stay in IRELAND
愛蘭滞在記(5)〜Limerick編B
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一つ屋根の下、他人同士が長期に渡って生活を共にすれば、色々ゴタゴタはあるでしょう。つい先日にも大きなバトルがあったばかりです。表面的になっていないだけで、キャルの夫と娘の参入、ザックの一時帰国、アミットの帰国……と、空き部屋への入居者も未だに決まっていません。この先フラット生活はどうなって行くのでしょう……。
14日の壮絶な戦いを経て何がどう変わったかと言うと、結局のところ余り変わっていない気がします。私はあの戦いの前からナズとは口を利いていませんし、彼は相変わらずTVを観ていますし(でも扉を閉めるようになった……カモ)、彼の生理現象「カ〜ッッッッペッ!」だってもちろん健在です。
彼の休日は土日で私の休日と完全に重なるため、とにかく彼と過ごす時間を一時でも短くしたい私は、本日は朝の「カ〜ッッッッペッ!」を聞く前に気力を振り絞って起き出し、朝もハヨから大学の自習室に逃げ込みました。私は書き物が趣味なのでパソコンさえあれば何時間でも時間を過ごすことが可能……というより、むしろ何もなくても自らコンセントのある部屋に篭る傾向が強い人間なので、今の環境でも全く問題ありませんが、コレ、家でゆっくり過ごすのが好きな人には厳しいだろうなぁ……と思い、改めて自分の趣味が非常に幅広くツカエルことを再確認するのでした。
さて。朝早く家を出て、夜遅くに家に戻ると、いつもは誰かしらいる筈の食卓に誰もいません。皆仕事なのかなぁ……と思いつつひっそりと夕食を作り、そそくさと食べます。
キャルは部屋にいるようですが、寝ているのか出てきません。ザックとアミットは仕事に出ているようで、ナズは部屋にいるのかいないのか分からない状態でした。
夕食を終えてシャワーを浴びていると、一瞬シャワーのお湯が止まります。「え? 何?」と思ってしばらく様子を見ていると、10秒ほどで再びシャワーのお湯が戻り、人の気配がしたことから誰かが表にあるシャワーの電源を消したんだと分かりました。我が家のシャワーは部屋の外にシャワーの電源があり、それをONにするとシャワーが使えます。時々誰かが電源を消し忘れていることもありますが、今回は扉が閉まっていて水音がしているのですから、誰か人が中にいてシャワーを使用中であることは分かるはずです。一体誰が一時的に電源をOFFにしたのでしょう。
……ナズ? え、これって嫌がらせ?
耳をそばだててシャワールームの中から扉の向こうの様子を伺うと、隣の台所で誰かが料理をしている音が聞こえてきます。……やはり誰かが電源を消したようです。偶然? 故意? どっち?と疑心暗鬼になりながらシャワーを終え、恐る恐る台所を覗くと……料理をしていたのはキャルではありませんか。
え? アレ?と戸惑いながらキャルに挨拶すると、なぜかその態度が非常に硬く、いつもの笑みの挨拶もありません。「アハ、私シャワー浴びてたんだけど、間違えて電源消しちゃったのかな?」などと軽口を叩ける雰囲気でもありません。
………………え? キャル、私に怒ってる? なんで?
――ああ、理由は思い当たります。10日から秘めやかに囁かれ始めたキャルの子供入居問題です。11日にザックから
ザック 「トーコからキャルに言えよ。『子供がいるから次の入居者を探せない』って」
と無茶なことを言われていますが、私は「それは本来、代表者であるザックが言うべきことでしょ」と言っていました。ザックは自分もキャルが子供を連れてくることに不満があるにも関わらず、矢面に立つのが嫌で、「子供が来るのをトーコが嫌がっている」と言った可能性が考えられます。
実際に、私も「もしもキャルの子供が煩かったら私も他のフラット探すことになるかもしれないし……」という言い方はしているので、これを上手く利用されているのではないでしょうか……。ザックの毎度毎度のあの逃げ腰な態度を見ていると、毅然として公平に事態に対処できる気が到底しません。当然、万国共通このような文句を言う際に、「ヤダ、って××が言ってたしさ」と言う方が何かと言い易いでしょう。
この推測をより信憑性のあるものにする出来事が、実は昨晩起こっています。昨晩、台所でザックがキャルに「話がある」と切り出しており、その際私がシャワー室から現れたのを確認してから、「後で」と私の前で話すことを避けていたため、都合良く私の存在を使った可能性は充分に考えられるのです。
勿論、私も5歳の子供が家に加わることにかなりの抵抗がありますし、実際にそう言ったので、そのことを報告されてしまうのは仕方ないのですが、どうにもこうにもザックの遣り口に「汚いなぁ……」と感じてしまいます。まぁまだそうと決まった訳ではありませんが、この家に入居した当初にシチュエーションは違えど同じように「使われた」ことはあるので、今回の事態も想像に難くないのでした。
何にしてもキャルが私に対して怒っているらしいのは事実であり、ナズの件も含めて早々に全員でオープンに話し合う必要があるでしょう。
【追記】
それにしても、少々気になるのは「シャワーの電源をOFFにしたのは単なるアクシデントか故意か」という点です。また非常に気になるのが、この直前に私の冷凍していたパンが表に出されていたという事実です……。この家でパンを食べるのは私だけで、このパンが私のものだと言うのは勿論全員知っています。単に何かを取り出す際に邪魔で一時的に表に出し、その後しまい忘れた、というなら構わないのですが、タイミングがタイミングだけに結構ビビっています。わざとだったら本当に恐いっす……。
普通、どんなに怒っていてもシャワーの電源は落とさないし、冷凍食品を表に出す、なんて荒業もしないと思う(願う?)のですが……どっちも偶然であって欲しいものです。仁義なき戦いは嫌ですから……。
さて、ある意味ピンチのワタクシ、キャルの旦那と娘が来る前に早く全員での話し合いの場を持ちたいものです。
色々水面下で動き周り、とにかく家を借りている代表者であるザックと前もって話し合いをするべく、携帯電話にメッセージを入れます。
I want 2 talk with u about our flat problem. Can
u make a time for me?
しかし、しばらくしてからザックから電話が掛かってきて、今日は家に帰らないとのお返事が……。ではいつならば時間が作れるのかと聞くと、「明日なら……」ということになり、明日いよいよ代表者であるザックに「全員での話し合い」を提案します。
私のフラットもゴタゴタしていますが、他の日本人留学生も時を同じくしてフラット問題で少々大変な目に遭っています。
彼女が今月中旬から入居する予定だったフラットに欠員が生じたため、残りのメンバーで家を借りることが出来なくなり、全員の入居が不可能になったそうで、ここ数日の間に新しいフラットを探さなくてはならないと言うのです……。
……フラットに欠員が生じたため、残りのメンバーで家を借りることが出来なくなり……
………………やはり次の入居者が決まらないと言うのは非常に厳しい状況なのではないでしょうか。
いっそ、どうして代表者である筈のザックがああものんびりと構えているのかが分かりません。特に彼は来月中旬から3ヶ月間一時帰国するため、その前に次の入居者を決めなければ、彼だって……というよりも、彼こそが最もダメージを受ける筈です。それを、何度も機会があったにも関わらず子供の参入問題をうやむやにしてきて、もう明日にでもキャルの子供が来るという今になってさえ、事態を解決しようとしていないのは、一体なぜなのでしょう……。
子供がいることがそんなに問題か、と言いますと、これはやはり結構な問題です。
実際次の入居者が決まらないと私もピンチなので、現在クラスメイトに聞いて回っているのですが、やはり皆「いや、子供がいる家は……しかも5歳ってのは……」と尻込みします。
また、今回の件に関して視点が自分本位に偏らないようフラットでの共同生活の一般的な常識を知りたかったので、クラスメイトに幅広く意見を聞きます。
鷹瀬 「自分のハウスメイトの1人が、自分の伴侶と子供を部屋に呼び寄せる、っていきなり言い出したらどう思う? こういうのは普通にあること?」
学生 「それは連れてくる前に、他のフラットメイトに呼び寄せて良いかどうかを尋ねるのが礼儀だし、常識でしょう」
国籍を問わず手当たり次第意見を聞いて周りましたが、全員この意見でした。誰かが欠けて空室が出来れば、その分余分に家賃を支払わなければならない訳で、これは個人の問題ではなく全員の問題です。他の同居人に是非を問うのはやはり当然でしょう。
ちなみにこんな質問も……。
鷹瀬 「私のハウスメイトの1人が頻繁に友達を家に呼ぶんだよね……。2〜3人とか、多い時は5人とか。こういうのって普通?」
学生 「5人はちょっと……。1人とか2人でも、頻繁にってのは常識から外れてると思うけど。他の人は文句を言わないの?」
鷹瀬 「……ってか、他の連中も友達を泊めたりとかしてるし」
学生 「ああ、でもウチのフラットもたまに友達を泊めたりしてる人いるよ」
鷹瀬 「どのくらいの頻度で? 何泊くらい?」
学生 「何泊って……1泊だけど……。月に1回、そういうことがあるかないかくらい。週末とか」
鷹瀬 「ウチさ……つい先月まで1ヶ月間2人ほど彼らの友達が泊まってたんだよね」
学生 「1ヶ月?! しかも2人?!? ……ねぇ、トーコ……なんで他に移らないの? 移った方がイイよ。そんなんじゃ新しい入居者なんか見付けられないよ。そんなアパート、誰も住みたくないもん」
………………早く全員で話し合い、事態をハッキリさせたいものです。
昨日に引き続き、朝、台所で鉢合わせたキャルは依然として頑なな態度でしたが、夕方家に戻って暫くする内に態度も軟化してきました。キャルの態度が柔らかくなったのには、アミットの存在が一役買っています。
とにかく彼は事態がどんなに深刻であろうと、いつも陽気でニコニコしています。彼の口癖「Take
it easy. Doesn't matter.」は彼の人格をよく表しています。
彼は私とナズが喧嘩をしたのを知っていましたが、それに対してのわだかまりは全くないようです。
鷹瀬 「いや〜、アミットに喧嘩しているところを見られないで良かったよ」
アミット 「Doesn't matter. 見てたって止めないさ。時々人は怒ったりするし、喧嘩したりもする。これも人生の一部だよ。(原文:It's
a part of life.) ちょっと前に僕とザックが物凄い大喧嘩したのを知ってる? でも次の日には元通りさ。そんなもんだよ」
他にも彼の言葉で印象的だったのが、私が「アミットが帰った後に部屋が空くけど、後任者は探した?」という話の時のアミットの台詞です。
鷹瀬 「Please look for a nice person.」
アミット 「No, No, To-ko. Everyone is nice. Cows
are not nice. Dogs are not nice. But people are always nice.」
他にもこんなことを言っていたのが印象的です。
アミット 「僕の父の教えで、『人と知り合ったら、必ずその人の良いところだけを見ること』っていうのがあるんだ。勿論人は良いところも悪いところも持っているけど、悪いところは覚えておく必要なんかないんだよ。良いところだけを覚えていて、悪いところは忘れる。そうすると、その人を思い出すときに幸せな気持ちになれるだろ?」
そう言えばサラも
サラ 「どんな時でも、どんな相手でも、『嫌い』なんて思っちゃいけないよ。人生はとても短いんだから、人を嫌いになるなんて馬鹿馬鹿しいことだろ」
と言っていたので、これはもしかするとインドの国民性、もしくは宗教的な意識に基づいたものなのかもしれません。
キッチリかっきりした話、ビジネスライクな話をしようと思うとかなり面倒な相手ではありますが、友達として付き合う分には尊敬できる人となりです。
昨日16日、ザックに「全員での話し合いを提案するための話し合い」を迫り「明日に……」と言われていたにも関わらず、本日待てど暮らせど彼から連絡が入りません。14時頃に「20時まで学校の図書館にいるから、来る前に連絡をちょうだい」と携帯メッセージを送りますが、これにも返事がありません。
結局21時過ぎに家に帰ると、どうやらザックは部屋で寝ている様子……。居間にいた他のメンバーに確認すると、彼は本日の夕方に帰ってきて、夕食を取ってから部屋で寝ているとのことです。これはもうメッセージを見ていないというより、単にシカトした可能性が高そうです。
疲れていてわざわざ大学まで来るのが億劫だった、というのなら一言「今日は疲れているから」とのメッセージを送ってくれればいいものを……彼の態度を見ていると、話し合いをすることから逃げているような気がしてなりません。
一体彼は話し合いをする気があるのでしょうか……?
怒るというよりもむしろ呆れた気持ちでいると、夜遅くにザックが私の部屋を訪れ、アミットがいる前で「今日は疲れていて連絡できなかったけど、明日、話し合いに応じるから」と言ってきました。隠密裏に話し合いのセッティングをしたかった私としては、「……え、アミットの前でそれを言うの?」と思いましたが、恐らく彼も私と2人で話すのが嫌なのでしょう。私としては、いずれ全員で話し合いをしたいと思っているのでアミットに聞かれても何ら困ることはないのですが、やはりザックのハッキリしない態度というか、余り誠実と思えない態度には胡散臭さを感じる訳で……。
ザック 「じゃあ明日、14時から15時の間に大学のカフェでいいんだね」
とにもかくにも、明日こそザックと話しが出来そうです。(まぁもう何も信じちゃいませんが……)
学校が終わってから、ザックと話し合うために大学に向かうと、なぜかアミットから連絡が入ります。
アミット 「ザックがバス停で待ってるよ。今どこ?」
鷹瀬 「え……あ、今そっちに向かうバスに乗ってる。あと10分くらいで着くから。……今日、ザックは携帯持ってないの?」
アミット 「いや、持ってるよ。どうして?」
……じゃあどうしてアミットが電話してくるの……?
