鷹瀬 「……シュリ、ねぇねぇ、もうゴミも一杯だしさ、早く換えた方が良くない?」
シュリ 「ん? でもまだゴミ入るよ」
鷹瀬 「あんまり一杯になってもゴミ袋の口を結ぶのが大変になっちゃうしさ。換えた方が良くない? 換えた方が良いと思うな。もう換えようよ。余り遅くなっても外暗くなっちゃうしさ。寒くなっちゃうしさ。雨降ってきちゃうかもしれないしさ」(※既に外は真っ暗で寒く、小雨も降っていた)
シュリ 「え? あ、ああ、そう? じゃあ換えようか……」
 もう半分以上、私自身がゴミを取り替えているようなものですが、それでもこれは次回への投資なので、彼の身体を使ってゴミ出しをすることに意義があるのです。
 ゴミ箱の蓋を開けてゴミの取り出しを促し、裏口を開けて外への道を確保し、ゴミ袋を持って表に出たシュリの動向を見守り、BINMANにゴミ袋を入れただけで戻って来てしまった彼を「まだまだ。そのBINMANを家の前まで出さないと!」と追い返し、再び彼がBINMANを家の前の道路際まで押し出す様子をしかと見届け、漸くすべてを終えて戻って来た彼に「ありがとう、助かったよ」と労いの言葉を掛けることで私のモジュールも完了します。
 ふう、ヤレヤレ……と思った私に、シュリのこんな驚きの一言。
シュリ 「たった1分の仕事じゃないか! 皆こんなこともやらないなんて、なんて不精(lazy)なんだ!」
 うわー……アミットより lazy だと思っていたシュリの口からこんな言葉が聞けるなんて……ちょっと感動……。成長したのね、ママ嬉しい……ッ!

 おっと、ドッコイ。喜ぶのは次回のゴミ回収日に私が何も言わなくてもゴミが出されているのを確認してからにしましょうかね……。私も大概ぬか喜びし過ぎてますから。
 ――と、言うことで、来週の金曜日が楽しみです。


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2002年11月15日(金) 世界共通の表情
 シュリはキャルが嫌いです。まぁシュリだけでなく、ナズもそうですし、アミットもザックもキャルが好きではなかったらしく、現在私も彼女のことは好きではありません。色々な経緯を経て今の感情に至るので、彼女に対する私の感情は「嫌い」というほど単純ではなく、この気持ちをなるべく素直に言葉に表すならば「勘弁してくれ……」というのが最も近いような気がします……。
 7月末から4ヶ月以上付き合っている私と違って、つい最近知り合った挙げ句に10日のような揉め事で直接対決したシュリは、単純にキャルのことが嫌いなのですが、まぁそれも当然でしょう。

 本日、夕方私が家に帰るとどの部屋にも灯りが点いておらず、広い家にたった1人という寂しいような嬉しいような状況でした。キャルは現在、引越し先の家で過ごすことが多いらしく、最近では滅多に会いません。ナズは午後から深夜という勤務形態が多いらしく、これまた滅多に顔を合わせませんし、マイケルも平日は朝早くから夜遅くまで外に出ており、しかも週末は実家に帰るためやはりほとんど会いません。1番会う確率が高いのがシュリですが、シュリも帰宅時間は私と同じくらいか少々遅いかなので、シュリが帰っていなければ、私が家に独りになるというのは当然の成り行きで、珍しい状況でもないのです。
 アミットがいた頃は私が帰ってくると「ヘーイ!」とか言いながら唄って踊って出迎えてくれたんだけどなー。そんで夕食を食べている間中お喋りに付き合ってくれたんだけどなー。そんで夕食が終わってもずーっと喋っていたんだけどなー。楽しかったなー。
 などと今はなきアミットに思いを馳せたところで仕方ありません。とにかく黙々と食事の支度をします。

 寂しいと思うのには物理的な寒さも関係しています。10月16日からトライし続けている暖房設備ですが、1ヶ月経った今現在でも未だに使用開始に至っておりません……。ガス使用開始申請用紙の取り寄せまではコマを進めたのですが、今度はその用紙を記入して窓口に提出する、というアクションを誰もしないため、依然として(色んな意味で)冷え冷えとしたフラット生活が続いているのです。
 私の部屋には自費購入したヒーターがあるので取り敢えず生きていられますが、部屋から1歩踏み出せばそこは極寒の地……。台所も料理をし始めて暫くすれば徐々に暖かくなって来るのですが、昼から誰も使っていない台所というのは冷え込み方が本格的で、暗くて静かで寒いという物理的環境が精神に与える影響は決して少なくないのです。

 さて、せっせと夕食を作っていると、その途中でシュリが帰ってきて、人間が多くなったところで物理的にも精神的にも少々暖まります。やはり独りで暮らすというのはワビシクてツマラナイものです。
 独り暮らしを自立の代名詞のように言う方もいらっしゃいますが、私はそうは思いません。誰かと一緒に暮らしていても自立は出来ますし、逆に独り暮らしをしたからといって確実に自立できるとも思いません。親と同居をしている限り成長しないという意味では、確かにそういう面もあるかもしれないとは思いますが、親に援助してもらいながら独り暮らしをしている人と、親の面倒を見るために親と同居している人のどちらが自立しているかと言えば答えは明白です。
 私自身、この先独りで生きていきそうな気配が濃厚なのですが、それでも私の個人的な意見としては、人が独りで暮らすというのはとても不自然だと思っています。どんな場面で独りでも構わないのですが、ただ1点、ご飯を独りで食べると言うのがどうしても寂しく不自然に思えてしまうのです。
 しかし日本での生活形態は大きく分けて「親と同居」か「独り暮らし」か「恋人または結婚相手と同居」という3種類しか道がなく、とても効率が悪いように思います。親が忙しくて構ってもらえず、更には1人っ子、という子供が他人とのコミュニケーション能力が低くなるのは当たり前です。群れるのが好きなクセに生活の基盤となる環境では独りになり易い、という日本が、他国に比べてコミュニケーション能力に劣るのは、こんなことも原因しているように思います。
 赤の他人との共同生活というシェアフラット制度がどうして日本にないのか、残念でなりません。親や伴侶のように特別に気に掛けてくれる訳ではない、しかしお互いの存在を認め合わねばやって行けない、という経験ができるシェアフラット生活は、下手な独り暮らしよりも余程多くのことを学べると思いますし、いつか出会う一生涯付き合う他人との生活への下準備にもなるのではないかと思います。

 さて、本日の本題は上記のようなフラット論議ではないのです。
 えーっと、話をどこまで戻せば良いのでしょう……。……そうそう、シュリが帰って来た後からですね。

 そう、シュリです、シュリ。シュリが帰って来て物理的にも精神的にも暖かくなったところで雑談です。特に的を絞って話をしていた訳ではないのですが、話が転がりに転がって、先日10日のキャルとの揉め事の件についての考察――早い話がキャルの悪口になりました。
シュリ 「僕は全然声を荒げてなんかないし、喧嘩腰でもなかったのに、あんな言い方をするなんて!」
鷹瀬 「あー何か言ってたねー。『私は騒音が嫌いなのよ!』って、エンジェルの方がよっぽどウルサイっちゅーの! 要するに自分に都合が悪くなったから話を逸らしたかったんでしょ。結局彼女の思うままの結論に至ったしね。今月末まではいる。予約金はゲットする。完璧じゃん」
シュリ 「大体、マイケルはトーコと僕で探したのに、結局何もしないキャルが予約金を取って行くなんて変だよ!」
鷹瀬 「まぁねぇ……でも彼女と話して分かったでしょ? こっちが何を言ったって通用しないんだよ。結局強いもん。でももういいじゃん。どうせあと10日くらいでサヨナラだし」
シュリ 「まぁね。僕ももう彼女とは話したくもないよ。あーあ、早く出て行けばいいのに……。今日は何時に帰ってくるのか知ってる?」
鷹瀬 「さぁ? 興味ないし、知らない」
 おおよその会話はこんな感じで、特にそれ以上引き摺ることもなく、話題は他へと移って行ったのですが……暫くして……そう、本当に10分くらい経ってからでしょうか……私たちが立ち話をしていた台所の隣の部屋……つまりキャルの部屋のノブがガチャリと回って……部屋から現れたのはキャルご本人でした……。
 彼女は一応寝巻きを着ており、寝起きのような顔をしていましたが、この壁の薄いチャチな作りのフラットで、隣の台所から聞こえる会話を聞いていた可能性は充分にある訳で……うわもう最悪……。
 私が「ハロー」と挨拶してもジロリと一瞥くれただけでトイレに直行してしまうキャル……ああ、もう完璧に聞いていたカモね。

 ぶっちゃけて言うならば、私が言っていたことは別に理不尽なコトではないと思うし、面と向かって言えなかった文句が本人の知るところとなり、逆に良かったカモと思える面もある訳ですが、それでもこういうシチュエーションにおいての一般的な感情、「ヤベェ」という気持ちが即刻沸き起こり、共犯者であるシュリに視線を走らせると、シュリも同じような顔、つまり今にも噴出しで彼の顔の横に「ヤベェ」と現れそうな分かり易い動揺の表情をしていたのであります。
 これが私的に非常にウケまして。
 ああ、こういう感情と表情ってインドでも丸っきり一緒なんだ!って!! いやもうきっとインドだけではなく、こういう表情ってきっと世界語なんだ!って!!! 言葉や文化が違っても、人間がコミュニケーションを取る上で基盤となる根本的感情ってのはもしかしたら結構似通っているのかも!って!!!

