stay in IRELAND

愛蘭滞在記(3)〜Cork編B


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 残すところ3週間。何だかあっという間の日々で、少々焦ります……。
2002年6月6日(木)〜28日(金)の小見出し一覧
 6/6(木) 韓国と日本  6/7(金) パブ通いの日々  6/8(土) ブラーニーに行く
 6/9(日) 恵まれているらしい  6/10(月) 私的記念日  6/11(火)@ 2度目の正直
 A 憧れのアイリッシュダンス  6/12(水) 伝統音楽コンサート  6/13(木) 国民性と常識と
 6/14(金) 人生いろいろ  6/15(土) キンセールに行く  6/16(日) ワールド・カップの幕引き
 6/17(月) 日本食の美学  6/18(火) 頑張れ韓国  6/19(水) 携帯電話購入
 6/20(木) 物価のお話  6/21(金) 独立心と社交性  6/22(土) キラーニーに行く
 6/23(日) 反省と繰り返し  6/24(月) アイルランドゴミ事情  6/25(火) アジアと欧州と謙遜と
 6/26(水) 不法滞在10日目  6/27(木) W杯韓国戦論議  6/28(金) さよならコーク


2002年6月6日(木) 韓国と日本
 現在7人のクラスに韓国人が3人いるので事あるごとに韓国のお国事情が窺えるのですが、これが思う以上に日本にそっくりで、その類似たるや毎回新鮮に驚くほどです。これは中国人に対しては塵ほどにも抱かなかった感情なので、単にアジア人という括りではなく、特に韓国と日本に限った話ではないかと思っています。

 まず、ことわざなどを筆頭とした言葉の表現に非常に似たものが多いというのが驚きでした。具体的にことわざで言うならば……
It's no use crying over spilt milk.
覆水盆に返らず。

Look before you leap.
石橋を叩いて渡る。
 まず、「覆水〜」ですが、英語では「牛乳」としているところを、韓国では日本同様「水」としているそうです。そして「石橋〜」の方は、韓国でも日本とまったく同じで慎重になる表現として「石橋を叩く」と言うそうです。
 詳しく覚えていないためたった2つしか具体例を挙げていませんが、授業中にいちいち「同じ、同じ」と言っていました。「郷に入りては郷に従え」も、英語では「ローマ」に限定して表現していますが、韓国では「郷」のように固有名詞を使わずに表現していることや、その他多くの言葉の表現が似ています。もしかしたら私が無知なだけで、語源が同じという常識的な事実があるのかもしれませんが。

 また面白かったのが、ウケを狙って外したときなど韓国でも「寒い」と言うそうで、他の日本人と共に「おお〜同じだよ〜!」とえらく感動していました。まぁこれはもしかしたら日本のバラエティ番組などが輸入されているのかもしれません。

 言葉の表現に限ったことではなく、生活様式や一般常識、使っている文房具や身の回りの物に非常に似通っている点が多く、特に社会生活面での具体例を覚えている限り挙げてみると、「医者と弁護士が肩書き的に優れた職業」「社会人の休暇は連続して取得する場合、年に1週間がいいとこ」「高校生は大学入試のために必死に勉強するけれど、一度大学に入ってしまうとほとんど勉強しない」「一般の会社は残業などが多いので、公務員になりたがっている人が多い」などということから、その他細々とした何気ない所作や感覚が非常に似ています。
 またモノ文化に関しては、明らかに日本の後追いをしている感があり、昨今の情報流通の簡易化に伴って流行などが非常に素早く追い付いているように感じます。具体例を挙げるなら、髪型や髪の染め方、眼鏡のフレームの形、電子辞書、MDウォークマンなどです。