……ま、まぁいい。ほとんどの問題はナズとキャルに関係しているので、アミットが加わっても構わない……というか、もしかしたらいてくれた方がイイのかもしれない。しかしやはりザックの遣り方にどことなーく汚さを感じるのですが……。
バス停に着くと、覚悟はしていましたが、当然ザックとアミットがおり、もうこうなったら変にコソコソする必要もありません。
鷹瀬 「これからザックにフラットのことについて話があるんだけど、もし時間があったらアミットもどう?」
アミット 「今日はオフだし、いいよ」
ザックが一瞬ほっとしたような顔をした……ってのは気のせいなんですかね……。
まぁもういいです。恐らく最初からアミットもこの話し合いに加わるつもりだったんでしょうし。ザックよりは(なんぼか)アミットの方が話が通じる気がしますし……。私がザックと話したかったのは単に彼が家を借りている代表者だからであって、人間的な資質を買ってのことではありませんから。
鷹瀬 「今、学校で次の入居者を探しているけど、今のところ見付かっていないし、難しいと思う」
ザック 「なんで? キャルの子供のせい?」
鷹瀬 「勿論キャルの子供もそうだけど、他にもナズのことで。特に私にとってはナズの件は深刻なんだよね」
アミット 「……だろうね」
ザック 「ナズの件ってのは……?」
鷹瀬 「友達を大勢呼んだり、夜遅くに呼んだり、テレビを観るときにドアを閉めなかったり……」
ザック 「『友達を大勢呼んだり』っていつのこと?」
鷹瀬 「えっとね、全部手帳に記録してあるから言うね。8月28日20時過ぎに友達3人呼んで居間でパーティ。9月9日20時過ぎに友達2人を呼んで大音響でテレビを観てた。この時はアミットもいたよね。13日18時頃に……(以下略)。
今はアミットとザックがナズの友達で内輪でやってるから、文句を言うのは私とキャルの2人で少数派、多数決でいいよ? でもアミットとザックがいなくなって彼1人になって、新しく来る人がナズのやってることを許せるか、って言ったら難しいでしょ? 友達を呼ぶのも1人や2人ならいいよ? でも普通は夜遅くに友達を呼ぶとか5人も呼ぶとか、そういうのって非常識でしょ? 誰もそんな家に住みたくないよ。そういう時にはあらかじめ他の同居人の許可を得るのか普通なんじゃない?」
アミット 「その通り」
鷹瀬 「それに、普通はテレビ観るときはドアを閉めるのが礼儀でしょ? 音が大きいとか小さいとか関係なく」
アミット 「そうだね。トーコの言い分は分かった。確かに彼は非常識なことをすることもあるけど、悪い人じゃないんだよ」
ザック 「ナズの問題は英語が理解できない、ってことだけなんだ」
アミット 「とにかくこの件に関しては僕からナズに伝えておくよ」 (※注:ナズとアミットとザックはヒンディ語で話せる)
鷹瀬 「……それで彼が変わるとは思わないけど……」
アミット 「話さえ解れば彼は変わるよ、絶対に。保証する」
……基本姿勢が「Take it easy. Doesn't matter.」なアミットの保証も余りあてにならないのですが……。
ザック 「彼は悪い人じゃないんだよ。ただ英語を上手く操れないから、失礼な言い回しになっちゃったりするだけなんだ」
鷹瀬 「……ふーん。あと、次の人が見付からなくて家賃が値上がりするとか、子供が煩くて耐えられないようだったら、私、他のフラットを探すから、そうなったら予約金の返金はしてくれるんだよね……?」
ザック 「そうなったらキャルが出て行くべきだから」
アミット 「トーコも知ってるだろ? 僕達は本当につい最近、彼女の旦那と子供が来ることを知ったんだよ。彼女も事前に言うべきだったのに全然言わないで、ある日いきなり『ああ、主人が来るのが楽しみだわ』って言って、その時初めて僕らも知ったんだよ」
ザック 「その時は旦那だけが来るんだと思って、まさか子供が来るとは思ってなかったんだ」
鷹瀬 「でも、じゃあどうしてその時、もっと事態をハッキリさせなかったの? ちゃんと話し合うべきだったんじゃないの? そうやって毎回うやむやにしてるからどんどん大変なことになるんじゃん」
〜中略(光熱費問題、キャルの子供のことなど)〜
鷹瀬 「とにかく、こんなふうに陰でコソコソ言うのは嫌だし、事態だって解決しないから、1度ちゃんと全員での話し合いをしたいと思うんだけど……。『特別な場合に友達を連れてくる時には、事前に許可を取ること』とか『光熱費は人数割りすること』とか、このことをちゃんと話し合おうよ、全員で」
ザック 「……別にいいけど……いつにする? 今日僕は18時から1時まで仕事、アミットは19時から1時まで。皆が揃うのを待ってたらいつまで経っても話が出来ないよ。僕抜きで今日話し合いなよ」
鷹瀬 「全員いた方がいいよ……」
アミット 「大丈夫、僕が言うから」
ザック 「僕の意見はアミットと同じだから、それでいいよ」
鷹瀬 「今日キャルは何時に戻ってくるの? ナズは? ザックが家を出る前に皆で集まれない? 17時とかどう?」
ザック 「……17時なら大丈夫かな」
鷹瀬 「じゃあ17時に話し合いね」
……長かった……本当に長かった下準備を経て、漸く今日の夕方に我が家初の話し合いが開かれることになりました。これはゴールではなくスタートに過ぎないのですが、取り敢えず事態が進展したことを喜ぶしかありません。
――はぁ……。今日の夕方が楽しみなようであり、恐いようであり……。
さて、常日頃は20時過ぎに帰る私ですが、本日は念願の話し合いに参加するため16時頃に家に帰りました。するとマズイことにキャルが私の早々の帰宅を訝しみます。
キャル 「何があったの? こんなに早く帰って来るなんて……」
鷹瀬 「あ、いや、夏休みが終わって学生が戻って来たせいか、図書館が満席でさ……」
歯切れ悪く返事を返しつつ、これで話し合いが不自然に始まったらすべてが繋がるんだろうなぁ……と幸先不安になります。しかし采は投げられた、もうとにかく流れに身を任せるしかありません。
夕食の支度をしつつ、17時を待ちます。ザックが現れ、アミットが現れ、皆言葉少なく食卓に着きます。この妙な緊張感、キャルが感じていない筈はないと思うのですが……。ああ、胃が痛い……。
キャルは食卓には着かず、隣の居間のソファに横になっていますが、取り敢えずナズ以外の全員が集まりました。折りしも時間は17時。話し合いが始まろうとしています。
しかし食卓にアミット、ザック、私が、隣の居間にはキャルが、ほぼ全員が揃っているというのに、待てど暮らせどザックは話し合いを始めず、黙々と夕食を食べています。
……ちょっとぉ……。
今かまだかと苛々しながら話し合いの始まりを待つ私の心情を知ってか知らずか、とにかくザックは話し合いを始めません。そうこうしている内にナズが帰ってきました。これで正しく全員が揃いました。時間は17時25分――さあ、今こそ!
……しかしザックは相変わらず沈黙を守ったまま、帰ってきたばかりのナズとヒンディ語で無関係な話をしています。
そして……………………結局ザックは17時40分にそのまま仕事に出掛けてしまいました。
一体、彼はどこまで現実逃避を続けるのでしょう……。
もういい、ザックはいい。残るはアミットです。そもそもザックは「僕抜きで今日話し合いなよ」と言っていたのです。アミットも「大丈夫、僕が言うから」と言っていたのです。アミットに残された時間は1時間。充分でしょう。
しかし彼もまた、待てど暮らせど話し合いを始めようとしません。そして…………変に緊迫した雰囲気は残されたまま、事態は全く進展せず、アミットは仕事に出掛けてしまいました……。
誰だって揉め事に真っ向から対峙するのは嫌でしょうが、早期解決しないと事態はより一層厄介になると思うのに……。
本当に、彼らに何かを期待する方が間違っているとでも言わんばかりのこの現実。友達として付き合う分には良いけれど、責任とかそういうものを求めた時の反応は、毎度毎度驚くほどルーズです。
ナズは自室に向かい、キャルがソファから起き出して食卓に来ます。そして最も恐れていた事態になってしまったのでした。
キャル 「トーコ……今日は何があったの?」
恐らく皆の空気がちょっと変だったことを敏感に感じ取ったキャルは、私に詰め寄って来ました……。ああ、私も逃げてしまいたい……。しかしいずれ話し合いをする訳ですし、今「別に何も」と表面的に逃げても後々事実が分かった時に「ああ、あの時……」ということになり、信頼を失うのも嫌なので、正直に今日、アミットとザックと話した、ということを明かしました。しかしナズのことについてだけ。
鷹瀬 「いや、偶然ザックとアミットと構内で会って……。ナズへの文句を、アミットを通して言ってもらうことにしたの。で、ホラ、光熱費の問題とかも解決してないし、今度皆でちゃんと話し合おうよ、って提案をしたんだけど……」
キャル 「ふぅん……彼ら、私に対して何か言ってなかった? 正直に言って」
鷹瀬 「あー……うーん……えーとさ、やっぱ皆、子供のことについて気を揉んでるんだよね」
キャル 「子供って、私の子供のこと? 何が悪いの?」
鷹瀬 「いや、今学校で次の入居者を探しているんだけど、やっぱ皆、子供がいる家は嫌がるんだよ……」
キャル 「私の子供を見たこともないくせに、何をどうして嫌がるのよ!」
鷹瀬 「いや、それはやっぱ『5歳だと煩いんじゃないかな』って思うんじゃないかな、普通は……」
キャル 「あなただって私の子供のことなんか知らないでしょ!」
鷹瀬 「そうだけど、やっぱり子供がいないフラットと、いるフラットがあった場合、皆いないフラットを選ぶ、って言うか……」
キャル 「冗談じゃないわ! 何も知らないくせに!」
鷹瀬 「だから、1度皆でちゃんと話し合おうよ」
キャル 「一体何を話し合うのよ! 私の家族のこと? 冗談じゃないわ! あなたたちに私の家族のことを話し合って欲しくなんかないわ! 私は話し合いには参加しないわよ。やりたければ勝手にどうぞ。どうせあなたたちは私の主人も子供も嫌いなんでしょ。そんな家にどうして家族を呼べるもんですか。だから、今私は彼らを呼べずに困っているんじゃない! 大体、子供がいると困るとかって、それはあなたの問題であって、私の問題じゃないわ! 友達と家族は違うわ! 友達を呼ぶのに許可が必要って、家族を呼ぶのに許可なんか必要な訳ないじゃない! 家主以外、私が家族を呼ぶのに文句なんか言える権利はないのよ!」
………………それは間違っていると思うのですが……。皆でお金を出し合って1軒の家を借りているんだから、家族を呼ぶのだって、皆の納得が必要だし、もし彼女が家族を呼ぶことで誰かが迷惑を被るなら、それは立派に「許可の要ること」でしょう。
しかも「私の子供を知らないくせに」と言いますが、知らないからこそ皆避けている訳だし、それに彼女、いつも「ウチの子はチョウチョみたいに飛び回るのよ」とか「テレビが大好きで」とか言ってるんですけど……。
しかしそれまでも薄々皆の雰囲気から色々と感じ取っていたであろう彼女は、これを切っ掛けに鬱積したものを一気に私にぶつけ、感情が沸点に達してしまい大変でした……。なぜ英語が不自由な私と2人の時にこんなことになるのでしょう……。
ザックもアミットもズルイっす……。結局話し合うのが面倒で逃げちゃって……。私は英語が上手く話せないし、怒りに任せたマシンガントークを聞き取れるだけのヒアリング力もありません。もしかしたら大事なことを言っているのかもしれないのに所々聞き取れず、しかし怒っている相手に「もう1度ゆっくり言っていただけますか?」などと言えるほど常識知らずでもなく、反論出来るほどスムーズにも喋れず……。
彼女の言い分は間違っているとは思いますが、これは彼女の家族への愛情の深さに根ざしているものなので、私としても「非常識な!」と怒る気も起きません。彼女は時々勝手な振る舞いをするのですが、基本的には愛情深い人なのです。
なす術もなく彼女の怒りを一身に受け止めて、トドメは彼女の捨て台詞、「こんな家、もうこれ以上住めるもんですか!」を叩き付けられ、最終的には「キャルが私に怒っている」という納得の行かない状態で終わったのであります……。
深夜1時過ぎにザックとアミットが帰ってきて、先ほどのキャルとの遣り取りと、話し合いが困難になったことを報告します。
鷹瀬 「大体、今日チャンスがあったにも関わらず逃げちゃうし……」
ザック 「別に逃げてないよ。ただナズが帰って来なかったから始められなかっただけだろ」
鷹瀬 「途中で帰って来ても始めなかったじゃん」
ザック 「時間がなかったから仕方ないよ」
鷹瀬 「言い訳だね。切っ掛けを作ってくれれば後は残りのメンバーで話し合えたのに。ザックは最初、『僕抜きでやれよ』って言ってたくらいなんだし。アミットはアミットで何もしないし」
アミット 「だってキャル、寝てたじゃん」
鷹瀬 「寝てたって、ちょっとしたうたた寝でしょ。起こせば済むことじゃん。私なんか一番英語が出来ないのに……。もう彼女、『話し合いには参加しない』って言ってるんだよ? なんで? なんで話し合いしたくないの? 次の入居者が決まらなかったら困るのは皆なんだよ? いいの?」
ザック 「……キャルは何て言ってた?」
鷹瀬 「『話し合いには参加しない。これ以上この家には住めない』って」
アミット 「やった! 解決じゃん!」
鷹瀬 「……っ! なに言ってるの?!」
アミット 「ヘイ、トーコ。なんでそんなに心配してるんだよ。キャルが出てったら全部解決じゃん」
鷹瀬 「どうしてそんなふうに言えるの?」
アミット 「トーコ、キャルと結婚するつもりかい? 彼女が出て行く。子供は来ない。新しい入居者が見付かる。万事OKじゃん」
鷹瀬 「キャルは今めちゃめちゃ傷付いているんだよ? 彼女の言い分は間違っていると思うけど、こんなふうに出て行くような事態は良くないよ」
アミット 「もう一度聞くけど、トーコ、キャルと結婚するつもりかい? なんでそんなに心配してるんだよ」
鷹瀬 「……私はキャルが好きだし、彼女は友達なんだよ……」