 いや〜、言葉は通じなくても気持ちは通じる、というのは実はそんなに難しいシチュエーションではないのかもしれません。何せ私たちは言葉以外にも表情、声音、口調、動作など筆頭に、様々なコミュニケーション手段を持っているのですから。
 ――ってことで、妙に感動した一場面でした。

【おまけ】
 この翌日、翌々日と、キャルから完璧にシカトされています。あはは、やっぱ聞かれていたみたーい。早く彼女の撤退日26日にならないかなー。


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2002年11月16日(土) 頑張り過ぎはダメ
 昨日作ったチキンカレーがかなり美味しくなっていて幸せを感じた午前10時。ささやかな幸せが嬉しい今日この頃。

 本日ネットを使いに学校に行き、その後でジムかプールに寄ろうとすると、丁度同じようにジムに寄ろうとする日本人留学生に会いました。そんなに親しい訳ではありませんが、彼女の軽快な喋り方と人柄、雰囲気が好きで、彼女と話す時はいつも楽しい気分になれます。そんな彼女との目の覚める遣り取りを記録しておきましょう。
彼女 「あ、これからジムに行くん?」
鷹瀬 「うん。もう水着着てるからプールの方。でもジムとプールのハシゴか、プールだけにしようかで迷ってるんだけど。でも、プールって良いけど面倒なんだよね……」
彼女 「ああ、分かるわ。前はプールに行ってたけど、着替えるの面倒で今はジムにしてるよ」
鷹瀬 「アレ? 確か週に3回くらい行ってるんだよね?」
彼女 「うん、そう」
鷹瀬 「凄いよねぇ……。疲れない? 何をどのくらいやってるの?」
彼女 「トータル20〜30分くらいかな。走るヤツとか自転車漕ぐヤツとか10分くらいずつ」
鷹瀬 「え? そんなもんなの? アタシャまた毎回1時間くらいずつやってるのかと思ってた。だから週に3回って凄いなぁ……って」
彼女 「そんなんすると続かなくなってしまうから」
鷹瀬 「ああ、確かに……。つい『入場料分、目一杯使わないと!』とか意地汚く考えちゃうんだよね……。そんで次の日疲れて暫く行かなくなったりとか……」
彼女 「でしょ? 頑張り過ぎはダメダメ。『入場料1.5ユーロ払ったんだから元取らないと!』とか思ったらアカンねん。コンスタントに続けることに意義があンのや。英語も一緒や。ここに来た当初はガーッってやってたけど、結局そんなん身に付かんのやんか」
 いやぁ、英語に関してはそんなに頑張っていないのでイイのですが(←ヨクない)、「頑張り過ぎはダメダメ」という言葉になんだか目から鱗が落ちました。明日から短くても気にせずにジムに行こうっと。――って、英語の勉強の話じゃないんかい!(←独りツッコミ)


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2002年11月17日(日) 小休憩
 本日は丸々1日家(正確には「部屋」)で過ごしました。丸1日外に出ないなんて久し振り……と言うか、もしかしたら今日が初めてかもしれません。
 しかし寒くて寒くて、安物のヒーターをつけると上方ばかりが暖まってしまって、頭はボーっとするわ、足は寒いわ……。早く暖房が使えるようにならないかなぁ……。


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2002年11月18日(月) 小休憩
 久し振りにお休みするずら。


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2002年11月19日(火) 小休憩
 特に変わったことも無く過ごしました。


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2002年11月20日(水) ヤル人はヤル
 久し振りに学校の話になりますが、私のクラスには現在10人の学生がいます。国籍内訳は日本4人、スペイン2人、中国1人、スイス1人、スウェーデン1人、ユーゴスラビア1人です。スペイン、スウェーデンの2人に関しては「なんで英語を習いに来たの?」と問い掛けたくなるレベルなのですが、文法を基盤にしたクラス分けのため、逆に私のように「なんでこのクラスにいるの?」と問われてしまうような痛々しい生徒も紛れ込んでいるのが現状です。
 会話という点のみに注目して生徒10人を冷静に判断すると、どん尻3人は私を含めて全員日本人です。4人日本人がいるにも関わらず、「どん尻4人」と表現しないのは、日本人の中で1人だけ会話が流暢な人がいるからです。流暢と言ってもヨーロピアンの「流暢」には敵うはずもなく、「日本人の中では」という制限付きなのですが、元からアルファベットに慣れ親しんでいる上にボキャブラリーに多くの共通点を持つヨーロピアンと会話の面で競争するのは酷と言うもの。

 そんな訳で、日本人の中で唯一比較的流暢に話せるクラスメイトの日本人男性ですが、彼がまた典型的な「ヤル人はヤル」というタイプであることを本日思い知りました。
 自費で留学している生徒達と違って、会社からお金を出して貰って研修という形で留学しているという点で既に1歩リードしている彼ですが、時々授業を休んでゴルフに行ってみたり、毎週末には車を借りて他のクラスメイト達とアイルランド各地を観光して回ったり、毎日のようにジムに通ったり、とにかくアクティブにアグレッシブにアイルランドでの時間を満喫していて、「こういう人は会社に勤めながらでも3ヶ月もの留学を体験できて、しかも存分に満喫するんだろうなぁ……」とひたすら感心します。
 最初は単純に「会社の金で留学かぁ。良い身分だなぁ」と羨ましがっていましたが、「そんな単純に羨ましがるような立場じゃないんだ……。勝ち抜いて来たんだ……」と気付くのに、そう長い時間は要しませんでした。

 ある日の授業中に彼が日本から持ってきたと思われる参考書を見ており、その後もちょくちょく同じ参考書を見ているのを確認して、「何か良い参考書はないか」と思っていた私は、ついに本日直接彼に「その参考書は何?」と尋ねてみたのです。
彼 「ああ、コレ? 参考書ってか単語と例文集だけどね。日本で買って持って来たんだけどさ、これが結構良いんだよ。CDもあるんだけどね。書店でぱらぱらって中見て、良いなぁと思ったから選んだんだけど、授業と重なることも多くてさ、オススメだよ」
鷹瀬 「へー……うわー蛍光ラインだらけだね……ってか、もうひと通り全部やってあるんだ」
彼 「うん、でも何度もやらないと忘れちゃうからね。一応日本に帰るまでにこの本1冊は完璧にしたいな、って思ってて。でもなかなか、覚えるまでも時間が掛かるけど、たとえ覚えても咄嗟には使えないもんだよね。どうにか日常の場面で使いたいと思ってるんだけどさ」
鷹瀬 「……ねぇ、これ1冊やるのにどのくらい掛かった?」
彼 「え? こっちに来てからだから、1ヶ月くらいかな?」
 うお〜〜〜カッチョイイ! 奥さんっ、ヤル人って本当にヤルんスよっ!!
 ちょっともう本当に今の自分のダラけた学習姿勢に Shame on you! もーうどこまでも中途半端な英語力に headache!

 人生の中でもう何度呟いたか知れない溜息まがいのこの台詞をもって、アイルランドに来てから何度目かになる気合を入れたのでした。
「このままじゃダメだ……もっとしっかりせんと! 私も頑張ろーっと。……………………明日から

【追記】
 私も心が弱い……そらもう弱々な人間なもので、ついつい自分が尊敬している人が使っているモノと同じモノを使えば同じような効果が得られるんじゃないか……などという舐めた幻想を抱いてしまうのです。分かっていますよ、ポイントはモノではなく努力だって。そんなのは百も承知で、早速 Amazon.com で注文してしまった推薦の書。(←こういう無駄な行動は早いんだけどなぁ……)


DUO(デュオ)3.0 発行:ICP 定価:1200円
「現代英語の重要単語1600+熟語1000を重複なしで560本の基本英文に凝縮」

 イイらしいっすよ。(←自分じゃ判らないらしい……)


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2002年11月21日(木) 間違ったヤル気
 「気が張っていたのはいつなんだ」とのツッコミを物ともせず、一丁前に「最近英語の勉強に身が入らなくて……」などとふざけた気分に浸っているタカセです。(うわもう昨日の今日でこの始末……)
 だってね、英語って覚えるだけなんですもん。考えて正解が得られる訳でもなく、ただひたすらに覚えて覚えて覚えまくるだけ……。それだけに努力と成果が比例すると言えない事もないけれど、物覚えが悪い私にとっては「うおー、この単語さっき調べたよー。調べたことは覚えているけど意味は忘れたよー」ってなことを日々の単位で繰り返す羽目に陥っており、それはそれはムナシイのです。いつまで経っても言いたいことをスラスラ言えるようにもならないし……。

 他言語を覚えるのって大変なんだなぁ……としみじみ思いつつ、ついフラフラとネットの世界に彷徨い込み、言語の勉強法なんぞを検索してみます。えーっと……
「ヒンドゥ語 勉強法」
     …… 該当するページが見つかりませんでした。

 はう! 検索ページから「調べる言語が違うだろうッ! お前こんなことしてる場合かッ!」という現実を叩き付けられました……。そうそう、私が身を入れて勉強すべき言語はヒンドゥ語じゃなくて英語でしたっけね……。
「英語 勉強法」
     …… 約16,200件

 ……………………情報は無くてもあり過ぎても困ってしまうのでした……。


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2002年11月22日(金)@ 勝つ人はいつも同じ
 ハイ、これからワタクシ少々危険な発言をしますが、これは今のありのままの気持ちなので素直に、しかし薄っすらと明記しておきます。

 私に、黒人に対する人種偏見の芽を植え付ける原因にもなったキャルですが、漸く本日我が家を離れることになりました。しかし、とっとと出て行け!という私の赤裸々な本心は脇に置いておいて、彼女がこの家を出て行くに当たって、我がフラットには依然として問題があるのです。そう、それが光熱費の支払問題です。
 2ヶ月に1度請求されることになっている光熱費ですが、9月に7〜8月分の請求が来て以来、9〜10月分の請求が11月も終わりに近付く今になってさえ依然として届かないのです。
 私たちは全員で7月25日に一斉入居したので、前回の請求はほぼ1ヶ月分の光熱費にも関わらず請求額が約90ユーロ。友人宅では5人で月50ユーロと言っていましたから、これは余り安くありません。確かに7、8月は基本メンバー5人以外にも2人おり、計7人でこの値段ではありますが、私が旅行を2度しており計15日間不在であったことを考えれば、やはりこの値段は行き過ぎです。我が家は電家製品を使い過ぎの嫌いがあるようなのです。

 私たちとしては、キャルが出て行く前に光熱費を支払って貰うことを望んでいたのですが、請求書が来ない今、どう請求していいのやらと悩みます。前回の請求書を元に平均を割り出しておおよその代金を払って貰うにしても、前回と違って彼女の家族、子供と旦那の乱入やヒーター使用が相俟って、今回の請求額はかなりの額になっていることでしょうし、私たちは彼女に旦那と子供の分まで払えと詰め寄らなければならないのです。こういうことは実際に請求書が来てからでないと難しく……。
 つい先日10日の遣り取りからも判るように、彼女はとにかくやりたいようにやるのです。金払いの汚い彼女が子供の分まで払うとは到底思えません。また勢いに任せて払わずに逃げるんだろうなぁ……と簡単に予想できます。
 するとシュリが言うのです。
シュリ 「じゃあさ、光熱費が来るまでキャルの予約金235ユーロを返さなきゃいいじゃん。で、請求書が来たらキャルの分を引いて、残りを返すようにすれば確実なんじゃないかな」
 そうか、私たちは彼女の予約金を預かっているのです!