 そんな彼らを見ていて気付く日本人と明確に違う点――それが「元気」ということです。何だかもうとにかく元気ですし、スペイン人に負けず劣らずよく喋りますし堂々としているし積極的です。これはもう好みの問題も関わってきますので、この積極性が良いか悪いかは言いかねますが、素直に「凄い」とは思います。
 歳が違うという大前提もありますが、では日本の21〜23歳の大学生が彼らのように振舞えるとは思えず、単に若いからというだけではないエネルギーを彼らから感じるのは気のせいではないと思うのですが、たまたま今私のクラスにいる3人が平均以上に元気なのかも……という可能性もあるということを明記しておきます。
 しかし、以前何かの番組で、ワールド・カップを記念して(?)日本と韓国の対比をしていましたが、その中で決定的に違ったのが「公衆道徳から外れた人を注意するか、しないか」という点だったのが非常に印象的でした。もちろん日本が「注意しない」で韓国が「注意する」のですが……。

 似て非なる国、韓国。この違いがどこから来るのか、これからもつぶさに観察して行こうと思います。


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2002年6月7日(金) パブ通いの日々
 さて、今週からステイ先に加わったドイツ人女性(25歳)のハウスメイトですが、イイ感じでやってます。よく笑うし愛想も良いし陽気なのに、基本的には静かという非常に馴染みやすい彼女がハウスメイトで本当に良かったと既に思っている日々です。
 ただ私にしてみれば英語の出来る彼女がハウスメイトで非常に良かったと思えるのですが、彼女にしてみれば英語の出来ない私がハウスメイトで気の毒……という感が否めませんが……。

 それはともかく、以前うっかり夜中までパブにいて、人っ子独りいないような真っ暗な夜道を独りで帰らなければならないという恐い事態に陥ったため、その後他の生徒がパブに集まっても全く参加していなかったのですが、今は念願の(?)ハウスメイトがいるため気軽にパブに行くことが出来るようになり、昨日、今日とパブに通っています。

 下戸で飲み会嫌いの私がパブに通っていると言うと、親しい友人がこんなメールを送ってきました。
パブとか、どう? 日本での飲み会とは全然違ったりするのかな?
(そうであることを願うけど)
それに、お酒飲めなくても大丈夫なの?
なんか想像もつかないなー。
周りはみんな英語でしょ?(当たり前だけど)
それなりに、雰囲気とかで楽しめるものなの?

 私が飲み会が嫌いなのは、酒を飲んだ勢いで普段出来ないようなことをしたり、人格を変えたりする人を醜悪に感じるからであって、お酒を飲んでいる人が嫌いな訳ではありません。なので基本的にアルコールに悪酔いすることのない外人がお酒を飲んでいても、日本でのいわゆる飲み会のような雰囲気にはならず、その点に関しては全く問題ありません。目的はあくまでも談話であり、感覚的にはお茶を飲んでいるようなものですから。
 また、お酒が飲めなくてもどこのパブにもジュースが用意されているので、私なんぞは大抵は何も注文しないかジュースを飲んでいます。ちなみに注文を聞きに回る店員はおらずセルフサービスなので、何も頼まなくてもパブに居座ることが出来ます。

 最大の問題である「楽しいか、楽しくないか」という点に関しては、私の正直な感想を述べますと、「もしも彼らが同内容のことを日本語で話していたら、95%楽しくない」という感じです。これは「彼らの話が面白くない」ということではなく、お互いの英語力(時には単に私のヒアリング力)の問題で本当に簡単で表面的な話しか出来ないので、表現を選ばずズバリ言うなら「どうでもない話をしている」からなのです。
 それでもパブに行くとそれなりに楽しいのは、何よりもヒアリングとスピーキングの勉強になるということと、タカが知れている素朴な会話の中からも国民性が伺えて面白いということがあるからです。話自体はどうでもなくても、話し方やちょっとした仕草の中に見え隠れするモノが個性なのか国民性なのかを見極めるのは非常に面白く興味深いことですし、そうした中から国籍を越えて個性だけが浮かび上がり、「あ……この人良いなぁ。好きだなぁ」と思える人を見付けるのはとても楽しいことです。こういう発見があったとき、「人の好き嫌いには国籍なんて関係ないんだなぁ」と腹の底から思えるからです。