アミット 「キャルがトーコを友達と思ってなかったら? トーコだけがキャルを友達と思ってても、キャルがそう思ってなかったら友達ってのは成立しないんだよ」
…………これって文化の違いなんでしょうか……? 何だかもうビックリ。このアッケラカンとした態度は何なのでしょう……? アミットの「Take
it easy. Doesn't matter.」な基本姿勢は好きですし、この考え方もこの信念に根ざしたものなのでしょうが、駄目です、ちょっとこの考え方にはついて行けません……。恐らく私の扱いもこんな感じなのでしょう。「いーじゃんいーじゃん、トーコにやらせておこうぜ」みたいな……。
どう頑張っても事態を深刻に捉えているのは私だけな気がしてならないのですが……。
アミット 「オプションは2つ、『キャルに出て行ってもらう』、『静かにするって条件付で子供を連れてくる』――トーコはどっちが良いのさ?」
鷹瀬 「……『出て行ってもらう』なんて選択肢は選べないでしょ? 何もかもが遅すぎるよ。もし出て行くにしても、ちゃんと彼女に納得して貰わないと……。こんな喧嘩みたいなことになっちゃって……。だから何度も何度も『話し合いをしよう』って言ってたのに、その度に逃げまくって……。次の入居者が見付からなかったら困るのは私もそうだけど、特にザックなんじゃないの? どうしてそんなに呑気なのか信じられないよ」
ザック 「……じゃあ今から話し合いをしよう」
鷹瀬 「……それこそもうキャルは寝てるってば。彼女、明日6時起きでしょ? 今2時だよ」
ザック 「明日は僕は1日中仕事だし」
鷹瀬 「明後日は?」
ザック 「18時から1時まで」
鷹瀬 「その前に集まるのは無理?」
ザック 「出来ないことはないけど……」
鷹瀬 「じゃあ20日の金曜日、話し合い出来る?」
ザック 「……いいけど」
はぁ……もう何度目の「お約束」でしょう。いい加減、彼らを信用&信頼することはできませんが、取り敢えず金曜日の話し合いに望みを託すのでした……。
本日の日記の@〜Bを見るとあたかもピリピリと戦ってばかりいるように見えるかもしれませんが、現実というのはいつだって多重構造で、私とアミットは仲良しさんなのです。
彼は何事に関しても大らかですが、その中には「ケチケチしていない」という種類の大らかさも含まれており、今日も夕食に豆カレーを振舞ってくれました。私がインドに強い興味を抱いている事を知っているので、新しいものを作る度に「ヘイ、トーコ。試してみるかい?」という感じで声を掛けてくれます。
そして食べている間中、インドの話や婚約者とのノロケ話、映画の話、その他多岐に渡って陽気に話すのです。それが異様に楽しいのです。和むのです。特に彼のラブストーリーに至っては、この不誠実が蔓延する世の中で「信じられる愛もあるのかも……」と希望と幸せを感じるのです。(※注:彼のラブストーリーはいずれきちんとまとめようと思っていますので、楽しみにしている方はお楽しみに)

アミット作・パラダと豆カレー
私は今まで親しい友人を「好意と尊敬と信頼を兼ね備えた人」と定義していましたが、アミットは私に「信じることも頼ることも出来ないけれど、凄く好きで尊敬していれば、結構親しい友人になれるのカモ……?」と教えてくれた貴重な存在です。どこまで行っても最後に「?(疑問形)」が付随してしまうのは、やはり下線部の条件が重いからでしょうか……。
とにもかくにもこの夕食、常に話し合いの開始を待ち侘びていた本日の一体いつに食べたんじゃい、と思われるかもしれませんが、驚くなかれ、話し合いを始める筈のザックが無言のまま仕事に赴き、「じゃあアミットが引き続き話し合いを始めるんでしょうねぇ?!」という本日の日記Aの4段落目辺りでしょうか……。
一見詳細に日記をつけているようですが、このように、この日記は現実のほんのヒトカケラの記録に過ぎないのでした。現実はいつだって多重構造なのです。だからこそ楽しいのです。
ただでさえフラットメイトたちを信用できない状況に陥っているってのに、ブルータス、お前もか……ってな目に遭っています。
そう、体重です、体重。私は恐らく太りました。いや、「恐らく」なんてかしこまった言い方をしている場合ではないでしょう。ぶっちゃけ、「太ったんだってば!」という感嘆詞付きの事態だと自分では認識しています。
一体何kg太ったのか、いっそしっかりと確認したいと思っているのですが、我が家に体重計などありません。
そんな折、シティセンターにあるショッピングセンター内に、20セント(約24円)で体重測定が出来るマシンが設置してある、との情報を得たので、本日授業の合間の昼休みに、昼食を食べる前に体重を量りに行きました。
なるほど見付けた体重計は、体重計というよりもゲーム感覚のプレイマシンで、体重を量り、性別、身長、生年月日を入力することで運勢が占える……という胡散臭い代物でした……。しかし他に体重を量る術もなく、20セントを投げ打つ覚悟を決めます。
20セントを投げ打つのには覚悟は要りませんでしたが、このマシンに乗るにはかなりの覚悟が必要となりました。設置されている場所は人の多いショッピングセンターのトイレのすぐ横。ぱっと乗ってぱっと終わるなら良いのですが、何やら色々入力しなくてはならない様で少々気が重い……。
しかしもうここまで来たらやるしかないでしょう。私は切に自分の体重の変化を知りたいのです。

シティセンターにあるショッピング・センターの2階

体重からなぜか運勢が占えるというかなり胡散臭いシロモノ
量るとなったら完璧な形で量りたいのが人情というもの。重い財布とジャンパーまで脱いでの挑戦です。今は完全な冬服のため、厚手のズボン、靴、その他衣類の合計は1kgになるかしら……って。表示された測定値から1kg引いてもイイカナって。そんなことに思いを巡らせながらさあ1歩。
さっさとこの場から去りたいというのに、コインを入れても上手く作動せず返金されてしまったり、恥ずかしいことこの上ない状況が続きます。コインが上手く受領され、モニターが切り替わったのは良いけれど、何をもったいぶっているのか、なかなか表示されない体重。
そして……さあ、何kg太ったさ?! 2kg以上太っていたらもう明日からでもジムに通うよ! さぁさぁ!
ドキドキしながらモニターを凝視していると、現れた数字は……。
……………………1kg減ってるんですけど、服を着た状態で。
オカシイ。これはもう100%狂っているに違いありません。大体この国はバス内の時計が正しかった試しがない国なのですから……。
くっそ〜。分かりやすくとんでもない数値が表示されれば素直に「ああ、壊れてるのネ」と思えるものを、中途半端に1kg少なくなっているとか、分かりにくい誤差で攻めて来やがって……。どいつもこいつもっ! 信用できないったらありゃしない!!!
【追記】
明日はいよいよ話し合いですが、19日23時を過ぎた現時点で、話し合いの開始時間を知りません……。もう……こういうことは代表者であるザックが告知するべきことなんじゃないンですかー……?
朝になっても「本日の話し合いは×時から」という告知がないまま、学校に向かいます。ザックからは依然として連絡がなく、何だか私ばかりが気を揉んでいる事態そのものに段々腹が立ってきますし苛々も募ります。
大体、次の入居者が決まらなければ困るのはザックの筈です。彼はこの家1軒を丸々借りている代表者であり、家主と契約書を交わしているのも彼です。次の入居者が決まらない原因であるキャルの子供問題について、真剣に考えなければならないのは彼の筈です。面倒事を避けるのは勝手ですが、来月中旬から3ヶ月里帰りする彼は、自分がいない間のことを心配していないのでしょうか?
キャルが依然として私に怒りを向けているのも非常に理不尽な状況ですし、本日の話し合いは何としてでも決行して欲しいと願う私は、またも私からアクションを起こします。本来ならば彼の方から連絡があって然るべきだと思うのですが、そんなことで意地を張っていると馬鹿を見るのはこちらです。取り敢えず昼休みにこんな携帯メールを送りました。
Today will u talk with c? What time should i go back
home by? If u also won't talk with today, i'll give up expecting u. U already
disappointed me 3 times. But i think it's ur problem rather than mine.
U don't do ur duty. Everything i did. I'm really tired.
しかし上手く操れない言語で交渉事を行うというのは非常に疲れます。例えば日本語が使えるならば、本来はこのように書きたいのですが……。
当然そっちから連絡が来るのを待ってたんだけど、来ないからこうしてわざわざこっちからメールを書いているんだけどさ……。今日キャルと話すんだよね? 私は何時までに家に帰ればいいワケ? もし性懲りもなく今日もまた話し合いを尻込みするようなら、もう私は君に期待するのを一切止めるわ。馬鹿馬鹿しいからね。言わせて貰いますけど、君は既に3回も私をガックリさせているんだからね。大体、コレって私の問題って言うより君の問題なんじゃないの? なのに君ってば最低線すべきことすらしてないじゃん。毎度毎度私がやってるって分かってる? もう君の責任逃れに付き合うのはいい加減疲れたよ。本当に、今日もまたすっぽかすようなら今後は好きにするがいいさ。アタシャ知らんがな。
「当然」「わざわざ」「性懲りもなく」「馬鹿馬鹿しい」「言わせて貰いますけど」「大体」「最低線」「毎度毎度」「いい加減」……このような一見意味のない言葉を交えることで文体に勢いを付けることが出来る日本語って愛しい……。
それはいい、それは置いておいて……。
――結果、終日待ってもザックからの返事および連絡はありませんでした……。
ああ、これが文化の違うガイジン相手に苛々するってことなのかなぁ……と今の経験をしみじみ噛み締めるのでした……。
キャル問題が余りにも華々しいため、14日のバトル以後のナズとの関係をほとんど記録していませんでしたが、実は18日@の日記にも書いたように、再三再四ナズを「彼は良い人だよ」と評すアミットを間に挟んだせいで、ナズとの関係は徐々に改善しております。
私も大概自分の好きな人には甘いので、「自分の好きな人が自分の嫌いな人を弁護する」という事態に弱く、「アミットがそこまで言うなら……」とナズへの態度を軟化させたというのが事の真相です。
本日もナズの朝の習慣「カ〜ッッッッペッ!」で目が覚め、多少は苛付いたものの、
「苛付いちゃ駄目よ、トーコ。喉に痰が絡むのは彼のせいじゃないわ。彼も被害者なのよ。解ってあげて……」
と脳内フレンドから諭され、布団から這い出ます。彼が洗面所から出る音を聞き、さて、次に使わせて貰おうかね……とバスルームの扉を開けると、鼻を刺激する「うぷ」と感じる彼独特の臭いと、目に映る水浸しの洗面所と水滴まみれの床、そして汚れた鏡に便座……。
「駄目駄目。トーコ、落ち着いて。――いい? 彼はただ単に、これが礼儀に反していることだって分かってないのよ。掃除の仕方を知らないの。男どもは往々にしてそんなものよ。冷静になって。トーコってばアミットが同じことをしても怒らずに掃除しているじゃない。その気持ちをナズにも少し分けてあげて」
最近できた理性派の脳内フレンドが必死で私を説得します。
そう、そうよ。彼は単に気が回らないだけで、根は良い人……ってアミットが言ってたじゃない。
呼吸を整え、14日とは違った感情でナズの部屋をノックします。
鷹瀬 「ナズ……ちょっといいかな? 今、時間ある?」
ナズ 「トーコ! 時間ならある!!」
鷹瀬 「あ、そう。じゃあちょっと洗面所に来て貰える? あのね、今から『掃除の仕方』を教えるから、今度からトライしてみてくれる? ……私の言っていること、分かる?」
ナズ 「分かった」 (※注:満面の笑み)
鷹瀬 「OK。じゃあね、まず鏡ね。ホラ、歯を磨いた後とかに泡が飛んで、ポツポツ白い点が残っているじゃない? これは良くない。この黄色の布で拭こうね。次に洗面台、これも石鹸の置いてあるところまで水浸しになっているよね。これも良くない。石鹸が溶けちゃうし。ここも水を拭き取って常に乾いた状態に保って綺麗にしようね。
洗面台が終わったら床。ホラ、水浸しじゃない? 床はその雑巾で拭こうね。髪の毛も、目に付くようなものは拾ってそこのゴミ箱に入れてね。このゴミ箱の袋、今までに3回ほど私が替えてるんだけど、皆は1回も替えたことがないでしょう。これもね、一杯になったら気付いた人が替えようね。買い物袋とかを使えばいいから。最後に便座。これもそこの雑巾でこんなふうに拭いてね。上だけじゃなく裏側とか側面も忘れずにね。
――これでおしまい。ね? 簡単でしょ? 手早くやればほんの1分で済むことなんだよ。掃除は日々の積み重ねが大切なの。使った人が掃除する、これが基本だから。これ以上の本格的な掃除は週末に私がするから、毎日の使った後の簡単な掃除だけは習慣にしよう。毎日毎日、ちょっとずつ。……分かった?」
ナズ 「分かった!」
幼稚園の先生の苦労のほんのヒトカケラを知りました。
【追記】
後日、ナズが使った後に洗面所に入ると……なんと洗面台も便座もピカピカ、床に水滴はなく、鏡も拭いたばかりの跡が……。
――幼稚園の先生の喜びのほんのヒトカケラを知りました。
【更にその後の追記】
数日後にはまたいつも通り、床や便座は水滴だらけ、鏡にも泡が……の状態に戻っていました。もーいーよ。コイツ等に期待する私の方に問題があるんだろうよ。
ええ、ですから日記だけ追っているといかにも荒んだ日々を送っているように見えるのですが、実際はそうでない時間も多い訳で……。後に自分でこの日記を読んだ時に、トラブルばかりが起こっていたような偏った記憶だけを残しておくのも嫌なので、もう片側の現実も少々記録しておきましょう。