 ――と、言うことで、私たちはこの期に及んでまーだキャルを甘く見ていたのでした。

 本日、いよいよキャルが出て行くという段になっても、彼女が出て行くことを喜びこそすれ悲しんでいない私たちは当然のように外出しており、彼女を見送るために家に戻る筈もありませんでした。しかし私が予約金を預かっていることを知っている彼女は私を呼び付け、家で私の帰りを待ち構えていました。
 私が家に着くと早々に「ちょっと荷物を運び出すのを手伝ってくれない?」と居丈高なキャルの声。…………本当にこの人はどこまでもどこまでも……。いい加減頭に来ていた私は、いかにも億劫そうに「ああ、着替えてからね」との言葉を残して自室に直行し、彼女が自分で荷物を運び終えるのを待ちます。誰が手伝うもんか。ささやかな抵抗です……。

 取り敢えず着替えを済ませ、ポケットに彼女の予約金235ユーロの内の本日の返金分135ユーロを忍ばせます。そしていよいよ彼女に「100ユーロはこちらで預かり、光熱費の請求が来た後に差し引いて送金する」との旨を伝えなければなりません。あーあ、どうせまた絡まれるんだろうなぁ……。シュリもナズも逃げやがって……。
 憂鬱な気持ちを抱えつつ、送金用の封筒を持って1階に降り、私を待ち構えていたキャルに向かって「この封筒に新住所を記入して……」と言ったことから戦いの火蓋が切って落とされたのであります。
キャル 「何のために? それより私の予約金235ユーロを返して頂戴!」
鷹瀬 「ああ、だからね、まだ光熱費の請求が来てないでしょ? だから今日は取り敢えず135ユーロ返すから、残り100ユーロをこっちで預かっておいて、請求書が来た後で差し引いた残金を送金する……」
キャル 「冗談じゃないわ! 235ユーロ全額、今日返して貰うわよ! 光熱費の請求が来たら電話して来なさいよ。そしたら直ぐにここに来て支払うわよ。私は bitch じゃないわ! 逃げも隠れもしないわよ!!」
 本人がご自分のことをどう思おうと、私から見たら充分 bitch なんだな……。しかも逃げも隠れもしないだろうけど、支払いもしないんだろうさ……。堂々と……そらもう堂々とな。

 実は彼女、アミットとザックの9月分の光熱費を預かっており、前回10日の話し合いの時に私が「これからは私が共同のお金を管理するから、アミットとザックが置いていった光熱費18ユーロを渡して」と請求すると、「今は持ち合わせがないから払えない」と言ったのです。アミットとザックの光熱費は彼女のお金ではないのだから、常に支払えるよう別々に管理しておくべきものです。それを持ち合わせがないとは……自分の財布に入れて使ってしまったということではないですか。しかも未だにそのお金を私に渡してないし……。貴様は充分 bitch だってのッ!
 こういうことがあるため、私は彼女を信用していませんし、彼女の金払いの悪さは毎度毎度痛感していることなので、今彼女の予約金全額を返金する訳には行かないのです。
鷹瀬 「このお金は私のお金じゃないし、ほかのメンバー全員の了解が得られないと渡す訳には行かないから。それに請求書が来た後に差し引いて返すんだから、同じことじゃ……」
キャル 「このお金は私のものなのよ! 今すぐ235ユーロを返して頂戴! なんであなたが100ユーロも預かるのよ。何の権利があってそんな勝手なことをするワケ? 請求書が来たら電話を寄越せばいいって言ってるでしょ! 光熱費はその時に払うわよ!」
鷹瀬 「とにかく私が勝手に全額返すと、文句を言われるのは私だから、返す訳には行かないよ。100ユーロじゃなくてもいいから、念のため大体の額を置いて行ってよ」
キャル 「念のためも何も、請求書が来てから払うって言ってるでしょ! 誰が文句を言うのよ!」
 ……「Unfortunately, we don't trust you.」とでも言ってやりたかったのですが、何だかもう勢いに圧倒されてしまって何も言えませんでした……。
 上記に書いている遣り取りは、明確に聞き取れた部分のみであり、この他にも色々と言っていたのですが、一方的に早口でガーガーと捲くし立てられ、恐らく私の理解度は半分以下でしょう。そして英語力の問題で言いたい核心を突けず非常にもどかしい思いをし、ついに事態が手に負えなくなった私は、情けないことに逃げの一手としてシュリに電話を掛けました。私とシュリが喋っていると、横からキャルが代われと言って私の携帯を奪います。そして私に言っていたように、逃げも隠れもしないんだから今日235ユーロ全額返してもらう、光熱費は請求書が来てから電話を寄越せ、とシュリに捲くし立てます。キャルだけの一方的な会話からもシュリが圧されていることが窺えて……そしてついにシュリが負けたようです。

 こうしてキャルは235ユーロ全額を奪い取り、新住所を告げずに去っていったのであります……。
 勝つ人はいつだって勝つ。負ける人はいつだって負ける。しょせん普通の人は非常識な人には敵わないのです。

【追記】
 彼女に235ユーロを返す際に、こちらから「アミットとザックの光熱費18ユーロを返して貰うよ」と言って20ユーロ紙幣を抜き取り2ユーロ硬貨を渡そうとすると、キャルは「触らないで!」と言って私を制して20ユーロ紙幣を引ったくり、自分の財布からボロボロの10ユーロ紙幣と5ユーロ紙幣、2ユーロ硬貨に50セント硬貨、20セント硬貨、10セント硬貨3枚を取り出して、「18ユーロよ」ですと。
 ……………………マジ顔面にパンチを喰らわしてやりてぇ。少なくとも10回以上……。
 もう1度言います。しょせん普通の人は非常識な人には敵わないのです。ここまで来ると別に勝ちたくもないですケドね。ただもう何が何でも彼女の支払うべき分だけは意地でも支払って欲しいというだけで。
 もし彼女が光熱費を支払わなかったら、彼女の職場まで行って上司の人に相談して、揉め事にしてやる……。

【追記2】
 ナズはナズで自分が正面切ってキャルと戦いたくないものだから、彼女に「予約金はトーコが管理している」と言ったらしく、しかも私がキャルに全額返したと知ると当然のように私を責めてきやがりました。
ナズ 「あんなに言っていたのに、なんで返したんだ! これでキャルが光熱費を払わなかったらどうするんだ!!」
鷹瀬 「自分は逃げたクセに何言ってンのっ?! アンタ、キャルのコトよーく知ってンだから、彼女がどんな態度で私から全額巻き上げてったか想像つくでしょ! 私は出来うる限りのことをしました。文句があるならキャルに電話掛けて直接言えばいいよ。何なら今、彼女に電話掛けてあげよっか?! 私の携帯、使っていいよ」
ナズ 「…………………… She is stupid! I hate her!」
鷹瀬 「…………本人の前で言いなよ」
ナズ 「……」
鷹瀬 「……」
 キャルのお陰で家の中に寒い空気が流れます。
 ったく、どいつもこいつも!

【追記3】
 遅ればせながら本日26日に気付いたことですが、我がフラットの台所から私が持参したまな板がなくなっていました……。最近、最初から家にあった少々大きなまな板ばかりを使っていたので気付かなかったのですが、引越し準備を始めるに当たって持参した調理器具を除けて置こうとしたところ、この事態に気付いた次第です。置いておいた筈の所からそうでない所まで、台所の棚をくまなく探してもどこにも見当たりません。
 我が愛しのまな板を最後に確認したのはキャルがまだ家にいる時……そして今、この家のどこにもナイ。キャルが引っ越す家は新築で、彼女の言葉によると、「食器以外は何も揃っていないので、色々購入しないとならないのよ」――ふーん。あ、よくよく調べたら皆で共同購入したスポンジと台拭きもなくなってる。そうねぇ、新築の家で生活を始めるに当たって取り敢えず必要だもんねぇ、スポンジと台拭きは。あはは、犯人の選択肢は1つって気がします。
キャル 「私は bitch じゃないわ!
 いいや、貴様は充分 bitch なんだよ……。ってか、盗っ人とも言う……。


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2002年11月22日(金)A みんな勝手だ……
 そう言えば今日は週に1度のゴミ出しの日でした。先週14(金)の1件を経て、今週こそは何も言う前からゴミが出されているのかしら……と期待する私を他所に、ええ、ええ、そのまンまでしたよ、ゴミ箱。換わっちゃいませんでしたよ、満杯のゴミ袋も。
 もー本当にねー……人を信頼するのってこんなに難しいことだったんだー、って心底思い知ってます、今。

 シュリが帰ってきて、キャルに対する不平不満をお互いにぶちまけた後、何気なく切り出してみます。
鷹瀬 「……今日さゴミ出しの日だったんだよね……」
シュリ 「ああ、そう言えばそうだね」
鷹瀬 「誰もBINMAN(※注:回収用ゴミ箱)出さなかったね」
シュリ 「そうだね。みんな lazy だからね」
 ……………………君も含めてな。
 くっそう、再度挑戦だ!
鷹瀬 「私さ、毎晩このフロア掃除してるんだよね。だからと言っちゃあ何だけど、ゴミ袋の取り替えと週に1度のゴミ出しは他の人たちに頼みたいんだけど」
シュリ 「僕は先週やったから、今度はナズがやるべきだよ」
鷹瀬 「じゃあシュリから言ってよ。私は誰がやっても構わないんだから」
シュリ 「……分かった、言っておくよ」
 きっと言わないんだろうなぁ……。

 一方でナズです。
 ナズは以前からキャルの部屋に移りたくて仕方なかったのですが、本日キャルが鍵を返したことで早速キャルの部屋に引っ越しを果たしました。キャルの部屋は私の部屋の真下……。上下関係の部屋というのは、通路を挟んで正面に位置するよりもずっと音が伝わり易いのです。そして彼は我がフラットで唯一テレビを所持している人……。
 嫌だなぁ……彼にはキャルの部屋を使って欲しくないのですが……。取り敢えず、彼が引越しを始める前に一言言っておきます。
鷹瀬 「あのさ、もしキャルの部屋に引っ越すなら、最初に言っておきたいことがあるんだけど……。キャルの部屋ってね、私の部屋の真下でしょ? 上下の部屋って横よりも音が伝わり易いんだよね。だから、ナズがテレビとか観ると音がよく伝わるってことを覚えておいて欲しいんだけど……」
ナズ 「No problem!」
 ……いや、君にとっては問題なくても私にとっては大問題なんだよ……。ってか、それ以前に私の英語、理解してる?