 そんな訳で、そうそう毎晩パブに行きたいとは思いませんが、1週間に1〜2回程度なら参加するのも悪くないと思うに至っています。今のところは。

【追記】
 しかし面白いのが、特定の国籍間では会話が非常に難しいということです。具体的には、多くの日本人にとってスペイン人の英語は本当に判り難く、スペイン人にとっても日本人の英語は判り難いようです。
 本日も、スペイン人が言った「Canada」が何度繰り返されても聞き取れず、スペルを書いて貰ってようやく分かった直後に、今度は私が「quite defference」と言ってもスペイン人には伝わらず、何度繰り返しても分かって貰えなかったためにスペルを書いたらすぐに分かって貰えた、ということがありました。
 逆に韓国人は表現法やベタな発音が似ているためか、日本人の英語をよく理解してくれ、日本人にとっても彼らの英語は(訛りは強いのですが)分かりやすいという感じです。また、ドイツ人にとってはスペイン人の訛りよりも日本人の訛りの方が聞き取りにくいようです。


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2002年6月8日(土) ブラーニーに行く
 ハウスメイトのティナと韓国人のクラスメイトと3人で城が名所のブラーニーという小さな村に行って参りました。ブラーニー城が見所の小さな村ですが、観光客が多く、見所である城の敷地も広く、私的には今週初めのバンク・ホリデーに訪れたコーヴよりも気に入っています。今回は1人ではなく友人と共に訪れたため観光と同時に英会話の訓練も出来ましたし、まさに一石二鳥でした。
 しかし会話のレベルが同程度の韓国人の子と「もっと深い話が出来たら面白いのにね……」と語り合い、皆同じような悩みを抱えているんだなぁと再確認。
 とりあえず簡易写真集(3)〜Cork編に写真をアップしました。


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2002年6月9日(日) 恵まれているらしい
 非常に嬉しいことに、ハウスメイトのティナは精力的に出歩くタイプではなく、休日など彼女も遅く起きるので私も充分な朝寝坊ができ、更にラッキーなことには以前から心配していた「休日も出歩かなければならない」という事態をも回避できています。
 ホストマザーやホストファーザーは学生を独り家に残すのが少々気に掛かるようですが、ティナと私の2人で留守番をする分にはOKと言った感じで、今日は天気も悪かったため2人とも家に居座り、私の部屋でインド映画のDVDを観ていました。

 実は先週末、彼女が私の部屋に遊びに来た時に私の持ってきたインド映画DVDに興味を示したので、一番のお気に入りのダンスシーンだけをピックアップして見せたところ、「続きも観たい」とのことで私があらすじを説明しつつ結局最後まで一緒にその映画を観てしまった、ということがありました。その時は私が熱心に「このシーンが……っ!」「この俳優が……っ!」と説明するので、気を遣って興味を持っている素振りをしてくれたのかなぁ……と思っていたのですが、今日になってティナの方から「他にもインド映画のDVDを持ってないの?」と聞いてくれたため、「持ってる持ってる、4枚持ってるッ!」ということで、小さなモニターを前に雁首揃えて映画に魅入っていました。

 DVDを観ている間もお喋りは続いており、デタラメながらも喋るスピードはここに来た当初よりも速くなっているのが実感として分かります。ただ私の場合スタートラインが非常に低いため、漸く平均以下レベルに到達したという感はありますが……。
 しかし、ハウスメイトやホストファミリーに恵まれず、全くコミュニケーションを取っていないという留学生もいる中で、私はかなり恵まれた環境にいるのだと客観的にも思います。毎日夕食は話をしながら1時間かけてゆっくり取るし、何かと会話のチャンスがあるし、今日も夜遅くまでホストファミリーとティナと一緒にテレビを観たりと、どうやら会話を伸ばすのに非常に適した環境にいるようです。