本日朝、「いつか、まだか」と話し合いを待って苛々している渦中の話ですが……。
洗面所で顔を洗っていると、鉢合ったアミットが私の顔を見るなり一言。
アミット 「そうだ、歯磨き粉にトライする?」
鷹瀬 「え? 歯磨き粉? ……ああ、インドのヤツなの?」
アミット 「そうそう。アーユル・ヴェーダの、自然の植物から作ったノンケミカルの歯磨き粉」
鷹瀬 「インドのならトライしたい。――へー、これが……。アレ、これ英語? あ、ちょっとでいいからね。ふーん。でもこれだけ余ってればあと5週間丁度でなくなるくらいなんじゃない?」
アミット 「まさか! こんな量5日で終わるよ。もし使ってみて気に入ったら、コレ、トーコにあげるよ」
…………本当に、良くも悪くも「I don't mind.」なお方……。
――ま、当然ありがたく頂いたのですが。

アーユル・ヴェーダの歯磨き粉
昔使っていたお気に入りのアーユル・ヴェーダのアロマオイルと同じ匂いのする、マイルドで爽やかな歯磨き粉……。1回の歯磨きで2cmくらい使ってしまうアミットにとっては5日で終わる量かもしれませんが、5mmも使わない私にとっては1ヶ月分のお楽しみとなったのであります。
ええ、ええ。もう既に過去ですがね。タイトル通り、今回の「全員で話し合い」は最悪の幕引きを遂げました。とにかく密度の濃い1日で、まとめるのも大変ですが、事態がどんどん進行して見方が変わる前に、リアルタイムの生々しい感情を記録しておきたいと思います。
まず本日の大波の前に、昨日、結局連絡を寄越さなかった逃げた卑怯者、ザックに苛立った私がアミットに詰め寄った前置きを明記しておきましょう。
鷹瀬 「ザックはどうして毎回毎回話し合いをするのを避けるの? そんなにキャルが恐いの?」
アミット 「さぁ……正直、僕も不思議なんだよね。キャルだって何もザックを殺しやしないのに」
鷹瀬 「あー、はいはい。真剣にさ、今回のことが未解決でもザックは困らないの? 自分がいない3ヶ月間のこと心配してないの? 次の人が見付からなかったらどうするつもりなの?」
アミット 「真剣だよ。笑ってないだろ? 次の入居者なら大丈夫、この時期学生が一挙に帰ってくるから、誰かしら次の入居者は見付かるよ」
鷹瀬 「それは子供がいる家でも?」
アミット 「……それは難しいだろうね」
鷹瀬 「だからそのことを話し合わなくちゃならないんじゃないの? もうザックの帰国まであと3週間でしょ? 今日も話し合いするって言ってたのに……ザックって今日は何時に帰ってくるの?」
アミット 「深夜1時過ぎ」
鷹瀬 「それじゃあ話し合いなんか出来ないじゃん! もー……。最悪キャルの子供が来たら、ザックのいない間はザックのアンスイート(バス・トイレ付き)の部屋をキャル一家に使ってもらったら、って思ってるんだけど、どう思う? その方が部屋内ですべてが収まるんじゃないかと……」
アミット 「そんなことしたら2階の他の3部屋全員に影響が出ると思うよ。5歳なんかコントロール不可能だからね。キャルだけが1階の部屋っていう構成で、完全に1階と2階を切り分けて、2階は静かに保つ方が良いって」
鷹瀬 「そうか……。ところで、もう今日は話し合い出来ないんだろうけど、明日は皆のスケジュールはどうなってるの?」
アミット 「土曜日……僕とキャルはオフだよ。ナズはよく分からないけど、多分オフだと思う。聞いておくよ。ザックは12時から20時までかな」
鷹瀬 「え! じゃあ明日こそゆっくり話し合い出来るじゃん!」
アミット 「ああ、そうだね」
鷹瀬 「じゃあ明日、20時過ぎには家にいてね」
アミット 「了解」
と、昨日中にアミットと私の間だけで根回しが進んでおりまして……。しかし一応約束は「金曜日に全員で話す」と言うことでしたから、話し合いの始まりを深夜1時過ぎまで待っていたのですが、結局昨晩は話し合いはなされなかったのです。
そして何もかもが未解決のまま、始まりは朝――そう、アミットからアーユル・ヴェーダの歯磨き粉を貰った後、食卓で朝食を取っていた時です。昨日、結局連絡を寄越さなかった逃げた卑怯者、ザックが食卓に現れました。もういい加減こちらからアクションを起こすのは嫌なのですが、詫びも入れずに済ました顔で朝食を食べているザックを見ていると無性に腹が立ってきます。
鷹瀬 「……今日、アミットもキャルもオフなんだってね。ザックは仕事が終わるの20時なんだって? 今日こそ夜に話し合い出来るよね」
ザック 「その必要はないよ。キャルには昨日の夜に話したから」
鷹瀬 「はぁ?! 何でそういうことになるの? 全員で話し合いをするってことだったんじゃないの? 一体、何なの? 全員で話し合いをしたくない訳でもあるの?! 何でいつも話し合いを避けるの?!」
ザック 「昨日は夜遅くに帰ってきて、時間がなかったんだよ! それをトーコが話し合いをしろしろって言うから話したんだろ! 別に避けてなんかいないさ!」
鷹瀬 「今回のことは全員で話すことに意味があるんでしょ! とにかく今日、皆で集まれるんだから、今夜すればいいよね」
ザック 「その必要はないって言ってるだろ! 第一今日、何時に終わるか分からないし。忙しかったら20時キッカリになんか終われないからね」
鷹瀬 「別に2時間過ぎたって22時じゃん。待ってるからいいよ」
ザック 「今日話し合いするなんて僕は知らなかったんだぜ? もし皆のスケジュールが合わなかったらどうするつもりだったんだよ」
鷹瀬 「皆が今日はオフだって私も昨日知ったんだから、知らなくて当然でしょ。大体昨日しようって言ってたのに、結局連絡も寄越さないですっぽかしたのはそっちじゃん。昨日できれば今日しようなんて言わなかったよ」
ザック 「だから昨日は忙しかったって言ってるだろ!」
鷹瀬 「『今日は出来ない』って一言メッセージを打つ暇もないほど忙しかった訳? 毎度毎度、無責任もいいとこだよね。とにかく今日集まれるんだから、今日すればいいよ」
ザック 「今日は無理だね。何時に仕事が終わるか分からないし。大体他の人には聞いているのかよ」
鷹瀬 「アミットは知ってるし、キャルもナズもオフなら夜遅くは家にいるでしょ」
ザック 「そんな確証ないだろ。もし出かけたらどうするんだよ。話し合いは出来ないじゃないか!」
鷹瀬 「だから、皆がいたら出来るでしょ、って言ってるんでしょ!」
(※注:ナズが現れる)
ザック 「ナズ、今日皆で話し合いするって知ってた?」
ナズ 「知らない」
ザック 「ホラ、見ろ! ナズは知らないじゃないか」
鷹瀬 「昨日皆のオフを知ったんだから、知らなくて当然だし、今言えばいいだけのことじゃん。ナズ、今日の夜20時以降に話し合いをしたいと思ってるんだけど、予定はどう?」
ナズ 「大丈夫」
鷹瀬 「大丈夫って言ってるじゃん。話し合い、出来るでしょう」
ザック 「……僕の仕事が何時に終わるか分からないから無理だよ」
鷹瀬 「だから、たかだか延びたって1、2時間でしょ。待ってるってば」
ザック 「皆が待ってるとは限らないだろ」
ナズ 「俺は構わない。待ってる」
鷹瀬 「アミットも待っててくれるよ。……一体、何なワケ? そこまで話し合いを嫌がる理由が解らないんだけど……」
ザック 「別に嫌がってないだろ!」
こんなふうに日本語でこの会話を文字起こしするとスムーズに「苛々する会話」が続いているように見えますが、実際はシドロモドロの英語です。ザックは何やら都合が悪くなると異様に早口で捲くし立てるように喋り、私の言葉を遮ることも多々あり、腹の底から苛々する遣り取りでした。
さて、この終わりの見えない不毛な会話に終止符を打ったのは、この間に我が家に遊びに来たザックとナズの共通の友人の女性です。
鷹瀬 「ねぇ……第三者としてどう思う?」
彼女 「ナズはOKって言ってるし、アミットも帰ってくるって言ってるんでしょ? トーコはもちろん参加で、ならザックが帰ってきてから話し合いをすればいいだけのことじゃない」
鷹瀬 「だよねぇ?」
彼女 「しなさい、しなさい。話し合い。単純なことでしょ」
ザック 「……」
こうして一瞬、話し合いの決行が成立しかけたにも関わらず、それをすべてぶち壊したのが、知らない間に背後に立っていた当事者のキャルです。
キャル 「私は参加しないわよ! トーコ、陰でコソコソ人の悪口を言うなんて最低ね。そんなに話し合いをしたければ勝手にすればいいわ!」
ザック 「彼女は参加しないってさ。はは。話し合いは出来ないね」
鷹瀬 「キャル、陰で悪口なんか言ってないし、問題をハッキリさせたいからこそ話し合いをしようって言ってるんだよ……。ねえ、キャル……」
キャル 「トーコとは口を利きたくないのっ! 話し掛けないでちょうだい!」
「ほぅら、話し合いは出来ないじゃん」と言わんばかりに肩を竦めてニヤ付いているザック……コイツ、昨晩キャルに何を吹き込んだのでしょう。この物凄い剣幕のキャルを見ると、ザックが私の名前を使って何かしら吹き込んだのは確実でしょう。
こずるいザックには苛付くわ、頑固なキャルの扱いには困るわ……ホトホト疲れました……。
ザックは「話し合いは無理だね」という捨て台詞を残して仕事に赴き、場に残されたのは言葉が不自由なナズと、途方に暮れている私と、怒りで沈黙を守っているキャルと、ヤレヤレといった感じのザックとナズの友人。
とにかく今夜話し合いができなければ、恐らく事態は悪化する一方でしょう。とにかく1度きちんと話し合いをしたいのです……。そして逃げ隠れするザックを義務遂行と言う名の表舞台に引っ張り出したいのです。
鷹瀬 「キャル……あのさ、昨晩ザックから何を言われたのか知らないけど、私は英語が不自由だし、時々皆が何を言っているのか聞き取れないし、言いたい事も上手く伝えられないし……」
……………………言葉に詰まり、恥ずかしながら、ワタクシ泣きました。
なぜ泣いたかといいますと、恐らくこれは完全にストレスだと思うのです。何かの本で「『泣く』という行為はストレス発散である。ストレス耐性がない人ほどよく泣く」という論説を読んだことがあります。なるほど、泣いた後に妙にスッキリするのもこれで頷けます。今回の私の場合は、キャルを気の毒と思ったワケでも自分を気の毒と思ったワケでもなく、打つ手がない上にここ数日で溜まりに溜まったかなりのストレス状態に耐え切れず、涙を流すことでストレス発散に踏み切ったと、そういうカンジだったのではなかろーか、と本人的には自覚しています。
個人的には「泣いても何も解決しねぇよ」と思っていますが、この時ばかりは違いました。驚くべきはキャルの態度の激変です。
キャル 「トーコ! 何も泣くことはないのよ。私も悪かったわ。ホラ、涙を拭いて……さあ、こっちにいらっしゃい」
………………思い込みは激しいし、時々めちゃめちゃ勝手なのですが、基本的には愛情深い人なのです……。……疲れますが。
とにかく話を聞く姿勢になってくれたので、この機会を逃す手はありません。
鷹瀬 「私は英語が不自由だし、時々皆が何を言っているのか聞き取れないし、言いたい事も上手く伝えられないし……。そういう私を挟んで皆が私に言いたいことを言ってくる状態は良くないと思うのね。ザックにはずっと前から『皆で話し合いをしよう』って勧めているのに、毎回毎回逃げて……。きっと彼は彼で知られたくないことがあるんじゃないかと思っているの。でも私の英語力ではそれを追求できないし、全員でオープンに話し合いをするのがベストだと思ったんだよ……」
キャル 「……知ってる? 私はあなたを本当の妹のように思っていたのよ……。それが私に直接言えば良いことを、ザックに言うなんて……。私の子供が来ると、どうしてあなたの生活に影響が出るのよ? 私はあなたに迷惑をかけるつもりはないし、子供だってこの部屋から1歩も出さないわ」
鷹瀬 「……アミットとザックがいなくなったら2部屋空くじゃない? 今、次の入居者を探しているけど見付からないんだよ……。そうなったら家賃だって上がるし、家賃が上がるようなら私は他に引っ越すつもりだし、その時には予約金は返して貰えないって聞いて……」
キャル 「家賃は上がらないわ。私たちは家主から部屋を借りているんだから、毎月235ユーロで固定よ。それに出て行くときには予約金は返ってくるわよ」
鷹瀬 「……え? ザックはそうは言ってなかったよ。ザックはこの家を丸々1100で借りているんだし、空き部屋があっても私たちは合計で1100払わなきゃいけないんだし。ザックも『もし次の入居者が決まらなかったら1100を人数で割る』って言ってたよ」
キャル 「きっとそれはそのお金を盗むつもりなのよ!」
鷹瀬 「え……それは違うんじゃ……。だってアミットもナズもそう言ってたし。『次が見付からなかった場合には予約金を使う』って」
キャル 「私の前の家は2部屋空き部屋があったけれど、私の家賃は変わらなかったわ。きっとザックはそれを隠したくて話し合いを避けていたのよ! ハッキリさせる必要があるわね」
………………それってただ単にハウスレントの契約形態が違うだけの話であって、私たちのフラットは「ザックが代表者となって1軒丸まる借りている」というケースなのは最初から言っていたことなんですけど……。
しかしせっかくキャルが話し合いに臨んでくれることになったのですから、下手に色々言わない方が良いと思い、話の主旨がズレた状態ではありましたが、これで話を終えました。
「子供を部屋から1歩も出さないなんて不可能でしょう」とか「ナズに対してあれだけ非常識とか言っておきながら、自分が家族を連れてくることを言わなかったのはどうかしている」とか、そういう基本的な話は山ほどあるのですが、もうそれは今晩話せばいいことです。
私の役目は終わった……後は言葉に不自由のないザックとキャルで戦って欲しいモノです……。
そしていよいよ、今度こそ、念願の話し合いです。