 私の心配を他所に、友達まで呼んであっと言う間に引越しを終え、早速新しい部屋に引っ込んでしまうナズ。私も自分の部屋に戻りますが……早速恐れていた事態が発覚しました……。ナズの友達との喋り声が響く響く……。彼らは決して大声で話している訳ではないのです。それは声の調子などからもよく分かるのです。ただ単に下の部屋での音が私の部屋によく響くというだけの話なのです。
 ああ……嫌だなぁ……。こんなん注意も出来ないし……。

 苛々が募り、思い余って「以前廊下を挟んで正面の部屋にいた時ってどの程度に聞こえていたんだっけ?」と、そっと1階に降りて彼の部屋の正面に位置する居間に忍び込み、会話の響き具合をチェックすると(……私もまぁ大概粘着質と言うか……大したモンだよね……。自覚あります)、やはり私の部屋で聞こえたよりも断然小さく聞こえます。彼らは今までと同じように小さな声で喋っているに過ぎないのです。それが分かるので、「静かにして」とも言えません……。
 結局この日、夜の1時頃まで彼らのボソボソ話す声に悩まされ、苛々しながら眠りに就いたのであります……。


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2002年11月23日(土) 仄かにサドンデス
 まだ皆が寝ている内から起き出して湯沸しの電源をチェックすると、案の定スイッチがオンになっており、「ったく!」という舌打ちと共に、早速不愉快な朝を迎えました。

 湯沸しの電源のオン、オフがなぜこんなにも私を不愉快にさせるのか――説明しましょう。アイルランドの家の造りとして、どこの家にも1家に1台、湯を溜めておくタンクがあります。大抵はスイッチを入れてから20分後くらいにタンクの湯が温まり、お湯が使えるようになるというシステムです。電源を入れればそれだけ電気代が高くなることは確実で、通常この電源はシャワーを浴びる20分前に入れ、シャワーを終えた後には消すというのが節約を心掛けるフラット生活の常識です。
 しかし我が家にはこの給湯タンクからの湯を使うシャワー以外に、最新式の電気シャワーがあるため、台所で湯を使うことさえ我慢すれば、この給湯タンクの電源は24時間オフにしておくことが可能です。しかしナズが電気シャワーではなく給湯タンクの湯を使うシャワーを好んでいるので、この給湯タンクの電源はいつもナズによって入れられ……そして彼は決して消さないのです……。

 ナズは朝にシャワーを浴びることが多く、そのために電源を夜に入れておくケースがままあり、誰も湯を使わないのに10時間ほど電源が入れっぱなし、という事態も稀ではありません。キャルがいた頃は犯人はキャルだと勘違いしていましたが、キャルが1週間ほどいない時にもこういうことがよくあり、シュリに直接「2階の給湯器の電源入れた?」と聞いたところ、犯人が分かりました。
シュリ 「僕も気になっていたんだよ。毎回消しているのに、毎回ついてるから。僕は電気シャワーしか使わないから、給湯器なんか必要ないし……。電源を消したことはあっても入れたことなんか1度も無いよ。……トーコでも僕でもないなら、ナズだろうね」
 キャルではないと分かった時点で「ナズなんだろうな」と思っていましたが、以前ナズの前でそれとなく「給湯器の電源が点いていたんだけど……」と言った時に「一体誰だ! 僕は毎回消している!」と言っていたので、念のためシュリに確認したのです。ナズとシュリ……どちらを信じるかと言えば、比較対照の問題で私はシュリを信じます……。実際、シュリは電気シャワーを使っているし、ナズは電気シャワーを使っていないので、そういう意味でも犯人は明確かと……。
 ったく、どうしてこう毎回分かり易い嘘を吐くのでしょう……。

 とにかく昨日の引越しの件に加えて今日(昨日から?)の給湯器スイッチ・オン、そしてゴミ出しについて……彼には色々言いたいことがあります……。
 以前大喧嘩をした経験上(詳細は9月14日参照)、正面からぶつかっても疲れるだけだと知っていたので、今度はマイルドに攻めるしかないでしょう。
 ナズが起き出すのを今かまだかと待ち構え、彼が部屋から出たのを確認し、部屋に戻る前に呼び止めます。一応人としての礼儀、おはようの挨拶から先に済ませ、いきなり本題に移ります。
鷹瀬 「あのさ……昨日も言ったけど、ナズの部屋の音って私の部屋によく響くんだ……。ナズが決して騒音を立ててる訳じゃないのは分かってるんだけど、たとえ普通に喋っても私の部屋によく響いちゃうんだ。今までの部屋は廊下を挟んでいたからそんなに響かなかったんだけど……。23時までだったら私も我慢できるけど、それ以後になっても続くようだとちょっと……。それにナズはテレビ観るでしょう? 私、自分の部屋でラジオ聞くときはイヤホンしてるのね。音を立てたくないから。だからね……」
ナズ 「分かった。No problem!」
鷹瀬 「…………それと、給湯器のスイッチだけど、今日の朝点いていたの。上のシャワー使うのは全然構わないんだけど、給湯器の電源は使う20分前に点けようよ。電気代も高いしさ」
ナズ 「一体誰が点けたんだ! シュリだな!」
鷹瀬 「…………えっとね、シュリにも確認したけど、彼、電気シャワー使っているし給湯器の電源は入れたことないって。ナズ、昨日の夜に点けなかった?」
ナズ 「……知らない。忘れたのかも」
鷹瀬 「…………そか。次から気を付けてね。シャワー使い終わったら電源消してね。朝使うために夜から電源入れないでね」
ナズ 「分かった」
鷹瀬 「それと、私が毎晩台所の掃除をしているのは知ってる?」
ナズ 「……」(※無言で頷く)
鷹瀬 「それは別にいいんだけどね、せめてゴミ袋を変えるのと週に1度のゴミ出しは他の連中でして欲しいと思っているんだけど、頼める?」
ナズ 「ゴミ出しはしてる」
鷹瀬 「…………昨日ゴミ出しの日だったんだけど、誰もしてないでしょ」
ナズ 「前回した」
鷹瀬 「…………前回はシュリがしたんだよ。私、見てたから。その前の週は私がしたのね。その前も私、その前も私。私が3週連続でして、先週がシュリ」
ナズ 「……」
鷹瀬 「とにかく、次回から誰がやっても良いから、ゴミ出しは男連中に頼めないかな。台所掃除は今まで通り私がするから」
ナズ 「分かった。No problem!」
 あーあ、全然問題解決していないんだろうなぁ……と思いつつ外出し、夕方近くに帰ってくると……ピカピカの台所にピカピカの洗面所。ゴミ箱を確認すると当然交換済み。
 ………………………………シュリといい、ナズといい……当面の態度は非常に素直なんですけどね……。そう言えば前回(詳細は9月21日参照)も似たようなことがあったっけ……。そう、要するに持続性(もしくは記憶力?)が無いってコトみたいです……。毎回言わないとダメってことなのでしょうか……。それはそれで大変そうだなぁ……。

 彼らの行動(ってか「記憶」?)が定着するのと私が諦めるのと、一体どちらが早いのか――これはもう仄かにサドンデスの予感……。


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2002年11月24日(日) 小休憩
 先週に引き続き、今日も1日家にいました。


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2002年11月25日(月) 6分の4の悲劇
 我がフラットには鍋が8つあります。その内訳は、元からある大・中・小3つ、ナズが持参した大・中・小3つ、ザックが置いていった大1つ、シュリが持参した圧力鍋1つという具合です。しかしシュリが持参した鍋は特殊な形態の圧力鍋なので誰も使っておらず、ナズは1つのマイ鍋を連続で使い続けているため、残り6つの鍋をシュリとマイケルと私で使用しています。


無駄に多いが大活躍の鍋たち


放置と作り置きの中間に位置する鍋たち

 3人で大・中・小6つの鍋を使う――数字の上で見る限り、非常に優雅な配分です。しかしこの優雅な配分がなぜかサバイバルになるのが我がフラットなのです……。

 先にも書いた通り、ナズは拘りのマイ鍋を保有しており、その鍋でカレーを数食分作ってコンロの横に置いておき、その鍋から少しずつ食べて、食べ終わると再び同じ鍋でカレーを作る、ということを繰り返しています。それはいい。持参した鍋を誰にも使わせない代わりに、共有の鍋を一切使わないのですから、それはむしろありがたいことです。しかしナズからこの「鍋に作り置き分を放置しておく」という手法を学んでしまった、根は素直なのですが少々気配りに長けていない若者がいたことが、悲劇の始まりだったのであります。
 根は素直なのですが少々気配りに長けていない若者――言わずと知れたビックリの国インド出身のシュリです。

 まず、一番大きな鍋で米を鍋一杯に炊き、それを3〜4日かけて食べて行きます。米は主食です。無くなれば再び同じことを繰り返します。するとどういうことになるか――。当然この鍋はシュリのキープ鍋となり、他の人間は一切使えません。米が主食なのはナズも私も同様ですが、ナズはマイ炊飯器を所持しており、そこで誰に迷惑を掛けることなく終始完結していますし、私はフラット生活が始まって直ぐにタッパを購入済みです。
 そして欠かせないカレーですが……シュリってばこれまた作り置きに走ります。カレーは作りたてよりも数日経った頃の方が美味しいのです。たくさん作って鍋に寝かせておくというのは、カレーを美味しく食べる自然な姿なのかもしれません。……しれませんが、数に限りがある鍋を共同生活の下で使うのならば、そんなカレー哲学は後回しにすべきでしょう。