 問題は、この環境にいても英語力が伸びなかった場合、言い訳無用、責任はすべて自分にあると考えるのが妥当だという厳しい現実だけです。


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2002年6月10日(月) 私的記念日
 本日の授業で様々な形容詞を学んでいるとき、先生がこんな出題をしました。
「クラスのメンバー6人の中から1人選んで、その人を表す形容詞を3つ挙げてみて。後でその形容詞だけを言って、誰を指しているのか残りの皆で当ててみましょう」
 ふむ、いまだクラスにいまいち馴染んでいない私としては少々困った質問です。が、私は余り親しいと言うわけではないけれど兼ねてから「この子、好きだなぁ」と思っていたベネズエラ人の女の子、アニーの形容詞を挙げることにしました。「cute」「boyish」「intelligent」――本当に、可愛くて親しみやすくて誰からも好かれる感じの子で、当然そう思っているのは私だけではなく、なんと彼女を除いた5人中4人が彼女に対する形容詞を挙げていました。
 「vibrant」「genuine」「beautiful」、「energetic」「friendly」「sporty」、「competitive」「talkative」「exciting」――以上の形容詞から多角的に観た彼女の性質が窺い知れることでしょう。もちろん顔も可愛いのですが特に表面的に美人というのではなく、仕草や表情が非常に魅力的で可愛くて、エネルギッシュで陽気でお喋りなのですが、しかしうるさい訳ではなくて……。
 このように熱心に彼女の性質を書き連ねることで何が分かるのかと言うと、単に私が彼女を好きということがよーく分かるのだと思いますが。

 さて、このように大人気の彼女ですが、ではアニーは誰をどのように形容したのかしら、と当然興味津々でその回答を見守ります。
「sweet」「cheerful」「responsible」
 ははーん、分かりました。特に1番目と2番目の形容詞で。彼女と仲良しの韓国人の女の子でしょう、きっと。
 クラス滞在暦が1番短い私がそう思うのですから当然、先生も他の生徒も「ああ、彼女ね」という感じでアニーに確認すると……
「No. It's To-ko.」
 正直言って、恐らく先生を含むクラス全員が驚いたと思いますし、更に言うなら一番驚いていたのは私だと思います。いや、そのくらい意外だったもので……。
 冷静に考えるならば、気持ちの優しい彼女のことですから最も当り障りのない私を選んだのだろうと思いますが、それでも嬉しかったのです。かなり嬉しかったのです。めっちゃ嬉しかったのです。そらもう嬉しかったのです。思わず手帳に「今日の特記すべき出来事」として記録してしまうほどに。だってもう僕トキめいたもん。3分間ほど。

 ――はい、本日の日記で注目すべき点は、「何だかんだ言っても私もそろそろクラスに馴染んでいるのよ」という気分は上々的報告ではなく、この程度のささやかな出来事が今までの1ヶ月弱の留学生活の中で一番嬉しかったことに相当するという人間関係における少々厳しい現実でしょう。
 まぁこんなことを公開日記に書いている裏側で、Web上には到底書けないことが色々と起こっている訳ですが、それでも平均以上に上手くやっているとは思います。あくまでも平均ギリギリより少々上というレベルだと思いますが。


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2002年6月11日(火) 2度目の正直
 先日5日のワールド・カップ、アイルランド対ドイツ戦の際、アイルランドの勝利を信じていなかったために彼らの歓喜する瞬間をカメラに捕らえ損ねたワタクシですが、本日のアイルランド対サウジアラビア戦では私がパブを訪れた時には既に1対0でアイルランドがリードしており、今度こそ決定的瞬間を収められそうな気配が濃厚だったため、ポケットにカメラを忍ばせ満員御礼のパブにぎゅうぎゅうと入って行きます。

 
パブの入口と熱気にむせ返る満員御礼の店内

 いつもなら確実に座れる程度にしか混まないパブも、アイルランド戦のある日は違います。店内に入るのも一苦労です。
 既に1点リードしているものの、1点では心許ないよなぁ……と思いつつも、試合は終始アイルランドが優位な展開で、アイルランドは果敢にゴールを狙い、その度にパブの空気が揺れます。ゴールを狙っては外し、外しては狙い続けるアイルランド。そして何度目かの攻撃で、彼らは正真正銘勝利への確実なステップである2点目を決めたのであります。