「この期に及んで逃げるかも」と帰宅を心配していたザックも20時ちょっと過ぎに家に戻り、ナズは急な仕事で1時間後に帰ってくることになりましたが、取り敢えずナズ抜きの4人が集まりました。4人が揃ったと言うのに誰からも切り出そうとせず、キャル、ザック、アミットの3人は全く関係ない話をして笑い合っています……。ちょっと繊細な日本人の私には理解できない状況です……。
私が黙り込んでいるとザックがチラチラと私を気にし始め、それでも話し合いを始めようとしません。
本当にこの人たちは……こうやって今まで物事を曖昧にしてやって来たのかなぁ……と文化の違いをしみじみ噛み締めて、仕方がない、最初の一石だけは私が投じようと決心したのであります。
鷹瀬 「えっとさ、まずハッキリさせておきたいんだけど……。アミットとザックの部屋について、もしも次の入居者が決まらなかったら家賃は値上がりする。これは確かだよね?」
ザック&アミット 「そうだよ」
鷹瀬 「……でも、キャルはそうは思っていないんだけど……」
キャル 「……………………前私が住んでいた家では空き部屋があっても家賃は変わらなかったわよ」
ザック&アミット 「それは家主が個人個人に部屋を貸している場合であって、僕たちのケースは家主から家丸ごとを借りているから、空き部屋があろうとなかろうと、毎月1100払わなきゃならないんだよ」
キャル 「そんなのオカシイわ」
ザック&アミット 「おかしくないよ、普通のことさ。アイルランド中で行われているやり方だよ。隣の家にでも聞いてみると良いよ」
私が言っても信じて貰えなかったシンプルな事実を、英語に不自由のないザックとアミットからのダブル音声による自信に満ち溢れた説明で簡単に納得するキャル……。
ザック 「他には? さぁ、恥ずかしがらずに!(原文:Don't
be shy.) トーコ、何か言いたいことは?」
鷹瀬 「……今の話、解決してないよね。じゃあもしもアミットとザックが次の人を見付けられなかったら、私たちはこの家の家賃を3人で支払わなくちゃならないの? そうなったら私、引っ越すけど、その場合は私の予約金は返して貰えるの?」
アミット 「基本的に、予約金っていうのは自分が出て行くときに、次の人を見付けたら返して貰えるものなんだよ。だから、僕が次の入居者を見付けられなかったら1ヶ月分は僕の予約金を使うから、トーコたちは払わなくていいんだよ」
鷹瀬 「じゃあ、その次の月は?」
アミット 「今は学生がたくさん帰って来ている時期だし、見付かるよ」
鷹瀬 「見付かるかどうかじゃなくて、見付からなかった時のことを聞いているんだけど」
ザック 「そうなったら人数割りだね」
鷹瀬 「じゃあそうなったら私は出て行く、ってなっても予約金は返ってこないのね?」
ザック 「トーコが自分の部屋に住む次の入居者を見付ければ、予約金は返ってくるよ」
入居者が見付からないから出て行く、と言う話をしているのに、どうして私が自分の部屋用の次の入居者を見付けられるのでしょう……。要するに、予約金は返ってこないというコトではありませんか。常に常に確信がズレる苛々する話し合いです。
この後に、キャルから男連中に「掃除をしろ」という要望が出たり、ナズが夜中に友達を連れてくるコトに対する不満が出たりもしましたが、やはりいつになっても本題中の本題である「キャルの子供参入問題」が話題に上りません。そもそも次の入居者が見付からないのはキャルの子供が来るからなのですが……。
ザックはザックであれだけ話し合いをすることから逃げていたというのに、いつの間にか自分の手柄のように話し始めているではありませんか。
ザック 「さあ、恥ずかしがらずに、他には? 何か言いたいことはある? 隠し事はなしで、思ったことを言い合おうじゃないか! そのために話し合いの場を設けたんだから。僕たちはもう2ヶ月も一緒に暮らしているんだ。家族も同然じゃないか! 話し合いや思っていることはここのテーブルで始めて、ここのテーブルで終える」
キャル 「良い言葉だわ」
ザック 「陰で言う必要なんかないんだよ、トーコ! 何か言いたいことは?」
………………卑怯だなぁ……。私だけが陰で何かを言っていたかのように仕立て上げるこの遣り口。しかもあたかも自分がこの話し合いをセッティングしたかのようなこの言い回し。何だかもう怒りよりも唖然とした感情の方が強くなってしまって……。
ただでさえシドロモドロで喋らねばならず慢性的なもどかしさを抱えているというのに、こういう破廉恥な態度を取られると、どっと疲れて反論する気も失せます。恐らく私が何を言っても、こういうカンジで締め括られて行くのでしょう……。
しかも、ザックが話し合いから逃げ回っていたのは全員が知っている事実です。それなのに、どうしてこんなことが言えるのでしょう。恥じらいとかプライドとか、そう言うものはナイのでしょうか……。更にはキャルが同意しているのにもビックリです。一体何を考えているのでしょう。彼らの思考に付いて行けないのですが……。
さすがにアミットは、冷めた目でザックを見ている私をチラリと確認して気まずそうにしており、恐らく彼には私が「コイツ調子良いなぁ……」と呆れているのが解っていたのでしょうが……。(※注:アミットは、彼自身は私の友達でもありますが、基本的にはザック側の人間なので、私1人が悪者にされることを申し訳ないと思っているのか、話し合いの間は何となく私と目を合わせないようにしていました……)
さて。ザックの酔った演説に対して私が無反応でいると、いよいよキャルが動きました。
そして始まった修羅場――本題中の本題、「キャルの子供参入問題」はキャル本人が口火を切ることになったのであります。
キャル 「……結局、私の子供が来ることに対して文句を言っていたのは誰なの?」
ザック&アミット 「……」
鷹瀬 「……文句を言っていたんじゃなくて、次の入居者が決まらないからどうしよう、って話をしていたんだよ。私の学校でクラスメイトにフラットを探している人がいたんだけど、その人に家を紹介する時に『5歳の子供がいる』って言ったら『じゃあ止めておく』っていうことになって……」
キャル 「だからどうして私の子供を見たこともないくせにそういうことが言えるのよ! あなたの友達が馬鹿なのよ!」
アミット 「いや、トーコの言っているのは一般論だよ。子供がうるさいって言うのは常識だろ」
キャル 「私の子供を見たこともないくせに!」
鷹瀬 「でも見たことがないからこそ、皆情報だけ聞いて、子供がいる家といない家があったら、いない家を選ぶんじゃないかな……」
キャル 「……トーコが嫌がっているのは解ったわ」
鷹瀬 「ちが……」
キャル 「で? 貴方たちも私の子供が来るのが嫌なの?!」
アミット 「僕は構わないけど、次の入居者が子供を嫌がる可能性は高いだろ? そうなったら入居者を見付けるのだって大変だよ」
ザック 「トーコがその話をしたとき、周りにいたクラスメイトも全員、『子供がいる家は嫌だ』って言っていたんだって」
キャル 「ザック、貴方はどうなの?」
ザック 「僕は構わないさ」
キャル 「じゃあ結局トーコだけが嫌がっているのね!」
アミット 「ナズも子供は嫌いだよ」
――結局、皆面と向かっては言えないのです……。
私自身、「子供が来るのは嫌」とは言えなかったので、「次の入居者が……」という言い方をしていたに過ぎないので、他人を責めることは出来ませんが、それでもザックなど陰では散々「子供なんかうるさいから嫌だよ。これだから南アフリカのヤツをメンバーに混ぜるのは嫌だったんだ!」とか言ってたクセに……と思うと、「卑怯だなぁ……」という印象は深まります。
アミットに関しては、「子供はうるさいよね」とは言っていましたが、「子供が来るのは嫌だ」とは言っておらず、彼の性格を考えると本当に「I
don't mind.」と思っているのでしょう。加えて、彼は残り1ヶ月で帰国なのですから……。
そして引き続き、解決していない現実です。
キャル 「トーコ、あなたは自分の友達を連れて来たいために私を追い出そうとしているのね」
鷹瀬 「違うよ。次の入居者を探していて、そういう問題が出てきただけだってば」
キャル 「じゃああなたは一体どうしたいのよ? 私に『出て行け、子供は連れて来るな』って言ってるんじゃない」
鷹瀬 「そうじゃないでしょ。キャルが子供を連れて来ることを他の人はつい最近まで知らなかった訳だし、もしも事前に知っていたら人を探すのだってもっと簡単だった筈でしょ? 今じゃもうザックはあと20日で一時帰国するんだし、アミットも1ヶ月後だし。こんなに急だから、人を見付けることが出来ないんだし、もしも次の入居者が見付からなかったら私たちの家賃が上がるんだし、そうなったら皆に被害が出るじゃない」
キャル 「だから、あなたは新しい人を入れるために私が出て行けばいいと思っているのね。よく分かったわ。……もし私が次の家に引っ越すなら、あなたが家を探してちょうだいよ」
…………疲れます。どうにもこうにも話が通じないらしいこの現状に、どんどん気力が萎えて行きます。
キャル 「子供を持っていない人がこうも未成熟だとは思わなかったわ。考えを改めるべきね」
鷹瀬 「……でも今部屋を探している人のほとんどは、多分その『未成熟な子供を持っていない人』なんじゃないかな……」
キャル 「私は当然自分の子供に責任を持つし、うるさくなんかさせないわ。なのにあなたと来たら……自分が経験した訳でもないくせに、周りの人がうるさいって言うから『子供がうるさい』と思うなんて……馬鹿げているわ! それに私はトーコが夫と子供を連れてこようと、文句なんか言わないわ! あなたも子供を持ったら同じ目に遭うでしょうよ!」
挙げ句の果てには呪いの言葉ちっくな捨て台詞を叩き付けられました……。
「私はトーコが夫と子供を連れてこようと、文句なんか言わないわ!」って言われてもねぇ……連れて来ませんもん……。
そもそも私が子供を抱えてたら、1軒家を借ります。他人に迷惑を掛けたくないですし。もしも経済的な理由で他の同居人と共に住むことになったとしても、取り敢えず前もって同居人に相談します、常識として。いきなりなんか連れて来ません。一緒にしないで下さい。この「告知を一切しなかった」という点に関しては一切言及せず、彼女は一方的に被害者ぶって話し合いは幕を閉じました。
最後はキャルの矛先が私だけに向いたことに安心したのか、男連中は静かでした。アミットも最初のうちはちょこちょこと助け舟を出してくれていたのですが、結局何を言っても主題が摩り替わり、その内キャルの剣幕に負けて、「僕はどうでもいいよ。予約金が返って来なくても構わないし。これって残る人たちの問題だから」というスタンスに落ち着いていました……。
言葉が自由に操れたなら、そもそも「事前に同居人の許可を得る」という義務を果たしていない点から攻めて行けたのですが、何分英語が不自由なので、もたもた話しているうちに主題がズレ、主題がズレて行くコトがハッキリ見えていてもどうすることも出来ず、非常にもどかしい思いを経験しました。
しかしこの件を友人に報告すると、こんな素敵なお返事が……。
もちろん、もっと英語ができたなら事態は少しは違ったかもしれないけど、なんかもっと根本的なところで価値観(?)が違うみたいだから、例え英語ができていても、こっちの常識は理解してもらえなかったかも。
英語が話せようと話せまいと「あなたは未成熟ね!」っていう彼女のセリフは存在していた気がするのよ。
ああ、本当に……そうかもしれません……。
そして結局どうなったかと言いますと、話し合いの幕を閉じたキャルの言葉はこうです。
キャル 「安心してちょうだい。誰がこんな家に家族を連れて来るもんですか! 今日のことは夫に報告するわ。『トーコが子供が来るのを嫌がっている』って」
ああ……私、悪者確定っすか……。この後、何をどう言おうと聞く耳を持って貰えませんでした……。
驚くべきは私以外のメンバーが話し合いが終わると談笑し始めちゃったコトです。ザックとキャルに至っては、こんな会話まで飛び出す始末……。
ザック 「こうした話し合いは必要だね。皆が思ったことを素直に言い合えばいいんだ。陰で言うことはない、何も取って食おうって言うんじゃないんだし!」
キャル 「もっともね。陰で言うなんて最低よ。私は今までに人の陰口を言ったことなんかないわ。言うなら直接面と向かって言っているもの!」
ザック 「もちろん僕もさ!」
………………恐いっす、この人たち。
キャルの台詞に至っては「私への当て付けっすか?」ってカンジです。散々ナズやザックの悪口を私の前で言っておきながら、「私は今までに人の陰口を言ったことなんかないわ」と私の前で言い切ってしまえるこの態度には心底驚きました……。「never」って言ってました……。私に向かって散々言っていた「ナズは悪魔よ(原文:「Naz
is the devil.」)」とか「ザックは信用ならないわ」とか「アミットを信用するのは止めた方がいいわよ」とか、ああいう台詞のことはスッカリ忘れちゃってるんでしょうか……? ザックも然りで、この人たちはどうしてここまで恥ずかしげもなく自分だけを正当化できるのでしょう……。
キャル 「私は誰にも迷惑かけてないし、常に公平に行動しているわ」
……旦那と子供を連れて来ることを同居人に一切言わなくても、「誰にも迷惑かけてない」ことになるようです……。駄目だ……基準が見えない……。
やさぐれた気持ちのまま今回の話し合いで学んだことをまとめますと、こんな感じでしょーか。
・真面目に物事を考えようとするな
・事態を明らかにしようとするな
・人の悪口は陰でこっそりと言って、証拠は残すな
・態度の裏表は使い分けろ
・正義感や恥じらいを持つな
どこもかしこも卑怯者が勝つ世の中らしいっす……。ま、短期間で色々経験させてもらって「アリガト」って感じっすか。
とにかく今回腹の底から「ガイジンは信用&信頼できない」ということを思い知りました。(いや、日本人だって本当の意味で信用するのは難しいことですが……) どいつもこいつも。コレは文化なのでしょうか? 個性なのでしょうか?