 米にカレー、これで既に2つの鍋をキープしているシュリですが、「3人で6つの鍋」なのだから、鍋の大きさなどを考慮に入れなければ数字の上では1人当たり2つまで鍋をキープすることが可能です。米で1つ、カレーで1つの鍋をキープしたからといって、わざわざ日記に書き連ねるようなことでもありません。……………………話がココで終わっていれば。
 そう、話はここでは終わらないのです。本日のタイトルから普通に勘が良い方は既に事態を予想できたかと思いますが、シュリのキープ鍋は2つに留まらないのであります。一昨日大きな鍋でチキンカレーを作ったかと思えば、昨日小さな鍋で卵カレーを作り、今日空いている別の鍋で豆カレーを作る……。ある日、料理をしようと空いている鍋を探すと、蓋を開けても開けても使用中で、結局残りが少なくなっている鍋の中身を皿に移し、鍋を洗って使わなければなりませんでした。
 同じカレーを立て続けに食べるのが嫌だという気持ちは分かります。でも、だったら取り敢えず量が少なくなったカレーから皿に移すなり食べ切ってしまうなりしろってのッ! もーどーしてそんなに他人の事を考えずに生きてられるのー? ――という気もチラリホラリとするのですが、彼が悪気や非常識、思い遣りの欠如からこのようなことを仕出かしているのではなく、本当に、単に今までこの手の注意、矯正を受けて来なかっただけなのだということが分かるので、私の気持ちも煮えきりません。
 しかし時には「もう食べ終わっているのか、わざと少しだけ残してあるのか」と悩むほど微量なカレーが残っている鍋が数日間放置されており、これまた結構ピリッとしたりもします。大体平均4つの鍋が常にシュリによってキープされており、小さな鍋を使いたいのに使えなかったり、大きな鍋を使いたいのに使えなかったり、「6つも鍋があるのに……」とこの状況にたそがれたりもします。

 注意をするのは物理的には簡単ですが、生活のあらゆる面で「こうして」「ああして」と言い尽くしているため、精神的に「また言うのかぁ……」という気持ちになっているのが現実です。アミットのように仲良しならばこういう注意は簡単なのですが、そこまで仲良しではないシュリに何度も何度も何度も何度も注意をするというのは、結構気が重いものなのです。(まぁアミットの場合はこんなに注意を必要としない人間性だったからこそ仲良しになれたのかもしれませんが……)
 しかも注意し尽くしていると言っても、「食べ終わったら食器を洗って」「洗った食器は拭いて」「拭かないなら食器置きに置いておいて」「食器を拭くときには台拭きを使わないで」「ゴミはゴミ箱に捨てて」「ゴミが一杯になったらゴミ袋を換えて」「週に1回ゴミ出しして」「夜中に洗濯機を回すのは止めて」というごくごく基本的なことに過ぎず、こんなん注意される方に問題があるだろう……と思うのですが、それでもシュリからすれば1回の注意は1カウントとなるでしょうし、そうなると私はシュリに対して既に数十カウントのゴングを鳴らしているのです。

 しかし気になる……。毎回私が鍋の中身を移し替えて鍋を洗うと言うのは、どうにも理不尽な気がします。注意するのは気が重い、しかしこのまま何も言わずに毎度苛付くのも馬鹿馬鹿しい。取り敢えず、今度会ったら言って、それで直らなかったら諦めよう――そんな決心をしたのであります。
 そして本日の朝、シュリと台所で会ったので、思い切って言ってみました。
鷹瀬 「ねぇ、鍋さ……1〜2個使うのはいいけど3個も4個もキープしちゃうのはちょっと……。中身をお皿に移してくれないかな?」
シュリ 「OK」
 か、軽っ! しかしまたしても行動が伴いません。軽くOKと返事をしたシュリは、そのまま自室に戻ってしまいました……。後でやる、ということなのでしょうか……。私も学校に行かねばならなかったため、放置された鍋を横目で見つつその場を去ったのであります。

 そして夕方、帰ってみると、シュリが使っていた鍋がコンロに置いてあり、期待に胸膨らませて中を確認すると……空にはなっていましたが今度は洗っていませんでした。くぅ〜〜〜!!! 「中身をお皿に移してくれないかな?」では足りなかったようですね。「中身をお皿に移して、鍋を洗っておいてくれないかな?」と言うべきだったみたいです。惜しかったナ、ワタシ!
 ……もう……どうして……1つ1つ細かく言わないと動いて貰えないのでしょう……。ママもう小言言うのに疲れちゃった……。
 今度は絶対に洗うもんかッ!ということで、水を張ってシンクの横に置いておき、シュリの帰りを待ちます。物音でシュリが帰ってきたことが分かり、台所にいるのも確認し、シュリが部屋に戻った後に台所にチェックしに行くと、当然鍋はそのまま……。一昨昨日私が皿に移しておいた微量のカレーもそのまま。食べるなり捨てるなりして……。ああ……苛々する……。

 再び「中身を移し終えた鍋は洗って」と言うべきか、それとも自主性に任せ無言で水を張った鍋を放置しておくか……。――正直に言いましょう、こんな下らないことで一晩中苛々していましたよ、私は。しかも余りに苛々したため、深夜2時頃に置き出してこんな手紙を書く始末。


真夜中2時に苛々が募って書いた置手紙

 苛々を押し隠し、ポップな感じで攻めている(?)のが窺えますかね? これを明日の朝、鍋の上に置いておくか、どうするか……。手紙を書き終えてさえ、再び苛々しながら眠りに就いたのであります。

 子供育てるのって大変なんだろうなぁ……。(←今日の最終結論らしい)


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2002年11月26日(火) 衝撃事件と家内引越
 朝、昨晩書いたシュリへの手紙を鍋の横に置こうかどうしようか迷いましたが、何となく止めました。もう1日待って、それでもこのままだったなら、今度会ったときに口頭で言うことにしようかと……。
 夕方、あーあ、どーせまた置きっ放しの鍋があるんだろうなぁ……と家に帰ると、鍋が綺麗になっていました。漸く……。ふと辺りを見渡すと昨日まで目障りに置いてあった微量のカレーもなくなっています。ふぅ……。少し苛々が解消されました。

 さて、ほんの少々の苛々から解放され、漸く穏やかな気持ちをゲット出来た私に襲い掛かるは、このフラットに来て以来、最高とも言える衝撃だったのであります。
 シャワーでも浴びようか、と思って1階のシャワー室の戸を開けると……床は水浸し、そして……そして……便器の蓋に便が……そう、1センチ程度の人糞が付着しているではありませんかっ! 便器の中に、ではありません。便器のに、ですっ! ナニをどうすりゃこんなトコロに便が付くのさっ?! もー信じらんない!! 絶対ナズです。と言うのは、私たちはシャワーは1階のシャワーを使っても、トイレは2階のトイレを使っているからです。
 ったく、ナズが1階の元キャルの部屋を使うようになってからロクなことがありません。奴は1階を我が物顔で使い始めるし、台所のシンクで痰を吐くし、部屋の扉を開けたまま煙草を吸うので煙が2階まで上がってくるし、私の部屋の真下なので音が伝わり易くてうるさいし、何よりも1階の洗面所を汚すし……。今までキャルが1階におり、「不潔なナズには1階の洗面所は使わせない!」と非常に身勝手な命令をしていたために、1階の洗面所は清潔に保たれていたのですが、キャルという非常識な防波堤を失った我がフラットでは、別の非常識が台頭してきているようです。害虫を駆除すると別の弊害が生まれる――まるで自然界と一緒ですな……この複雑な均衡たるや……。

 とにかく、この人糞を前にシャワーを浴びる気も失せまして、今度はナズの帰りを待ちます。時間的に犯人はナズかシュリなのですが、私の中では勝手ながら犯人はナズと決め付けていました。しかし直接的に「お前が犯人だからお前が掃除しろ」などとは言えません。いくらなんでもこれは不慮の事故なのでしょうから、なるべく彼のプライドを傷つけないように遠回しに注意するべきなのか、それとも何も言わずに放置しておくべきなのか……。
 こんなことで悶々と悩んでいる自分に我に返り、何だか虚しくなります。最近、下らないことで悩みすぎです、私。なんでアイルランドに来てまで他人の便の処理に悩まなきゃアカンのじゃ! ったく!

 シュリが先に帰ってきたらシュリに言って貰おうかな……。ナズが先に帰ってきたら何て言おう……などと苛々しながら誰かの帰りを待っていると、先に帰ってきたのは私が犯人と決め付けているナズでした。
ナズ 「ハイ、トーコ!」
鷹瀬 「……ハーイ。ちょっと頼みたい事があるんだ。こっちに来てくれる?」(ナズを洗面所に呼ぶ)
ナズ 「なんだ?」
鷹瀬 「まず、床見て」
ナズ 「なんだ?! ビショビショじゃないか! シュリだな!」
鷹瀬 「……シャワー終えたら出てくる前に床拭いてね。それと、トイレ見て」
ナズ 「なんだ?」
鷹瀬 「ソレ、掃除してね。私は絶対にしないから」
ナズ 「なんだコレは! 誰だ!」
鷹瀬 「……マイケルは自室のバス・トイレを使っているし、私じゃないのも確かだから、ナズかシュリなのね」
ナズ 「シュリだな!」
鷹瀬 「……どっちでもイイから、やった人が掃除して。私は絶対にしないから」
ナズ 「全く! シュリの奴!」
 余り犯人を吊るし上げるようなことをしてプライドを傷付けるのは避けよう……と思っていましたが、ナズのこの子供っぽい態度に呆れ果て、つい言ってしまったこんな一言。
鷹瀬 「私はシュリじゃないと思うケド。ナズじゃないならシュリに掃除するように言えばいいよ」
ナズ 「……」
 結局犯人が誰なのかは未だに不明ですが、掃除をしたのはナズでした。

 こんなことがありつつも、ナズはこの日も友人を呼んで部屋でずっと喋っており、残りたったの1ヶ月弱ではありますが、これからこういう苛々生活が続くのか……と思うとブルーになったため、それならばと、ナズが今まで使っていた部屋に引っ越すことにしました。ナズの部屋は台所の真上にあり、現在の私とナズの部屋の関係のように上下間の問題で台所での音が伝わり易いのですが、食事を作る時間も音も限られているので、今のこの状況よりはマシなのではないかと……。元ナズの部屋は現在の私の部屋よりも少々手狭になりますが、南向きで日当たりも良く、今の無駄に広く全く日が当たらない完全な北向きの私の部屋よりも全然良いのではないかと……。
 そうと決まれば善は急げ。

 我がフラット唯一の喫煙者であるナズが使っていただけに、煙草の臭いが染み付いてしまっているのが気になりましたが、移ってしまえば暖房効率の良い手頃な大きさに加え大きな窓で、何とまあ良い部屋ではありませんか。こうなるとナズがなぜキャルの部屋に移りたがったのか、その方が気になりますが……。
 ま、しかし良くも悪くもあと1ヶ月。この薄暗い国で日当たりの良い部屋に住んでいるという点(のみ)を堪能しようと思います。