 
アイルランドが2点目のゴールを決めた瞬間

 ゴールを決めた瞬間のこの興奮! 少しでも伝われば。


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2002年6月11日(火)A 憧れのアイリッシュダンス
 さて、現時点で数回パブに行っていますが、兼ねてから憧れていたトラディショナル・ミュージックの流れるパブや、アイリッシュダンスを披露してくれるパブにはなかなか行くチャンスがありません。多くの学生は仲間とお喋りをするためにパブに集まるので、私のように特に音楽に拘っておらず、シティセンターから少々離れたローカルパブに集まることが多いのです。これは一体どういうことかと言うと、シティセンターにあるパブではバンドの生演奏やアイリッシュダンスなど定期的な催しがあるのですが、ローカルパブには通常そういった催しがなく、ごくたまにBGMが流れている程度なので、要するにいわゆる私の妄想の枠内に属すアイリッシュ・パブは満喫できていないということなのです。

 そんな中、本日ようやく「毎週火曜日にアイリッシュダンスを披露するパブ」に行くチャンスが巡ってきたため、そらもうこの機会を逃す訳がありません。何時から始まるのか分からなかったので、早く行って早く帰りたい、ということもあり、20時にパブに集まることにしました。
 しかし実際20時にパブに集まってみると、この日はワールド・カップでアイルランドの第2ステップ進出が決定したために店内が非常に混み合い、座る場所が見付かりません。勝手が分からずぼうっと店内に居座るも、そもそもアイリッシュダンスはいつになったら見られるの?という基本的な疑問にぶち当たり、バーテンさんに聞いてみると、なんと21時30分からだと言うではありませんか。
 ………………1時間30分後かぁ……。
 でもまぁもうここまで来てしまっては引き返す訳にもいかず、雑談をしつつその時を待ちます。

 21時30分――何となくバンドが演奏する場所などに動きがあり、着実に用意が進んでいることは分かるのですが、しかし当然のように始まりません。そして私もそんなことは承知しています。アイリッシュが21時30分と言うからには22時始まりと考えてほぼ間違いないでしょう。ここはアイルランドなのですから。

 22時――漸く、本当に漸く生演奏を担当するバンドに動きがあり、恐らくここでダンスを披露してくれるのねーという板がセッティングされます。(※アイリッシュダンスはタップダンスに似たステップ重視のダンスのため、踏み鳴らすための板が必要となるのです)
 しかし板が小さい……これ、何人用の板なのでしょう? 2人用? 3人用? 何だかもっと大々的なものを期待していたのですが、どうやら私は勘違いしていたようです。

 22時15分――アイリッシュダンスの衣装をまとった女性が1人、マイクを持って簡単な挨拶を済ませると、「ダンスをしたい人、中央に集まってください」とおもむろに言い出すではありませんか。
 ――え? アイリッシュダンスって……プロじゃなくてアマチュア? アイリッシュダンスの披露をしてくれるんじゃなくて、単なるアマチュア体験会?
 少々戸惑って周囲の常連らしき人に確認すると、「今喋ってる人がプロで、一通り皆でダンスをしたら彼女が本格的なダンスを見せてくれるよ」とのことでした。ふぅ。頼むよ、本当に。そのためにここまで来たんだから。


一般人がアイリッシュダンスを習う図

 いやー、なんだかとっても楽しそうでしたよ。私は今回はカメラマンに徹していたため参加しませんでしたが、次回は参加したいものです。
 こういう「ほのぼのと他人同士がわっはっは」という場面が日々の生活の中に非常に多いというのは、アイルランドの大きな魅力でしょう。(アイルランドに限らないことでしょうが、私が他の国を知らないので……)
 もしかしたら日本でも田舎に行けばこういう雰囲気があるのかもしれませんが、恐らく日本の田舎では部外者に対する警戒が少々強いのではないかと思います。この開けた雰囲気の有無は「観光地かどうか」というのも大きな要因だとは思いますが、何にしても「Everybody O.K.」という雰囲気が強く、人々も気軽に輪に入って素朴に楽しんでいる様を見ると「人間的だなぁ……」と感心するのでした。