特にバングラディッシュ人のザックは「ずるいなぁ」と強く感じました。しかしこの人、考えてみれば最初から胡散臭くはあったのですが、その後生活に支障がないから忘れていただけのことかもしれません。あとはキャルの筋金入りの身勝手さと、アミットの筋金入りの「I
don't mind.」「Doesn't matter.」の大らか精神にかなり驚きました。
しかしザックといいキャルといい、本当に言い方が悪いのは百も承知なのですが、もしかしたら彼らの振る舞いは貧しい国特有の「隙があったらねじ込め!」精神の現れなのかもしれません。そしてそれをナチュラルにしているだけなのかもしれませんね……。学生としてアイルランドに来ているアミットと、働きにアイルランドに来ている彼らの間の決定的な差は、この辺りなのかもしれないなぁ……と考えてみたり。実際のところはよく分かりませんが。
今回の話し合いを経て、私は大好きなアミットに対しても多少なりとも失望と言うか、「ああ、やっぱり信頼は出来ないな」と改めて感じた訳ですが、経緯を報告した友人の、こんな客観的な意見には「なるほど」と頷かせていただきました。
根本的には頭のいいアミットの態度がこれでわかる気がするわ。
インドなんて日本以上に価値観や教育レベルの違う人が一緒に暮らしているんだろうし、その中で「人の良いところだけを見よう」という理想的なスタンスを保つには、ああいう態度になるのかも。
取り敢えず、精神的に居心地は悪くなりましたが、物理的には綺麗だし快適な我が家なので、なるべく表で時を過ごして、同居人とは表面的にニコヤカに接して、深くは関わらないようにしながら生活をしていくつもりです。
いい加減、勉強に集中できてイイかもしれません。
――こうした経緯を経て、1週間に渡って繰り広げられた「全員で話し合いをしよう」企画は幕を引いたのでした。
昨日の今日です。どうして家にいることが出来ましょう……。
同居人に失望し、顔を合わせるのすら嫌……という気持ちだったので、朝早くから大学の自習室に逃げ込み、ひたすらこのサイトの更新をしていました。……ここで「ひたすら英語の勉強をしていました」と言えれば「尚良ろしい」のですが、恐らく私にとって「書くこと」は癒し効果といいますか、ストレス発散といいますか、一種の
meditation(瞑想)なんだろうと思います。
さて、9時から21時までおおよそ半日間現実逃避をしていると、その間にやはり同じく現実で苦しんでいるらしい日本人留学生の友人から携帯にメッセージが入りました。
I can't say anything because of stress.
……………………すまん、悪いが和んだ。「みんな苦しいんだ……」みたいな。
彼女は最近転校したばかりで、新しい学校、新しいステイ先で色々あるようです。
さて、「もうみんな自室に戻っているかな……」という21時頃にコッソリ家に帰ると、キャルが台所を掃除しており、アミットがその隣の居間のソファに横になっていました。気まずいながらもキャルに挨拶をすると、無視されることはなく辛うじて返事は返ってきましたが、キャルにも元気はありません。
着替えてから言葉少なく食事の用意をしていると、食卓で大きな溜息を吐くキャル。シカトしてしまおうかと一瞬思いましたが、私は今でさえキャルのことは嫌いではないのです。どんなに勝手でも、基本的に愛情豊かな人だということを知っていますし、やはり一時期メチャメチャ愛されていた思い出がある上に、私は一度身内になった人にはとことん弱い人間なので……。
鷹瀬 「……大丈夫? 疲れているの?」
キャル 「……そうね、疲れているし、物凄くストレスを感じているわ」
私もです……。
余計なことは言わない方が良さそうなので、再び黙々と食事を作っていると、居間からアミットの歌声が……。ああ……やっぱ筋金入りに陽気な人ってのは場を和ませるには良いかもしんない……。
しかしこんな時間にアミットが居間にいるなんて珍しい。もしかしたら心配して待っていてくれたのかなぁ……。
キャル 「彼、あなたの帰りを待っていたのよ」
あ、やっぱり。彼なりに(※注:ポイント)悪かったと思って気を遣っているのでしょうか……。
当然私も元気がなかったのですが、それでもいつも通りに明るく話し掛けてきて、私のノリが悪くても夕食を食べ終えるまでずっと横にいて、インドのことや婚約者のことを喋り続けていました……。いつもは私がインド文化について質問するとそれに答えてくれるのですが、この日はこちらが質問しないでもずっと話していたので、ああ、これってもしかして彼なりの労わりなのかな、と……。
まぁ昨日の今日です……もう誰も信じていませんが……。期待すると痛い目見ますから……。最悪考えられることとして、「単にインドのことと彼女のことを喋りたかった」のかもしれませんし。
キャルが出て行くという話になったときに「やった!」と言っていた彼を見ているだけに(詳細は18日B参照)、「私もどうでもない存在として扱われているんだろうなぁ……」と覚悟していたのですが、ちょっとは友達と思ってくれているのでしょうか……。
ま、確実に分かっているコトとしては、基本的に彼にとっては婚約者以外はみな風景という大前提なのですが。
昨日遅くに帰った際にアミットが待っていたことに関して、やはりあれは彼なりの「労わり」だったようです。
と言うのは、昨晩の会話にこんなものがありまして……。
鷹瀬 「大学のジムって一般でも使えるんだよね? プールって何時までやってるか知ってる?」
アミット 「利用したことがないから知らないけど、23時過ぎにジムから学生が出て来るのを見たことはあるよ。今は夏休みだから分からないけど……」
そして本日、やはり夜遅くに家に帰ると、食卓の上にプール(ジム)の時間割が置いてあったのです……。
彼は今でもネットを使うためにほぼ毎日大学には行っているので、わざわざ取りに行った訳ではないと思いますが、ジムのある場所は彼の研究室から少々離れていますし、何よりもアミットが「時間外」にも私の台詞を覚えていてくれたというのは、やはりもしかしたら気を遣ってくれているのかなぁ……と。彼なりに悪かったと思ってるのかもしれません……。
しかし本当に興味深い人です。
この1年の留学を「完全に時間の無駄だった」と言っていて、その理由は100%、「彼女と離れて生きるなんて」ということなのです。「でも長い人生のたった1年じゃん。良い経験だったと思わない?」と聞いたら、「No
way!(冗談じゃない!)」と仰っていました。
13歳で婚約した彼女ですよ? ご近所さんで毎日会っている彼女なんですよ?(彼女というより既に家族でしょう……) そんでたった1年離れているだけなんですよ?!?! いやはや……。
また、彼は携帯を持っていますが、電話番号のメモリー機能を一切使っていません。コレ、どういう意味かと言いますと……全部覚えているんです……。マジで。確かめました。ザックやキャル、ナズ、私などの身近な番号は当然として、アイルランドの警察、入国審査局、大学の受付、ショッピングセンター……など、片っ端から聞いてみたら、全部そらで言えるのです……。本当に、頭良いんですわ……。
――信頼は出来ませんが。
ま、私も彼を見習って「人の良いことろだけを見る」ように心掛けたいと思います。そうしないとやって行けないので。
我がフラットの状況を話すと、大抵「どうして他に移らないの?」と不思議がられます。
「次の入居者を見付けられなければ予約金235ユーロが返って来ない」、「引越しが面倒」、「3ヶ月だけ貸してくれるフラットはなかなかない」、「どこのフラットにも問題はある」など理由は色々ありますが、やはり最も大きいのは、「私は対人関係のストレスに慣れている」ということでしょうか……。
我が家(実家)でのストレス生活に慣れている私にしてみたら、ハウスメイトの1人に露骨に無視されても嫌味を言われても、「ま、死ぬ訳じゃないし、実害もないし」と結構平気なので、我ながら驚きました。(※注:この酷い状況は今では落ち着いていますが……)
やはりどんな経験も後に使えますね! ビバ・我が家の暴れん坊将軍パピー! 28年間の精神修行をありがとう!!って感じでしょうか。
物理的に何かを壊されるとか、食品を勝手に食べられてしまうとか、うるさいとか、汚いとか……そういう状況には恐らくメチャメチャ弱い(と言うか、ストレスが溜まる)と思うのですが、家が綺麗で静かであれば、それ以上のものはオプションです。人間関係は良いに越したことはありませんが、信頼できる友達がいて、自分を愛してくれる人がいるという自信さえあれば、近くにいる人にどう思われていても結構大丈夫なものだな……としみじみ思いました。
勿論身近な人と仲良くやって行くことも大事ではありますが、完全に信頼できる人などそうそう簡単に見付かる筈はないのです。そして改めて、一生涯付き合ってゆくであろう友人に思いを馳せるのでした。
私が通っている語学センターがある大学は、恐らくアイルランドで1番設備が整っている大学です。24時間年中無休のコンピュータ室、平日21時まで開館している図書館、語学センターの生徒のためのビデオ・カセット視聴室、スポーツ・アリーナ、スポーツ・グランドなどなど。日本人の留学生が設備面からこの大学の語学センターを選ぶことも稀ではなく、インターネットやスポーツジムは既にこの学校の呼び物であると言っても過言ではないでしょう。
アイルランドに来てよく歩きはするのですが、イマイチ運動らしい運動をしていない私にとっても、この学校のスポーツ・アリーナにある50mプールはかなり魅力です。何せこの50mプールはアイルランドで初にして唯一の50mプールであり、昨年の開会式には大統領が訪れ、「我が国初の50mプール」と熱く講演したほどのシロモノなのです。

そこここの表示で50mプールを誇っています……
――と、言う訳で、構内の至る所で「50mプール」を主張しています。普通「Arena
including pool」とは書いても、「50 metre pool」なんて書かない……。
【追記】
さすがに新しいだけあって綺麗なのですが、いかんせん電子ロックのロッカーがほとんど壊れていたり、シャワーが熱くならなかったり……。やっぱりココはアイルランド……って感じですねぇ……。
事態について行くことが出来ません……。
本日19時に家に帰ると、キャルの旦那と5歳の娘エンジェルがいました……。
21日の修羅場討論会で、キャルは「安心してちょうだい。誰がこんな家に家族を連れて来るもんですか!」と言ったのだと思っていましたが、またも私の聞き間違いだったのでしょうか? 何をどうしようと旦那と子供が来るのであれば、一体あの話し合いは何のためにしたのでしょう……。
キャルも多少なりとも気まずさを感じているのか、私が帰ってきたことを確認して挨拶をしたきり目を合わせようとしません。
取り敢えずキャルの旦那とエンジェルに言葉少なく「ハロー」とだけ挨拶をしますが、明るく陽気でお転婆なエンジェルは物怖じせずに私にガンガン迫ってきます。
エンジェル 「ねぇねぇ、あそこに私の写真があるの、知ってる? 今までどこに行ってたの? お買い物? 何を買ってきたの?」
………………子供がお喋りでひっきりなしに喋っているというのは微笑ましいことで、なんら悪いことはありませんが、そういう子供と一緒に暮らすのは別問題です。初めての家、久し振りに会った母親に興奮していることも相俟って、「マミー! マミー!」とキャルを呼び、食卓にいるキャルと部屋とをバタバタと往復します……。
最初の内は私にも話し掛けて来ましたが、恐らく私が「……なんでいるの?」と思っていることを察したキャルが、エンジェルに厳しい口調で(南アフリカ語で)何かを言い、エンジェルはそれ以後ちらりと私を一瞥してから話し掛けて来なくなりました。まぁ恐らくは「その人に話し掛けちゃ駄目よ」というような注意をしたのでしょう……。
ダメージが大きくヨロヨロと部屋に戻っても、この家始まって以来の騒音は続きます……。子供の騒音を隠すためか、単なる旦那の趣味なのか、扉を開け放ったままガンガンとテープを流している彼女が、以前ナズが織り成す騒音に文句を言っていたことを思い出し、この状況は一体どうよ……という呆然とした気持ちが強まります。
子供が加わるってのはこういうことなのでしょうか……。き……聞きしに勝るこの現実……。
何も私は子供がうるさいことが悪いと言っているのではありません。子供を赤の他人の同居人が4人住んでいるシェアフラットに許可なく連れてくること自体が悪いと言っているのです。
第一、「部屋から1歩も出さないわ」などと言ってましたが、既に居間から台所から縦横無尽に走り回っていますし……。もっとも5歳の子供を小さな部屋から1歩も出さないなどというニアリー監禁生活など、子供にとって良い訳がありません。ここでも子供が縦横無尽に走り回ること事態を悪いと言っているのではありません。子供は元気な方が良いに決まっています。しかしそういう子供を赤の他人の同居人が4人住んでいるシェアフラットに許可なく連れてくること自体が悪いと言っているのです。
5歳の子供なのですから当たり前のことですが、声が高く、ひっきりなしに「マミー!」とキャルを呼ぶ声が家中に響き渡ります……。度を越してうるさくなると、それを叱り付けるキャルの更に大きな声……。たった1人の参入で、ここまで変わるかフラット生活……。
一時、「私さえ我慢すれば良いことなのかな……」などと思いましたが、ちょっとコレは駄目っぽい。キャルからシカトされてもどうにか平気でしたが、この生活は我慢できない気がします。どうやら私は騒音にかなり弱いようです。
私も5歳の子供の破壊力を甘く見ていましたが、そもそも驚くべきは母親であるキャルが、子供を「静かに過ごす」ようにコントロールできると思っていたのでしょうか……。本日は初日なので「ちょっと興奮していただけ」ということだと良いのですが……。
とにかく、いつまでいるのか見当もつきませんが、たった1時間同居しただけで「……勘弁してくれ」と思ったのであります。
もう明日からは朝早くに家を出て、夜遅くまで大学の自習室で過ごすしかなさそうです……。
正確には既に昨日の夜から始まっている逃避生活ですが、当然今日だって逃避は続いております。
朝9時に家を出て、通常18時頃には帰宅していた習慣を、ちょいと3時間ほど延長すれば良いだけ……。夏休みも終わり、大学の図書館は21時まで開いていますし、どうやら24時間オープンしているスペースもあるようなので、最悪そこに逃げ込めば良いのですが、恐らくこんな逃避生活は体力的に長く続けられない気がします。