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2002年11月27日(水) 魔除マイケル
 私にとって大問題のナズですが……奴が自分の部屋に友達を連れ込んでウルサイから、奴の真上の部屋から台所の真上の部屋に引っ越したというのに、今日はなぜか連れて来た友達と台所で喋っていました……。計画的な嫌がらせなのかっ?! くぅ……。
 今の部屋に移ってから知ったことですが、この部屋はこの部屋で台所での音がよーく聞こえます。食器棚や引き出しを開ける音、冷蔵庫を開ける音、物を刻む音……耳を澄ましている訳でもないのに、とにかくもう行動の詳細が窺えるほどよーく聞こえるのです。別にその程度の音は全く構わないのですが、時々……
ナズ 「カ〜〜〜〜ッペッッッ」
……………………聞きたくもない音までもハッキリと聞こえましてね。「うるさい」というよりも単に「オエッ」という気持ちになるダケなんですがね。ってか、台所で痰を吐くな。

 さて、このように動く無法地帯となったナズですが、どういう訳か彼はマイケルが苦手です。苦手というのが正確な彼の感情なのか定かではありませんが、マイケルが台所に現れるとナズは一目散で自室に引っ込むのです。シュリや私がいても全く意に介さず、大声で歌は唄うわ友達を呼んで喋るわ、とにかく台所に居座るのですが、マイケルとはかち合わないようにしているとしか思えず、西洋人に対してコンプレックスがあるのか拘りがあるのか、とにかく私にとってはイイ感じです。
 何でもイイ。引っ込んでくれれば。

 ちゃっかり小僧で毒にも薬にもならないと思っていたマイケルですが、意外や意外、図らずも魔除的役割を果たしているようです。しかし魔除マイケルが帰ってくるのはほぼ毎日23時以後、なかなか上手く行かないのでありました。


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2002年11月28日(木) 心は次に……
 正直に記録しておきましょう。
 今の学校は最も長くいる学校だと言うのに、ハッキリ言って私はこの学校に全く馴染んでおりません。基本的にどこででも馴染みにくい気質ではありますが、それでも過去最高の馴染みの薄さではないかと思われます。11週間コースの第9週目も終わろうとしている今でさえ、友達と呼べるほど親しくしている人もいません。「今でさえ」と言うよりも「今更」と言った方が正しく、恐らく余程のことが無い限り最後まで友達は出来ないでしょう。

 4クラス、合計約40人(内日本人11人)という中規模校のため、クラスに関わらず仲良しグループが出来ているようですが、私はそのどのグループにも属さず、常に1人で彷徨っているような感じです。こういう人は別に私だけではありませんが、学校でグループに属さずとも独自の友好関係を既に確立している人もいるので、公私共に1人という人となると一体どれだけいるのか……。
 ――要するに、余り宜しくない状態です。
 授業が終わると図書館に直行し、そのまま家に帰るまでほぼ無言です。ああ、シュリは遅くに帰ってくるので話す機会がないし、ナズとは口を利いていないので、「家に帰るまで」ではなく「寝るまで」ですかね。おっと、もっと正確に言えば「翌日の授業まで」ですか? あはは。

 何度も言うように、本当の友達などそうそう出来る訳でもなく、無闇にパブに通って金と時間を浪費するには1年滞在は長すぎで、更には積極的に出歩いて交流を!というのは最初の数ヶ月に済んでいるのです。その結果分かったこととして、たかだか数ヶ月の付き合いで即席に仲良くなってメールアドレスなどを交換しても、お互い国に帰ってしまうとそれ以後も縁が続くことは稀で、無精者の私なんぞはつい「どうせ続かない付き合いならいーや」などと思ってしまうのが良くないのでしょう。
 まず、英語だろうが日本語だろうが、本当に気が合う人に出会える確率と言うのは非常に低いのです。そんな低確率を掻い潜り、更に本格的な付き合いに発展するケースと言うのは、人海戦術もさることながらひょんなコトから始まることも多いので、そのひょんなコトを見逃さないため、もしくはひょんなコトの確率を高めるために団体行動に身を投じ、常に人との関わりを持っておくというのが理想的な在り方なのかもしれません。留学などで掴んだ国際交流の切っ掛けを、連絡を取り合うなどして、いかに付き合いを深めてゆくかは本人の努力次第です。

 凄いなぁ、感心した実例としては、10年前にたった1ヶ月アイルランドに滞在し、友人を作り、その友人と10年間会うことなく手紙だけで連絡を取り続け、10年後の今、再会を果たして2度目のアイルランド滞在を満喫しているスペイン人のクラスメイトでしょうか。
 また、そこまで深刻に「続かない縁に意味はない」などと切り捨てずに、その場その時を楽しむというのも非常に貴重な経験です。適度に集まりに顔を出し、交友関係を広げ、国際交流だけでなく勉強もし、時間を上手く使っている人を見ると、素直に羨ましいなぁ……と思います。
 ――自分がそれを出来るかどうかは別問題なのですが。

 何が良くて何が悪いのか、客観的に判断することは出来ても、それを自分の人生にトレース出来ないからこそ、人生に苦楽が生まれるのです。
 ――と言うことで、一般論はさて置き、馴染んでいない私に話を戻しましょうか。

 友達がいないというこの状況、寂しいかというとそうでもないのですが、英会話の訓練という点で「マズイな」とは正直思いますし、せっかくの他文化を知るチャンスなのに「勿体無いな」とも思いますし、何よりも単純につまらない状況です。
 先月末までアミットがいたので外との付き合いに全く力を入れていなかったことも原因ではありますが、基本的に大人数でのグループ行動は好きではない上に、よほど好きな人と一緒でない限り独りで行動する方が好き、というハグレ気質が強いのも難点なのかもしれません。ってか、難点なのでしょう。いや、難点なんです。

 今の現状を日本の友人に報告した際に指摘された、こんな一言にハッと目が覚める思いです。
「こうと決めた人にだけ一直線って、日本での人との付き合い方とまるで同じことしてるんだねぇ」
 ………………ねぇ。まぁ、性格ってなかなか変えられるもんじゃないからね……。

 思うに、海外など新天地に赴いた人が今までからは考えられないほどイキイキするというケースはままありますが、これは何も性格が変わるからではなく、「今までの行動が否定されない場所に収まる」もしくは「同じ事をしていても受け入れられる場所を見付ける」からだと思うのです。
 そして私がイキイキしていた土壌は……アレ? インドってコト?

 何だか間違ったオチに着地しそうなので、強行手段で幕を閉じましょう。
 新年明けから始まる次の学校では少しは馴染むように努力しよーっと。


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2002年11月29日(金) 留学生それぞれ
 早く書きます。


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2002年11月30日(土) 怒涛のインド下調べ
 来年3月のインド旅行の準備を、と言うことでここ数日、日本から送ってもらった「地球の歩き方〜インド編」を読んでいるのですが……かなり怯んでおります。こ、これは聞きしに勝ると言うか……簡単に行ける国ではなさそうです。
 第一、通常の「地球の歩き方」の構成として「旅の準備編」と題される基本情報は巻末に掲載されるのですが、インド編は「旅の準備と技術編」というタイトルの巻頭掲載で、「情報」と言うよりもむしろ「心構え」と言った雰囲気が濃厚な上に、割かれているボリュームも相当なものなのです。もしかしたらアジア諸国の「地球の歩き方」はこんな感じなのかもしれませんが、私が持っているヨーロッパ諸国の「地球の歩き方」では見られない特別項目もあります。
「保険と予防接種について」(※画像はこちら
■保険には入っておこう
 インドでトラブルや病気になる可能性は、残念ながらアメリカやヨーロッパより高いのが現状。
 (略)
 ただインドでは怪我をすることより、病気になったり持ち物を盗まれたりする可能性が高いので、特約は必要だ。

 軽くパンチを食らった私の目に飛び込んでくるのは、同じページの隅にある「地球の歩き方」の醍醐味、読者投稿からの情報を元にした編集者による「豆情報」です。
「被害続出! 保険金目当ての誘いに注意」
 もはや「情報」ではありません……。これは「警告」と言うのではないでしょうか……。ページを進めればそこには
「悪徳トラベルエージェントに注意」(※画像はこちら
の文字が……。とにかく注意警告の類で満ち満ちています。

 元から興味があった国だけに、どこを読んでも面白い上に、アミットから聞いていた話が違った視点、つまり日本人からの視点で書かれていたりして、行きたい気持ちはますます募るのですが、合間合間に挟まれる情報という名の警告にビビる気持ちも昂ります。
 例えば「おいしい食事にありつくために」という食に関するウキウキ情報欄でさえも、ところどころにハッと目を覚まさせるピリリと厳しい現実が織り込まれています。ほんの一部の抜粋としてはこんな感じです。
■瓶詰めの飲み物
 瓶詰めの安心できる飲み物としては……(略)……。
■本物のフレッシュジュースも飲める!
 町角で、果物を並べ、ミキサーを回しているのはフレッシュジュース屋。……(略)……。水や氷を加えるので安全な飲み物とはいえないかもしれないが、このおいしさは是非味わって欲しい。
■ヨーグルト・ファンの女性なら、ラッスィーを飲んでみよう(※画像はこちら
 ラッスィーは、ヨーグルトに砂糖と塩を加えてかき混ぜた飲み物。……(略)……当たり外れがあるので100%おいしいとは保証できない。また、水を使うので100%安全とも保証は出来ない

 この程度は序の口で、「ドラッグによるトラブル実例集」では「死亡した」「自殺した」「精神の異常をきたしている」などをキーワードにした3件の実例をサラリと紹介しており(※画像はこちら、こう言ったジャンル別の体験談とは別に、3ページに渡る全15件の体験談を掲載した「旅のトラブル集」という特集が組まれており(※画像はこちら、更にはコレラ・マラリアの症状の詳細に体験記(※画像はこちら、「鉄道旅行入門編」という項目の最後の締め括りはやっぱり「鉄道旅行トラブル・リスト」というのも現実の厳しさを垣間見せます。