 さて、このエクスカーションが終わった後にいよいよ目玉のプロによるアイリッシュダンスが……っ!と思ってうずうずしながらその時を待つのですが、このエクスカーションが長い長い。いや、これはこれで楽しいのですが、出来ればプロのアイリッシュダンスを間近で見てみたいんですけど……。

 22時40分――ようやくエクスカーションのひと段落が着いて、中央で踊っていた客たちが自分の席に戻ると、今度は今までアイリッシュダンスを教えていたインストラクターが中央の板に進み出ます。しかし彼女の後に続く人は見当たりません。
 ――え? たった1人? 少々落胆しつつも、それでも充分に念願のアイリッシュダンスです。
 ああ! いよいよ始まるのね! 本格的なアイリッシュダンスがっ!!
 カメラを構え主役を見ると、場所が悪くて彼女の背中しか見えません……。正面から見たいと思っても混雑していて正面に回ることが出来ず、強引に正面に回るべきかなぁ……と思っている間に音楽が始まり、待ちに待ったアイリッシュダンスが始まってしまいました。


悲願のプロによる本格的なアイリッシュダンス

 シャープに鳴り響くステップの音。ああ、待ち侘びていたのはコレよコレ。目の前2メートルの位置でアイリッシュダンスを見られるなんて!
 ………………でも、後ろ姿。
 何だか恐らく私は今、重大なミステイクを犯そうとしているのでは……。こんなチャンスにどうして大人しく彼女の後ろ姿を見守っているの? 多少図々しくても正面に回るべきなんじゃないの? 心の中で葛藤している間にも時間は刻々と過ぎて行きます。ああっ! もうっ!
 私がいかにも「ど、どうしよう」という感じでうろうろしていると、見るに見かねたらしい仲間の1人が「俺について来い!」とばかりに人を掻き分け正面への道を作ってくれます。うう、なんてイイ奴。やっぱゲルマン系の男は頼りになる。(←ただいま混乱中)
 しかしそんな彼の気遣いも虚しく、私が正面に辿り着いてカメラを構えたと同時にプロによる本格的なアイリッシュダンスは幕を閉じたのであります。しばらく事態が掴めずに、カメラを構えたまま「? それから?」と彼女が再び踊りだすのを待ちますが、何だかもう彼女リラックスし始めちゃってるし。
 ――え? もしかしておしまい? マジっすか?! たった2分しか経ってないんですけど……。

 こうして、私の兼ねてからの願いだった「パブでアイリッシュダンスを観る」という項目は、「2時間40分待って、2分間観た」というどこか教訓めいた結果に終わったのであります。よく母が、私が夕食を食べ終えたときに「作るのは1時間以上、でも食べるのは一瞬ね……」と疲れたように言っていたのをふと思い出してしまった私は、少々ホームシックに罹っているのでしょうか? コレ、ホームシック換算してイイ感情なのかなぁ……。