また、日々の買い物をしなくてはならないとなると、ショッピングセンターの閉店時間も行動を左右する一因になり、図書館の閉館時間よりもショッピングセンターの閉店時間、つまり月・火・水20時、木・金21時、土19時、日18時というタイムスケジュールこそが私の帰宅時間のリミットということになりそうです。
食料品を買い溜めして週に2回ほどの買い物で済ませることが出来れば良いのですが、現在家族を抱えたキャルが冷蔵庫の半分と冷凍庫の4分の3を占領しているため、そうそう買い溜めも出来ません。
……ああ、何だかこうして冷静に書き連ねてみると、すべての原因はどうやら1ヶ所から派生しているようですねぇ……トホホ。
具体的には昨日、本来ならば18時頃から食事の用意をするのですが、親子3人が食卓を占領してしまっていたため、彼らが夕食を終えた後21時頃から食事の用意をし、それからシャワーを浴びて……とすべてのルーチンワークが3時間ほどズレて行きます。
食卓にある椅子は4席。彼らに混じって食事をとることも出来ますが、ただでさえキャル一家に対して腹に一物抱えている私がどうして「親子3人+他人1人」の位置配置に飛び込んで行くことが出来ましょう……。ホームステイじゃないんだから……。物理的には可能でも、精神的には不可能だったため、彼らが部屋に戻る音を聞きつけて、なぜか先住民である私の方がコソコソと行動する羽目に陥っています。
今までは22時頃には食卓の机で作業が出来たのですが、生活リズムがズレ込んだことに加え、彼らの前でそれをすると、「アイツは独りで食卓を使っている。じゃあ僕たちも……」となりかねないので、寝かせたスーツケースの上に簡易椅子を乗せた簡易机にラップトップを置いて(写真参照)自室で作業をしています。
特記すべき変化はお風呂タイムでしょうか。我が家には1階にシャワールーム、2階にバスルームがあり、当初キャルは2階のバスルームを使っていたのですが、電源を入れれば即座にお湯が出る1階の電気シャワーと違って、2階でお湯を使うためには風呂に入る20分ほど前に湯沸しの電源を入れなければならず、しかも男連中が使ってバスタブが非常に汚いため、初めの数回以後、彼女は1階のシャワールームを使うようになっていました。
しかし家族が来て……彼女は5歳の娘を風呂に入れるため、そして旦那と一緒に風呂に入るため、2階のバスルームを使うようになりました。2階のバスルームは私の部屋の隣です……。
昨日に引き続き、当然今日も彼らが夕食を終えた後に台所を使おうと、余裕を持って21時過ぎに家に帰ったのですが、余裕は足りなかったようです。宴もたけなわ、家族団欒タイムにジャストミートしてしまいました。買ってきたばかりの冷凍食品を冷凍庫に詰め込まねばならず、食卓……正確には台所に顔を出し、言葉少なく挨拶をしてから自室で彼らの食事が終わるのを待ちます。恐らくキャルが事前に何か言っているのでしょう。私が台所に現れるとキャルを筆頭に旦那とエンジェルの間にも微妙な緊張感が走っていました。
昨日は21時過ぎには部屋に戻っていたようでしたが、今日は待てど暮らせど食卓から退く気配がしません。嫌だなぁ……22時から夕食を作るとなると、生活リズムは4時間ずれるのでしょうか……。シャワーは寝る前に浴びる派でしたが、時間効率を考えて、待ち時間の間にシャワーを済ませますが、シャワーを終えてもまだ食卓での家族団欒は続いています。
21時50分、ようやく夕食を終えたらしいキャル一家が私と入れ替わりでバスルームに来ます。彼らが私の部屋の隣のバスルームにいる間に、私が1階の台所を利用する――なかなか良いタイムスケジュールかもしれません。
キャルも私が彼らを避けているのを気まずく思っているようで、子供が大声を出すとピリピリと叱りつけています。初日にかなりうるさかったことで覚悟していましたが、どうしてどうして、落ち着いてしまえばエンジェルは5歳にしては随分と行儀が良く、可愛い子であることは間違いないので、逆に懐の狭い私のような人間がいる環境に連れて来られて可哀想……とさえ思ってしまいます。彼らにしてみれば、私こそが「窮屈な生活の原因」なのかもしれません……。しかしここで私が愛想良く「自由にしていいのよ」などという態度を見せれば、どこまで付け上るか本当に見当もつかないため、頑なな態度を崩す訳にも行きません。難しいものです。
複雑な思いで黙々と夕食を作っていると、風呂上りのキャルが台所にやって来て、私に詰問調で迫ります。
キャル 「……どうして独りで夕食を食べようとするの?」
鷹瀬 「あ……ちょっと今日、夕食作るのにコンロをたくさん使いたかったから……」
キャル 「ふうん、そう。私たちがいる間はコンロは使えないと思った訳ね」
鷹瀬 「……」
キャル 「あなたがあんまり遅くに帰ってくるから、日本に帰ったんじゃないか、って言ってたのよ」
鷹瀬 「……ははは」
弱っ! 我ながら「とほほ」っつーくらい弱いっす……。毅然とした態度? 何ソレ?って感じです。
しかしまぁ、私がキャルの家族と距離を置いていることは彼女にも充分分かっていて、それは彼女にとってはとても辛いことなのでしょう。自分の愛する家族を、以前(※注:ポイント)非常に仲が良く、一時は(※注:ポイント)妹のように思って可愛がっていた同居人が避けているのですから。
それでも答えは明白だろうに、こういう「聞き難いこと」をズバリ聞いてきてしまえるふてぶてしさ……なのか公明正大……(※注:ただいま混乱中)……なのか……とにもかくにも、どこまでもあちらは強いっす。
もちろん、私が彼らに交わらないようにしているのは無言の抵抗を伝えたいからなのですが、結局居たたまれない思いをするのは私の方になるようです。
と、言うことで「我が家」は寛ぐ場所ではなく、ただ食べて寝る場所に成り下がっています。もう「我が家」ではなく、事実上は「キャル一家の家」という気がしますが……。次の入居者はどうやって見付けるんですかね……。
キャル一家の参入により家に寄り付けないため、アミットに会えず、彼とのお喋りを勉強がてらのかなり楽しみな日課にしていた私にしてみれば、思わぬダメージを被っています。いつもは彼のバイトがオフの日は夕食から食後の紅茶まで18〜21時の間の約数時間を「英会話」と「インド文化講義」に当てていたのですが、その時間はドンピシャで逃げ惑う時間に化けたため、家ではほとんど会話をしていません。
アイリッシュとシェアフラットをしている日本人留学生も、「同居人とは顔を合わせたときに『ハロー』って挨拶するくらい」と言っているので、何もこれは珍しい状況ではなく、むしろ当たり前の状況なのですが、今までせっかく良い環境にいたのに……とやはりこの生活の変化を嘆いてしまいます。
また、アミットが帰る前にインド式本格派カレーの作り方を教えてもらう約束をしており、つい3日前、教えてもらったスパイスを揃えたばかりで、「今度会った時に教わろうっと」と呑気に構えていたらこんなことになってしまって……。昨日、一昨日と見様見真似でチキンカレー、ほうれん草カレーと独力で作ってみましたが、美味しいことは美味しいのですが、イマイチ彼らの作るカレーとは違ってしまい、一度きちんと手順を教わりたいなぁ……と思っているのです。……しかし私は依然として逃避生活を続けていますし、実現するのはいつになるやら……。
私以外のメンバーはどうしているかと言いますと、完全に生活リズムがズレているらしいザックとナズはキャル一家と重ならないように食事が出来るようですし、アミットに至っては誰が台所を使っていようと気にせず食事の用意をしているようです。しかしこれは以前ではあり得なかったことですが、最近ではナズもアミットも時々作った食事を部屋に持ち込んで食べています。
以前は誰かしらが何となく食卓に長居して、2〜3人でお喋りをしている場面が毎日のように見られましたが、今ではそれぞれが自室に篭り、食卓に集うこともなくなりました。これがペースを掴めずにいる今だけのことなのか、これから先ずっとのことなのかは分かりませんが、約2週間後にはザックが一時帰国し、1ヶ月後にはアミットが帰国し、次に来る入居者によっては完全にバラバラな生活が定着するのでしょう。
そうなったらそうなったで良いのですが、現在の心配事はアミットの部屋の次の入居者に、キャルの従妹が来るかも……という話が持ち上がっていることです。それもかなり確かな可能性として……。
「キャル一家3人+キャルの従妹=4人」と「ナズ+私+ザックの部屋の次の入居者=3人」――こうなると引き続き弱い立場に立たされてしまいそうです……。
そもそもキャルは「引っ越しするかも」と言っていたのですが、その話はどうなったのでしょう……。キャル一家がいつまでいるのか、これは一時的ではなく永続的な滞在なのか、それさえもよく分からないため、身動きも取れません。迂闊に他の連中に「彼らはいつまでいるの?」などと聞こうものなら、「……ってトーコが言ってたよ」と言われかねないので、黙して語らずという姿勢を取り続けるしかないのです。
さて、現実です。逃避生活も3日目に突入し、早くも疲れました。
本当は、一家が昨晩21時50分頃まで食卓に居座っていたので、今日は22時頃に帰宅しようかと思っていたのですが、いい加減疲れたので、先に済ませられることをすればいいやと、少々早めに帰りました。するとどうでしょう……21時ちょっと前に帰宅すると、既に台所には誰もおらず、キャルの部屋も静まり返っています。
……もしかしたらキャルはキャルなりに、私に対して申し訳ないと感じているのかもしれません。
夕食をコッソリ作っているとアミットが自室から降りて来て、4日振りの再会です。
次に会える日がいつになるのか見当も付かない生活をしているので、ここぞとばかりにカレーのレシピを聞き、暫く立ち話をしていると、シャワーを浴びにキャルが現れます。挨拶をしても無視されることはありませんが、どこか寒い空気が流れるような気がするのは気のせいではないと思うのですが……。
キャルがシャワールームに入ってしまうと、母親を探してエンジェルが台所に現れます。ここで特記すべきはエンジェルとアミットの態度でしょう。
恐らく母親から「煩くしちゃ駄目よ」とキツく言われているであろうエンジェルは、私たちを見て警戒するような顔をしますが、やはりここでもアミットです。
アミット 「ヘーイ、エンジェル! 学校はどうだい?」
アミットって凄いなぁ……としみじみ感心してしまいました。
【追記】
キャルの旦那、シャワーを使った後に電源を切らなかったり、電気を点けっ放しにして出掛けたり、子供が食べ散らかした後を片さなかったり……ちょっと……。
恐らく私の頑なな態度、キャル一家が食卓にいる時には台所を使わない、夕食時間をズラすというのは、キャル一家にとっては非常に感じが悪いものでしょう……。キャルが旦那に私のことについて何か言っているのは確実で、そういう遣り取りを5歳のエンジェルが敏感に感じ取っているのも確実です。
子供は親の鏡です……。思いの他辛いのは、「トーコは私たちと生活するのを嫌がっている」という類のことを両親が色々言っているのをしっかり聞いているんだろうなぁ……と思わせる怯えた態度をエンジェルが取っていることでしょうか。「辛い」というよりも「居心地が悪い」という程度なのですが……。
エンジェルも早速アミットが一番懐が広いということを察知したようで、アミットがいるとニッコリ笑って寄って行くのですが、私を見ると笑顔を引っ込めて露骨に警戒する素振りを見せます。いや……これはこれでなかなか居心地が悪いものです。
しかしこれでニコヤカに対応しようものなら図に乗ってどんどんうるさくなるんだろうなぁ……と思うと、なかなか対応に困ります。
同時に、アミットってやっぱり凄いなぁ……と心底尊敬します。子供の相手もちゃんとしていますし、本当に、身の回りで起こることをすべて受け入れて、良いところだけを取り込もうとしている感じがします。ああいう彼の態度を見ていると、自分の頑なな拒否の姿勢が恥ずかしくなったり……。やはり思いは非常に複雑です。
居座られても困る。しかし実際に出て行かれても後味悪いんだろうなぁ……。
生活リズムが完全にずれていればありがたいのですが、朝出掛ける時間もほぼ一緒、あちらが帰ってくるのは17時頃、夕食は21時過ぎ、お風呂が22時……と、完全に重なるのがなんとも……。
私の地味なストレス生活はまだまだ続きそうです。
【追記】
本日の朝食時、アミットからの差し入れは……。

サモサ/中身はジャガイモとチリのカレー
ケチャップをソース代わりに食すとイケる
バットラックもグッドラックも綯い交ぜにして日常の中にこういう心温まるワン・シーンがあるので、シェアフラット生活は止められないのです。
25日にこの家に来たばかりのキャルの愛娘エンジェルですが、彼女は早くもアミットのことが特別に好きです。彼が両親以外の同居人の中で1番エンジェルと過ごしている時間が長いということもあるのでしょうが、恐らくそれだけではないでしょう。
例えば今日などザックもエンジェルの遊び相手を積極的にしており、遊んでいる間はエンジェルも非常に楽しそうなのですが、遊びが終わって落ち着くと真っ先にアミットに話し掛けます。今日、私が聞いただけで、エンジェルがアミットを呼んだ回数は30回を下らないでしょう。
ここで興味深いのはアミットの態度です。ザックがエンジェル相手に子供対応の態度――少々ゆっくり話したり、「ん? 何かな?」というように基本的に聞く姿勢――を取るのに対して、アミットは相手が5歳児でもあまり態度を変えません。多くの大人が子供の言動を優先させペースを崩してしまうのに対し、アミットはあくまでも自分のペースを崩さず、何か質問されても大人と会話しているとき同様の態度で返事を返しているのです。構いすぎることなく、しかし突き放している訳でもなく……。
私とアミットが話しているときにエンジェルがアミットに話し掛けても、アミットは決して私との会話を中断させてエンジェルに答えることはありません。何度名前を呼ばれても、取り敢えず現在続いている会話が終わってからでないと返事をしないのです。そしてこういう態度を意識して取っている訳ではなく、極々自然に陽気に行っているようなので、その様子を見るのが非常に面白いのです。
見方によってはアミットが子供、と捉える人がいるかもしれませんが、なかなかどうして、子供の扱いが上手いなぁ……と感心することも少なくないです。
私はそのエンジェルの大好きなアミットと話していることが多いため、アミットを間に挟んで、エンジェルも徐々に私に笑顔を見せるようになってきました。好かれていようといまいと、冷静に見てエンジェルは朗らかで可愛い子だと思いますが、私としても怯えられるよりは友好関係を築けた方が良いに決まっています。