 このように、ビビる気持ちは完全に煽られていますが、それでも不思議とインドに行きたい気持ちは萎えません。そして一方で――これはこの「地球の歩き方〜インド編」全編に渡って感じることですが――この記事を書いている記者がインドをこよなく愛していることが窺えるのが楽しくもあるのです。
 例えば先ほど挙げた「鉄道旅行トラブル・リスト」でも、インドへの愛に溢れつつも軽快にかっ飛ばした文章が展開されています。
「鉄道旅行トラブル・リスト」
 インドの列車の旅を、絶対に楽しんで欲しいし、何事も起こらないことを祈るが、それでも100%安全とは言えない。そこで起こり得る悪い例もいくつか挙げておこう。万一そんな目に遭ったとき、少しでも助けになるかもしれない情報として目を通しておいて欲しい。これくらいのこと、どんな旅にもつきものだし、日本にいたってもっと恐ろしい目に遭うこともあるのだから。
■事故
 (略)
■盗難
 鉄道のトラブルのほとんどがこれ。置き引きからスリ、睡眠薬泥棒まで手口もさまざま、多くの旅行者が泣かされている。(略)
■強盗(※画像はこちら
 これはそうしょっちゅうある訳ではないが、あるときにはあるのだ。武装強盗が出没するのは、地域やそのときの社会情勢にもよるが、不運にも遭ってしまったら、せめて殺されないようにしよう
 対策といってもどうしようもないが、拳銃を突きつけられたら、たいてい本物だから、さっさと相手の欲しがるもの(現金、貴金属など)を渡してしまうこと。取引や抵抗はムダ。相手も焦っているから、モタモタすると危ない。ルピー入りの財布、現金はまず渡してしまう。

 ……………………うう……。よろめく私にまだまだとばかりに襲い掛かるは「その他のトラブル」(※画像はこちら、これで全部かと思いきや「くどいようだが、一般的な注意をもう一度」(※画像はこちら
 ガイドブックでは最悪を想定した情報を多く載せて注意を促すようにしているだけだとは思いますが、それでも想定されるケースが結構深刻なのでやはりビビるものはビビるのです。

 そんな訳で、充分にビビった私の渡印計画のキーになるのは、やはり「私たち、友達よね?」と何度も確認したくなる、どうにも友情が一方的な気がしてならないアミットです。12年間ラブが昂じ続けているにも関わらず、最新のメールにおいても「彼女に会わずには1日を終えられないんだ」という日増しに彼女とラブラブになって行っている偉大なインド人アミットですが、彼女に会うために250kmの道のりを3時間以上かけてバイクで直走ることは出来ても、私のために時間を割いてくれるとは思えず心配なのですが……。彼女と過ごす時間が減っちゃうだろうし……。
 アミットが面倒を見てくれるという保証がないとかなり厳しそうな渡印なので、とりあえずアミットに「本気で3月にインドに行くつもりなんだけど、時間があったら会えるかな? いや、忙しいならイイんだ。ラジスタン辺りに行くから……」という非常に控えめな探りを入れてみたところ、こんな返事が返ってきました。
You can't come India without coming to Amit's place.
 よ……良かった……。
 しかし、ラジスタン(Rajasthan)を中心に、アミットの故郷グジュラティ(Gujarat)に立ち寄ることを視野に入れつつサーチを再開すると、こんな情報が舞い込んで来たのであります。
【最新スポット情報】 インド:ヒンドゥー寺院襲撃事件(2002/09/26)
1.2002年9月24日午後5時20分(現地時間)、インド西部グジャラート州の州都ガンジーナガルのスワミナライン・ヒンドゥー教寺院において、武装集団数名による銃乱射事件が発生し、25日早朝の時点で少なくとも女性6名、子供4名を含む25名が死亡し、多数が負傷しました。
 インド政府は軍特殊部隊を現地に急行させ、25日早朝、武装集団2名が射殺され事件は解決しましたが、インド国内の宗教関連施設等では厳しい警戒体制がとられています。

【危険情報】 インド
● 下記以外のインド全域「十分注意して下さい」(引き下げ)
● インド北部のカシミール地方全域:「退避を勧告します」(継続)
● パキスタン国境付近の地域(グジャラート州の一部、ラージャスターン州の一部、パンジャブ州の一部、ヒマーチャル・プラデーシュ州の一部):「渡航の延期をおすすめします」(やむを得ぬ事情により滞在される方を除き、安全な場所へ退避することをおすすめします)(継続)
● 北東部のマニプール州:「渡航の延期をおすすめします」(退避手段等について予め検討して下さい)(継続)
● 北東部のアッサム州、ナガランド州、トリプラ州、メガラヤ州:「渡航の是非を検討して下さい」(継続)
● アーンドラ・プラデーシュ州、オリッサ州、チャーティースガル州、ジャールカンド州、ビハール州の山岳地域:「渡航の是非を検討して下さい」(継続)
グジャラート州のパキスタン国境付近以外の地域:「渡航の是非を検討して下さい」(継続)
海外安全ホームページより)
 ラージャスターンにグジャラート……発音こそ違うケド、まさしくメインに行こうと思っていたラジスタンとアミットの故郷グジュラティだ……。そういや9月末頃にアミットが言っていたっけ……「僕の馴染みの寺院がテロに遭った」って……。コレかぁ……。
 普通、文字情報よりも当事者からの言葉の方が重いと思うのですが、なぜか今回に限っては、当の本人から聞いていたよりも、こうしてウェブサイトで客観的な事実として突き付けられた情報の方が重く感じます……。

 当然ビビった私はアミットにこんな内容のメールを出しました。
今、インドのガイドブックを調べてるんだけどね……なんだか調べれば調べるほどインドに行くのが恐くなって行くんだけど……。だってね、海外旅行の危険勧告地域についてのウェブサイトを確認したら、グジュラティ(Gujurat)――そう、アミットの場所ってばめっちゃ危険度高いんだよ……。この前の9月にパキスタンからのテロ攻撃受けたじゃない? そのせいで「渡航の延期をオススメします」って書いてあるんだよ、ウェブサイトには。それにね、このウェブサイトによるとインドほぼ全域「要注意」なんだけど……。ううう……。
 どーせ「大丈夫だよ」というカンジの返事が来るのでしょうが……。
 いやしかし、私はアイルランドでアミットと出会っているので、アミットがこの聞きしに勝るビックリの国インドで生まれ育ったのかと思うと感慨も一入です。あの不思議な底知れない人格は、こういう環境から生まれたのかぁ……と思うと、なぜか納得できます。
 「地球の歩き方」の巻頭の「人間のるつぼを旅する」という章にも、思わず頷いてしまうこんな文章がありました。
 インドはまた、人間の原型のオンパレード――あまりにも聖なる人から、物欲の塊のような俗物、幼児のナイーブさを失わないままで成長したような人から、インドの歴史のように複雑な屈折を見せる怪人物まで、どんな作家の想像力もとても及ばない、人間のあらゆるタイプがいる。
 うわ〜うわ〜!! やはりどうしても行ってみたいインドなのでした。


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2002年12月1日(日) 小休憩
 本日はアイルランドにしては珍しく、丸1日嵐でした。いやー、本格的に冬になっていっている感じ……というか、もう完全に冬なのかー……。それにしてはそこまで寒くないような……。10月下旬の頃の方が、気持ち的に寒かった気がします。なぜでしょう? 暖房が使えないことへの絶望感から……??

 とにかく、吹き荒ぶ外の景色を横目に、1日家でゴロゴロしていましたとさ。


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2002年12月2日(月) インド人の太鼓判
 来年3月に控えるインド旅行の計画を立てており、先日、「インドに行くの恐いんですけど」という内容のメールを現地人であるアミットに送った訳ですが、返ってきた返事がコレです。
■2002年11月30日(土)に届いたメールの一部抜粋
If you see India as a foreigner it will be always dangerous but
there is nothing like that. We are living in Gujarat and we never
find anything wrong. And if you have got any known person with
you then there is no worry.
Tomorrow morning i am going Delhi but there is strike of taxies
and rickshaws there on Monday and i will reach there on Monday,
cool isn't it???
Anyway it is India, nothing official about it aa ha.

 まさしく予想通り、何の役にも立ちゃしない。「We are living in Gujarat and we never find anything wrong.」って、この前のテロは「anything wrong」にはカウントされないンかいっ?! しかも予想通りと言うか、予想以上と言うか、「とにかく、これがインド。ここには公式なモノなんて何も無いのさ。ア〜ハ〜」で締め括られる手紙って……。
 パキスタンとの緊迫した情勢もさることながら、インド全域で日本人が狙われる理由はただひとつ、余りにも物価の格差があるインドにおいて、日本人が「金持ちでぼーっとしているカモ」だからです。旅行者には、住人には決して降りかからない類の危険があるということを、アミットがどこまで考慮しているのか……。

 当てにならない現地人の太鼓判よりも、やはり日本人が書いた「地球の歩き方」の情報につい頼ってしまうのでした……。


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2002年12月3日(火) 私の次に……
 さて、通常の部屋貸しタイプのフラットと違って家貸しタイプのフラットである我が家では、毎度毎度の集金日にゴタゴタが付きものとなってしまったようです……。
 現状を説明する前にまずは基本情報から明記しておきましょうか。

 部屋貸しタイプというのは個々が自分の分の家賃(部屋代)を家主に支払う通常の形態ですが、家貸しタイプというのは家主が1軒を丸ごと個人に貸し、その後はその家に何人住もうがどう住もうが、部屋の割り当てやレイアウトなどはどうでもいいから、とにかく毎月1軒分の家賃を支払えというタイプのものであります。そして家貸しタイプの我がフラットの契約書を交わした「家主から家を借りた個人」であるザックが、10月中旬から2.5ヶ月間、不在期間の家賃を置かずに一時帰国したことから、すべてのゴタゴタが始まっているのです。

 丁度今から1ヶ月前、先月3日の集金日にも「家賃1100ユーロが揃えられない」という初歩的な問題があったばかりだと言うのに、どうしてこうも事態が改善しないのか、今度は新人アイリッシュのマイケルがやってくれました。
 毎週末に実家に帰っているマイケルは、先月11月末に12月分の家賃を請求したところ、
マイケル 「今すぐには払えないよ。今度実家に帰ったらその時にお金を持って帰ってくるから、12月1日まで待ってよ」
と言っていたのです。しかし12月1日は日曜日……では2日の月曜日に戻って来て支払うつもりなんだな、と昨日1日マイケルの帰りを待ち侘びたのですが、いつもであれば家にいる時間になっても彼は現れず、先週末の帰省からこのフラットに帰ってきた形跡もありません。そして引き続き本日もマイケルの帰りを待ちますが、帰って来ません。連絡もありません。
 シュリがマイケルの携帯番号を知っているのかと思いきや、誤操作で消してしまったとのことでこちらから連絡できず、ひたすら待ちの一手です。