 様々な釈然としない思いを抱えたまま、終バスに乗るために夜のシティセンターを直走るのでした。


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2002年6月12日(水) 伝統音楽コンサート
 昨日も書きましたが、私は兼ねてからトラディショナル・ミュージックの生演奏を聞きたいと思っていました。本当は1ヶ月ほど前にシティセンターにあるパブでそれらしきものを体験済みなのですが、そのときは完全なアマチュアによる練習を兼ねた演奏で、出来ればプロによる演奏を聞いてみたいとずっと思い続けていました。
 そして本日、学校のソーシャル・プログラムがアイリッシュ・トラディショナル・ミュージックのコンサートということで、「まさしく for me!」という感じで勢い込んで参加することにしました。先生が簡単に内容を説明して、「では参加したい人は手を挙げて」というので手を挙げようとすると、隣に座っていた韓国人の男の子がひっそりと言うのです。
「No, you should not join it. I have ever joined it. But it's very very boring. Veeeeeeery boring.」
 …………そ、そんなぁ……。そりゃ伝統音楽なんて若い君にはつまらないかもしれないけど、渋い(?)私はきっと楽しめるよ。
鷹瀬 「But I'll join it. I want to listen to the Irish traditional music.」
彼 「Why? Why don't you believe me?」
鷹瀬 「Sorry. I'm stubborn.」
 早速今日覚えたばかりの形容詞「stubborn(=頑固な、強情な)」を使う機会を得てすっきりした気分で手を挙げ、本日のソーシャル・プログラムに臨みます。
 参加する生徒の名前を書き終えた先生が、コンサート会場や時間などの詳細を言っていましたが、急いでいたためか少々速くて完全に理解できず、キーワードしか拾えませんでした。しかし英語ペラペラのティナも参加するため、彼女について行けばどうにかなるだろうと思って、50%程度の理解でも聞き直そうとはせず、そのまま遣り過ごしていました。
先生 「今日の夜9時にシティホールのロビーに集合ね。入場料は7ユーロ(約820円)。チケットは各自で事前に買って、9時になったら2階に上がってきてちょうだい。多分私が先に行って皆の分の席を確保しておくから」
 恐らくこんなことを言っていたのだと思います。
 授業が終わり、ティナに「チケットって事前購入って言ってたよね?」と確認すると、彼女も「うん、多分そう言ってたよ」と言うので、自分の理解に間違いがないことに安心して、2人でシティホールにチケットを購入しに行くことにしました。

 シティホールに辿り着き、改めてその大きさにウットリします。1000人くらい収容できるのかしら? ここで伝統音楽のコンサートかぁ……。
 よく、日本では1万円程度するオペラがフランスなどでは800円程度で観ることが出来る、という話を聞きますが、これがまさしくそんな感じなんだろうなぁ、と。アイリッシュ伝統音楽も、日本でのコンサートは7〜8000円程度するのではないかと。それが本場では7ユーロ! これが現地にいる醍醐味だよねぇ、と。


シティホール

 少々酔っ払った感覚でウキウキしながら前売チケットを購入すべくシティホールに足を踏み入れ、「大きなホールだねぇ」と私がウットリしながら言うと、その傍らでティナが「正装とかしなくていいのかな?」と心配しています。
鷹瀬 「大丈夫でしょ。ほとんどの留学生がそんな立派な服なんて持ってきてないだろうし、正装が必要なコンサートをソーシャル・プログラムになんかしないよ、きっと」
ティナ 「そっか。じゃあ早くチケット買っちゃおう。チケット買うのってロビーって言ってたっけ? なんか私よく聞いてなかったんだけど……」
鷹瀬 「え……私もティナが聞いてると思ってちゃんと聞いてなかったんだけど……」
ティナ 「あ、じゃああの受付の人に聞いてみるね」
 しょせん話を聞いていなくても、問題の解決能力だって彼女の方が断然高い訳で、ティナはあっさりと受付の人にチケット売場を尋ねます。
ティナ 「すみません、今晩のトラディショナル・ミュージックのコンサートのチケットを購入したいのですが……」
受付 「コンサート? 今晩コンサートなんかないよ?」
ティナ 「え? 今晩9時からシティホールの2階でコンサートがあるって聞いたんですけど……」
受付 「ふむ? ちょっと確認してみるね。……ふーむ、やっぱり今晩コンサートなんかないよ」
ティナ 「おかしいな……。学校で、今晩シティホールの2階でコンサートがあるから、事前にチケットを購入しておくようにって言われたんですけど……」
受付 「オペラハウスの間違いじゃないのかい? オペラハウスの場所、知ってるかい? 知ってるならちょっとそっちに行って尋ねてごらん」
 ……あれ?
 私たちは釈然としないままシティホールを出ます。
鷹瀬 「先生って何て言ってたの? 私、よく聞き取れなかったから間違って理解してたのかも。『今晩9時にシティホールのロビーに集合。事前にチケットを購入して、2階に上がってくること』って聞いたと思ったんだけど……」
ティナ 「あ、うん。私もそうだと思ってたんだけど……」
鷹瀬 「オペラハウスとは言ってなかったよねぇ……?」
ティナ 「うーん……でも取り敢えずオペラハウスの方に行ってみようか……」
 そんなことを話しながらシティホール前の横断歩道を渡ると、ふと視界にキーワードちっくな文字が飛び込んで来ました。