しかし自室で本を読んでいると、食卓から聞こえてくるエンジェルのきゃっきゃとはしゃぐ声……。どうやらアミットとザックに遊んでもらっている様子。そしてやっぱり「うるさいなぁ……」という現実にぶち当たるのでした……。
サラが去った後、あらゆる面で潤滑油となっているアミットですが、1ヶ月後、彼が去った後は一体誰が潤滑油となるのでしょうかねぇ……。
【追記】
キャルの旦那、ラジオの音は大きいし、扉は閉めないし、洗濯機でシューズ靴を洗うし、シャワーの後に電源消さないし……微妙に苛付くんですけど、私の立場が微妙すぎて注意も出来ません……。くっそ〜……キャル一家以外の連中になら何でも言えるのにぃぃ。
【追記2】
昨日に引き続き、本日アミットから豆カレーを教わり、これがなかなか美味しくて感動しています。おおよそのカレーの作り方の基本は教わったので、あとはチャパティの作り方を教われば完璧でしょう。インドの知識バンクが帰国する前に出来るだけ多くの情報を伝授していただきたいものです。
本日サラが、現在の職場の同僚であり、同時に同居人でもある中国人の友達アレックスを連れてリムリックに遊びに来ました。(※注:海外で暮らす中国人の多くは、本名の他に英語名を持っています。この英語名は本名の音に近い時もありますが、全く無関係なことも多々あります)
このアレックス、少年のような青年で、サラが甲斐甲斐しく彼の世話をしているのを見ていると、2ヶ月前の自分とサラの関係を見ているようで、「要するにサラって他人の面倒見るのが好きなんだろうな」という乱暴な見解を持つに至った訳ですが……
サラ 「いやぁ、良い奴なんだけどさ……典型的な中国人だよ。僕が2時間かけて掃除しても、たった2分で汚すからね。彼が脱ぎ散らかした服を拾い集めて畳んで置いておくんだけど、1時間もしない内にまた散らかってるんだ」
というような上記の台詞を、さして嫌そうにでもなく笑いながら話してしまう彼に、現在の自分の心の狭さを思わず省みたりもしました。――が、だからと言ってそうそう基本的人格を変えられるはずもありません。「君は我慢できても僕は無理」という感じです。
ってな訳で、シティセンターに彼らを迎えに行った際、先日の話し合いの1件とその後の我が家の状況、私とキャルの関係を思わず激白してしまいました。
私とキャルがどんなに気まずい状況であろうと、僕には関係ないさとばかりにアッサリ家に来るつもりでいるサラ(とアレックス)。もう私もどうなっても知らんがな、という捨て鉢な気持ちで久し振りに早い時間に家に向かいます。途中、サラは買い物のためにショッピングセンターに寄り、アレックスと私が一足先に我が家の門を潜りました。
家に帰ると早速の第一関門、台所でアミットにまとわり付き、きゃっきゃとはしゃいでいるエンジェルのご登場です。玄関を潜ると早々にどっと疲れるこの光景……一体いつまで続くのでしょうか……。キャルはどうやら仕事に出ているようで、戻ってくるのは深夜1時過ぎとのこと。ああ、またも子供野放し状態ですか。
昨日見たときにはエンジェルに好意的に接していたアミットも、本日は少々疲れが溜まっているのか「トホホ」という顔をしています。いつでもどんな時でも飄々としているアミットのこんな困惑顔は初めて見ました。だってホラ、いつもはキリリと切れ上がっている眉が、今は完全なる「八」の字を象っているではありませんか。
そう、いくらアミットが普通に相手をしようとしていても、そこは5歳の子供パワー炸裂で、彼の腕を引っ張ったり大声で歌を歌ったり手に噛り付いたり……。そうなってしまうとアミットのペースだって崩れます。やはり5歳児というのはありのままでソウイウ存在なんだな、とますます確信を深め、最初からエンジェルとの距離を保って必要以上に親しまれないようにしていた自分の対応が正しかったことに満足します。
鷹瀬 「Hi Angel. Thanks Amit!」
ニコヤカに挨拶して、しかしそれ以上は関わらないよう、助けを求めるアミットの視線を無視して料理に取り掛かることにしました。無責任と罵られようと、私はこの事態を避けるためについ先週まで奔走していた身です。話し合い当日に「僕は構わない」と言ったのですから頑張って下さいってなモンです。
アレックスは一時的に5歳児と付き合えばいい客人よろしく、「こんにちわ。いくつ? いい子だねー」などとガップリエンジェルの相手をしています。
うわもう甘やかすな。大人が相手をしてくれるのが当然だと勘違いさせるな。と心の中で舌打ちするも、私の願いも虚しくどんどん幸せになるエンジェル。時を同じくして仕事を終えたザックが加わり、逃げ腰になりつつあるアミットとは対照的にエンジェルの相手をするものだから、5歳児のはしゃぎ方にエンジンが掛かり、奇声を発しながらアミットの腕にしがみ付いたり、アミットやザックに全身でぶつかったり、彼らを力一杯叩いたりを繰り返します。
親しみから来る態度なのかもしれませんが、エンジェルがアミットやザックを力一杯叩くのは端で見ていても少々不愉快で、いくら子供でも私がされたら真剣に怒りそう……などと思いつつ、それでも当事者の彼らが注意しないのだからまぁ関係ないや、と、黙々と料理を続ける私に、事態を収拾できなくなった男どもが助けを求めてきますが、コドモに火を点けたのは彼らです。私は知りません。
アミット 「Hey To-ko! Do you want to play with
Angel?」
ザック 「To-ko, come on, join us!」
鷹瀬 「No, thanks. It's not my cup of tea. It's
your business. I'm very busy.」
事態の悪化を防ぐことが出来ず、何気なくその場を離れて自室に逃げるザック。「トホホ」という態度でエンジェルと距離を作って、それでも台所で料理を続けるアミット。エンジェルに完全に興味を無くして中華料理を作り始めるアレックス。大人たちがバラバラになれば、エンジェルが向かう先は当然最愛のアミットです。
――さて、少々遅れてサラの登場です。既にエンジェルのことをキャルから見せられた写真でよく知っているサラは、愛想良くエンジェルに近寄り挨拶をしますが、面白かったのはエンジェルの態度でした。エンジェルは初めて見るサラを露骨に恐がり、アミットの後ろに隠れようとします。初対面だから恐がっていたということではなく、単にサラの何気の人相の悪さにビビっていたのでしょう。なぜならアレックスも同様に初対面でしたが、アレックスのことは恐がっていませんでしたから……。
サラは根は(多分)良い奴なのですが、どことなーく人相が悪いのです。ハウスメイト全員の写真を友人に見せた際にも、「一番左がサラ」と解説を加えて送ったにも関わらず、別の人を指して「彼がサラ?」と聞き返されたり……。中でも秀逸だったのが、友人からのこんなメールでした。
メンバーの顔見たよ。
説明を読む前に、こいつがきっとあまり仲良くない奴だな、とか、こいつはいい奴に違いない、とか想像してみたんだけど、ことごとく違っていて自分の見る目のなさに驚いたよ。サラなんて、絶対に仲良くない奴だろうと思ってたし。
キャルは男だと思ってたし。ちなみに彼女をサラだと思ってた。
このメールを読んだのは大学の図書館でしたが、噴き出してしまって大変でした。
話を現実に戻しますが……。
ここで面白かったのが、恐がられようととことんエンジェルにアプローチするサラと、とにかくアミットに構ってもらおうと必死なエンジェルと、エンジェルに何度呼ばれてもなかなか返事をしないアミットの3角関係でしょうか……。サラ→エンジェル→アミットという完全なる一方通行の修羅場を横目に、決して自分からは関わらない私はアレックスのリクエストにより黙々と巻き寿司を作っていました。
夕食時のバタバタを終え、1時間ほどエンジェルに振り回されたアミットも半ば逃げるように自室に戻り、サラは出掛け、私はシャワーを浴びたり宿題を済ませたりとすべきことをし、その間に母親を恋しがったエンジェルが禁止されている2階に上がってきてしまい、アミットの部屋まで押し掛けてしまうというハプニングがあり、更には部屋に戻ったエンジェルが「オバケがいる」と泣き喚くのをアミットが宥めに行ったり……何だか要するに(アミットが)子供に振り回されて日が暮れて……。
こんな経緯を経て、漸くエンジェルが寝付いたカナと思われる22時過ぎに、食卓でサラとお茶を飲んでいたのですが……。
鷹瀬 「――とにかく毎日がこんな調子で今は私、家では食卓使えないし、煩くて勉強できないから、図書館の閉館時間ギリギリまで大学に居座るって生活を送っているの。1日、2日ならいいけど、そういうのが毎日続くと凄く疲れるし、家に帰ってきても全然居心地良くないんだよね……」
サラ 「でもトーコ、こうは考えられないかい? いずれ君も子供を持つんだし、その時の予行訓練と思えばいいんじゃないかな」
鷹瀬 「私が今何もすることがなくて暇だってんならそれも可能かもしれないよ。でも私はアイルランドに勉強しに来てるんだし、お金と時間を無駄に使いたくはないの。サラはたまにここに遊びに来て、その時だけ構えばいいから大したことないと思っているかもしれないけど、私は毎日の生活がコレってのはハッキリ言って嫌です。
そりゃエンジェルは良い子だと思うよ。――5歳にしてはね。でもどんなに良い子でも5歳はしょせん5歳なんだよ。まぁ何よりも納得が行かないのは別のことなんだけどね。知ってる? 今キャルがいない時はほとんどアミットが面倒を見てるんだよ? アミットはそういうことを一切キャルには言わないから、キャルは誰にも迷惑かけてないと思っているみたいだけど。
今はアミットがいるからいいけど、来月アミットがいなくなったらキャルがいない間、誰が面倒見るの? 私? それっておかしくない? 大体キャルは子供をこの家に連れてくることに関して誰にも了解を得ていないんだし、そのことで話し合いをして揉めた時だって、『誰にも迷惑かけない』って言ったんだよ? 普通に考えたら5歳の子供を家に連れてきて、自分は仕事で家に子供だけを残していったら、誰にも迷惑かけないなんて絶対に無理でしょ。5歳だよ? どうやってコントロールするつもりだったんだか。とにかく私はキャルの言動には付いて行けないものを感じるし、凄く勝手だと思う」
サラ 「……トーコは子供が嫌いなの?」
鷹瀬 「子供が好きか嫌いかなんてことは全く別の話であって、今の問題は、どうしてああも他人のことを考えずに行動できるのか分からないし、そういう状況でどうして私が協力しなきゃならないのか分からない、ってことでしょ。なんかザックと話してた時も感じたんだけど、どうしていつもポイントがズレるんだろう……。とにかくこの前の話し合いではキャルだけじゃなくて、ザックにもかなり失望したよ。言い方は悪いかもしれないけど、卑怯だなぁ……って思った」
サラ 「……僕の勤めているホテルには日本人がたくさん来るけど、トーコと同じでみんな完璧主義なんだよね」
鷹瀬 「私のどこが完璧主義なの? それに今話していることって完璧主義云々って話?」
サラ 「トーコはいつも台所を綺麗にしているだろ?」
鷹瀬 「こんなの最低レベルのことじゃん」
サラ 「トーコにとっては最低レベルかもしれないけど、そうじゃない人もたくさんいるんだよ」
鷹瀬 「ふーん。……で、ホテルに来る日本人の何を見て完璧主義だと思ったの?」
サラ 「レストランのテーブルに花瓶があって、丁度日本人のトーコくらいの年齢の女性が座ったテーブルの花瓶に水が入っていなかったんだ。そしたらその女性が『この花瓶には水が入っていないから、倒れやすくて危ない』ってウエイターに言うんだよ」
鷹瀬 「……それのどこが完璧主義なの?」
サラ 「花瓶が倒れてテーブルがめちゃくちゃになったとしても、それを片すのはウエイターであって客じゃない。そんなことをいちいちウエイターに言って来るのは日本人だけなんだよ」
鷹瀬 「良いコトじゃない? 『他の人に迷惑がかかるんじゃないか』とか『倒れる前に一言注意しておこう』とか、そういうふうに思ったんじゃないの? 私が同じようにウエイターに言うかどうかは分からないけど、その人の行動は理解できるなぁ。私、日本は余り好きじゃないけど、日本人の気遣いとか、他人を思い遣る気持ちのレベルの高さは誇りに思うよ」
サラ 「僕も悪いなんて言ってないだろ。僕は日本人が好きだよ」
鷹瀬 「え? じゃあ結局サラは何が言いたいの? ってか、何の話だっけ?」
サラ 「皆が皆、トーコみたいに出来る訳じゃないってコトを……」
白熱した言い合いが展開される食卓にまで届く、どこからともなく聞こえてくるウォーンウォーンという泣き声……。あぁ……なんか嫌な予感……。
サラと目を合わせ、さて5歳児をあやしに行くべきか……と躊躇していると、こちらから出向くまでもなくエンジェル登場です。
エンジェル 「私、病気みたい。お目めが痛いの。ママはどこ?」
サラ 「キャルは今、仕事中だよ」
エンジェル 「ママはいつ帰ってくるの?」
サラ 「あと2時間くらいかな。短い針がここまで来たら帰ってくるよ。良い子だからもう寝ようね」
エンジェル 「アミットはどこ? アミットはママを連れて来てくれるよね」
サラ 「アミットはもう寝てるし、ママは仕事中だからまだ帰って来れないよ。あと2時間で帰って来るから、その前に寝ようね」
エンジェル 「ママはどこ? いつ帰ってくるの?」
〜以下、繰り返し〜
私は今まで5歳児と付き合ったことがなかったため「5歳くらいになれば、きちんと説明すれば通じるのでは」などと事態を甘く見ていたのですが、5分おきに食卓に来て全く同じコトを繰り返すエンジェルを前に、「5歳児に何かを言葉で説明するなんてのは無理」ということを思い知りました。悪い子か良い子か、なんてことは、5歳児という大前提の前には意味がないのです。
しかし「マミー」「マミー」と泣きながら繰り返すエンジェルを見ていて、小さな子供の成長過程にはどうやっても母親が必要だということも思い知りました。
アミットが「両親が共働きで子供を放って置くなんてのは良い事ないよ。子供には親が必要なんだ。やっぱりインドは最高だね!」と誇らしげに言っていたのが印象に残ります。現代社会は色々と成熟しすぎているために、女性の権利や男女平等といった思想が当たり前のように語られていますが、本当に基本的に、動物的に世の中の仕組みを見るならば、女性が家にいて子供の面倒を見る、というのはもしかしたら自然の理に叶った姿なのかもなぁ……と考え込んでしまった24時。
結局、「エンジェルが泣いて食卓に現れる」→「サラが宥めて部屋に戻す」という繰り返しを1時頃まで15回ほど繰り返し、この日は幕を閉じたのであります。
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