 大家に事情を説明し、明日まで待ってもらうように頼んではいますが、前回の支払遅延に引き続き今回も、ということでお互いに良い気分はしません。

 そんな中、私は私の予約金を取り戻すために今月末までに次の入居者を見付けなければならないのですが、丁度同じ語学学校に通う日本人留学生が1月からのフラットを探しておりまして……。しかし知人に勧めるには余りにも可哀想……でも物理的、金額的には本当に最高のフラットな訳で……。
 ――と、言うことで、取り敢えずありのままを正直に話し、判断は本人に委ねることにしました。
 事前に以下のようなメールを送っていたところ、本日見学に来たい、ということで快く迎え入れますが、反面「大丈夫かなぁ……」という気持ちも募ります。
----- Original Message -----
From: To-ko Takase
To: T君
Sent: Thursday, November 21, 2002 9:26 PM
Subject: 天国フラット概要

やほ、トーコっす。
君を天国にいざなうフラット情報。取り敢えず事前に送っておこうかと。
見学は私が暇なときならいつでもOK。――で、大抵暇です。


★住所: *** *********, *********, Castletroy, Limerick

★部屋構成: 5部屋(大きな部屋4 *EUR235、小さな部屋1 *EUR160)

★メンバー紹介:
  ・シュリ インド 24歳 学生
  ・ナズ バングラディッシュ 38歳 労働者
  ・マイケル アイリッシュ 25歳 学生
  ・ザック バングラディッシュ 28歳 現在一時帰国中
  ・デーモット アイリッシュ 家主 ※一緒に住んでません。

★メンバー概要:
 英語が不自由なナズははっきり言って毎回何を言っているのか不明です。拙い英語ながら、頭の悪さが窺える彼には、余り近寄らない方が無難でしょう。根は悪い人ではない……のかもしれませんが、何度も痛い目を見ている私としては、良い感情を抱ける筈もありません。一応、前のフラットメイトが「彼は良い奴だよ」と弁護していたので、その言葉を信じて恨むトコロまでは行くまい……と自分を戒めているカンジです。
 何せ言うことが毎回コロコロ変わるので、真に受けると痛い目に遭います。何か決定的なことを言っていても信じてはいけません。特に彼の言う「大丈夫、俺が知っている」的な発言はシカトするがベスト。彼が何か知っていた試しがありません。それどころか、大抵の困難は彼の「大丈夫」を真に受けたことから始まっています。

 現在帰国中のザックはナズ友人で、このザックが自分の帰国中の家賃を置いて行かなかったために、残りの住人全員がエライ目に遭いました。私は恨みを忘れません。ザックを信じてはいけません。このお金を置いて行かなかったのも、100%恋……もとい、故意です。このザックが1月に帰国する予定です。この家を借りた責任者のため、皆と同じ金額でEn-Suiteの部屋を使っているという……。
 このフラットを借りる時、奴は他のメンバーには「月220」と言っていて私にだけ「月230」と言っていたのです。その後色々あり、全員が月235に落ち着きましたが、私からボロうとした事実は消せません。

 文明人として一番まともに話が通るのがシュリです。取り敢えずシュリとは常に意志の疎通を図り、不安や疑問があれば忌憚無く相談しましょう。一緒になって困るだけかもしれませんが、独りじゃない、という安心感が得られることでしょう。彼は11月から我が家に来た新参者のため、ナズやザックの友人ではなく、彼らに少々の不信感を抱いています。そう、お仲間です。友情の芽を育むことをオススメします。ただしかなり lazy です。「明日までにやってね」的な頼みは事実上の時の流れの「明日」までに実現したことがありません。しかしこれはシュリだけでなく、日本人以外全員に言えることです。
 この家の家主もかーなーりっ lazy です。心して掛かりましょう。

 我がフラット唯一の西洋人マイケルですが、ほとんど家にいません。平日は夜遅くに帰ってきて、週末はコークに里帰りするため、顔を 合わせる機会自体がそもそもありません。フラットのゴタゴタがあってもどこか他人事で生活しています。彼も11月に来たばかりの新参者です。英語の勉強に、と話し掛けるも良し。素知らぬ顔で過ごすも良し。

★家賃: EUR 235/month

★初回料金: EUR 538
  当月家賃 235+予約金 235+光熱費予約金 30+ガス予約金 38
  (予約金合計 EUR 303 は出て行く際に、次の入居者から貰う)
※ガス予約金について
 どうやらザックが帰国するまで暖房を使わないことに決めたようです。ザック帰国後に1人38ユーロ請求されると思うので、暖房が必要なら 払うが良し、必要ないなら払わぬも良し。

★光熱費などの支払:
 2ヶ月遅れで2ヶ月分の請求書が届くので、請求書が来てから人数割りします。例えば7、8月分の請求は9月末に来た。出て行く際には、自分がいた月の概算分の金額を置いて出て行く、という仕組み。大体月20ユーロ前後です。

★備考:
 部屋貸しではなく家貸しのため、住人が何人であろうと月EUR1100支払わなくてはならない、というのがこの家の難点。そのため誰か欠けるメンバーが次の入居者を見付けられないと全員に影響するため、出て行く際には事前に告知して、新入居者募集を手伝ってもらうこと。ただ、新入居者は結構すぐ見付かります。何せ綺麗で安いので。

★入居に当たり最低限必要と思われるモノと参考最低価格:
 ・ヒーター(EUR29):暖房がいつ使い始められるか不明な我がフラットでは必須の品。私が次のフラットで必要ないようなら半額くらいで売ってあげます。あげません。ちなみにArgosで購入。
 ・掛け布団(EUR14):置いていってあげたいところですが、寒いので持って行くと思います。MilkMarketでSingleサイズ14ユーロで売ってました。
 ・シーツ(EUR11):私の次のフラットに無ければ持って行きます。Pennyで「シーツ・枕カバー・ベッドカバー」の3点セットで11ユーロ。ただシーツは余分にあるので、枕カバーなどタオルで代用すれば買う必要はないかも。
 ・枕(EUR4.5):私の次のフラットに無ければ持って行きます。Pennyで4.5ユーロ。
 ・タコ足延長コード(EUR5):部屋にはコンセントが2個。ヒーターと電気スタンドを使うともう一杯。これで足りないようなら必要でしょう。シティセンターのMarry'sで4個口が5ユーロちょっとで売ってました。


――以上、フラット情報でした。

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鷹瀬 とうこ(To-ko Takase)
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 ……………………私も大概正直なもので……。まぁ言葉が不自由な者同士、余り変なトラブルには巻き込みたくないな、と。本人がこういうトラブルを気にしないのであれば構わないのですが、騙すのは余りにも心苦しいので、一応正直に話して、そこから先は本人に任せようかと……。

 そして本日T君が見学しに来たワケですが……。今週土曜日にもう1軒見に行くそうで、返事は今週末ということになったのであります。


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2002年12月4日(水) 小休憩
 学校もあと実質7日。早く終わらないかなぁ〜。


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2002年12月5日(木) Out of control 状態
 早く書きます。


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2002年12月6日(金) 冬将軍来たる
 一昨日くらいまで、寒いと言ってもそこまで寒くはなく、「ああ、これが長期滞在者がよく言う『アイルランドの冬は日本に比べてそんなに寒くない』ということなのかなぁ……」とぼんやり思っていましたが、昨日、今日と、身体の芯から震え上がる冷え込みとなっております。恐らく我が家では未だに暖房が入っていないという事実がこの寒さを「震え上がる」と称すモノに格上げしている原因かと思うのですが、少々前まではそれでも台所や洗濯機、乾燥機などを使っていると食卓付近の空気が温まり、食事の間くらいは食卓に留まることも可能でした。が、昨日、今日の冷え込みにはこんな熱の2次利用は焼け石に水なようです。寒くて食卓で食事をするのが苦痛です……。
 自室にはマイ・ヒーターがあるので全く問題はありませんが、部屋を1歩出るとそこは外並みの気温、というのが現状です。ヒーター購入に当たって散々悩みましたが、今から思うとヒーターなしでこの生活に耐えるとしたら、家に帰ってきてまだ身体が温かい内に食事を済ませ、食事を取ることで再び少々温まった身体をキープしつつ熱いシャワーを浴び、そのまま布団に直行――という生活しか出来ない気がします……。

 さて。本日は雨も風も無く、ただ単に気温が低いというある意味冬らしい冬の日で、地面は薄っすらと凍結し、土草には霜が降り、景色的にも寒寒としたものになっておりました。
 既に起きたのが「あと20分で家を出ないと遅刻」という時刻だったため、朝食も取らずに寒い世界に飛び出ます。そう、文字通り「飛び出た」のです。たかだか30分の距離だから、もう手袋はしなくていいや、と両手をポケットに突っ込みつつ、軽快に路肩を飛び越えようとしたまでは良かったのですが……着地した地面が凍結しており、豪快に転倒するに至りました……。
 いや〜人間、「これは転倒するな」と自覚してから実際にするまでの短い間に色々考えることが出来るものなんですね……。自動車に撥ねられた人が宙に浮いている間に自分の一生を走馬灯のように思い浮かべるというのも、なるほど、頷けます。私も地面に足を取られてから両手両膝を地面に打ち付けるまでの間に色々考えてましたよ……。

 まず、手袋をせずに両手をポケットに突っ込んでいたのが敗着でした。ただこんなアホな状況でそれでも自分を見直したのが、何だかんだと慌てながらもしっかり両手を地面に着いて転倒の衝撃を和らげることに成功した合格ラインの瞬発力をギリギリ持ち合わせていたことでしょうか。かなり豪快に前のめりに転倒したにも関わらず、出血は右掌に出来た3ミリ程度の傷からのみ! 両膝も暫くズキズキと痛みましたが、酷い内出血には至らず、転倒直後に立ち上がり、10秒以内には何事も無かったように振舞える程度のダメージに抑えましたとも。
 いやー、やるね、29歳の私。みたいな。

 両膝から出血しなかったのは、厚手の生地の長ズボンを履いていたからということもあります。手に出来た傷だって、手袋をしていれば出来なかった傷かもしれません。
 寒い国でモコモコと着込んでいるせいで動きが鈍くなる反面、転んだ時の衝撃は少なくて済むというパラドキシカルな事実に、「うお〜人生みたいだ!」と感動した冷え込み厳しい午前8時半――私の頭のメモリは空きまくりのようです……。


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