シティホール前にあるパブ The Lobby


看板拡大図

鷹瀬 「……………………ティナ……先生の言ってた『ロビー』ってアレのことじゃない……?」
ティナ 「…………『シティホールのロビー』じゃなくて、『シティホールの近くにあるロビーという名前のパブ』って言ってたのかも……」
 パブに近寄ってみると、入口に本日21時から SIOC というバンドによるコンサートのポスターが貼ってあるではありませんか。入場料は7ユーロ。もう間違いありません。
 中に入ってチケットについて尋ねると、開演前に購入すれば良いとのこと。ちなみにめちゃ小さいパブで、「1000人?」とか「正装するの?」とかはしゃいでいた私たちってば馬鹿みたいです……。「ここの2階でコンサートかぁ……7ユーロ……高くない?」とティナと2人でガックリ来ていました。
 正直、キャンセルしたい気持ちが強かったのですが、まぁもうここまで来てしまっては引き返すよりは突っ走れ!とのことで、義理堅い日本人とドイツ人コンビの私たちは当然のように21時ジャストにパブに現れたのであります。

 始まりは21時30分とのことでしたが、昨日の今日です。どうせ定刻通りには始まるまいと構えていると、案の定定刻通りには始まらず、実際の開演時間は22時でした。勝手知ったる常連客が22時間際に集まるため、開演時間がどんどん遅くなって行くのかもしれません……。
 開場時刻である21時にはガラガラだったパブも開演間際には立ち見客が出るほど混み合っていて、何となく生演奏ならではの熱気に包まれます。


The Lobby にて伝統音楽ライブ by SIOC

 さて、実際参加してみて「来て良かったなぁ……」としみじみ思いました。リズムに合わせてお客さんが手拍子をしたり床を踏み鳴らしたり叫んだり、聴覚視覚だけではなく空気の揺れや振動も相俟って音楽を楽しむことができ、エキサイティングなひとときでした。
 こういうライブが街のあちこちで毎晩のように行われ、日常生活の中に音楽が溶け込んでいる彼らは、ただ音楽を聴くだけでなく自分たちも掛け声をかけたり踊り出したりして気軽に参加して行くので、観ていて本当に楽しくてシンプルなことに過ぎないのに幸せな気分に浸れます。生活を楽しむ、人生を楽しむというのはこんなに簡単にできることなのになぁ……と、日本での荒んだ生活を思い出し、「この違いってナニ?」と心底不思議に思うのです。
 日本で幸せに暮らしている方も大勢いらっしゃるでしょうし、これはあくまでも私のケースに過ぎませんが、モノが溢れて便利なのに幸福感の乏しい忙しない日本での生活……。私は断然今の生活の方が好きだなぁ……。

 とにもかくにも、アンコールに次ぐアンコールで、終演時間は0時過ぎ。非常に良い経験をしました。

【追記】
 翌日、学校で「昨日のコンサートはどうだった? 観客は何人くらいだったの?」と尋ねられ、「とーっても良かった! 観客は50人くらいかなぁ」と答えると、「Are you sure? Only 50 people?!」と大変驚かれました。私たちだけでなく、やはり皆シティホールでコンサートがあると思っていたようです。良かった……私のヒアリング能力が著しく低い訳ではなさそうで……。


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2002年6月13日(木) 国民性と常識と
 3人の留学生が滞在している家にホームステイしている日本人の女の子から聞いた、個人的に非常にウケたお話を……。
鷹瀬 「そう言えば今って誰が一緒の家にいるの? マイクはもう帰っちゃったっけ?」
彼女 「うん、マイクはもう帰って、今はねーフランス人のおじさんとドイツ人の男の子が一緒。でも彼らは違う学校だよ」
鷹瀬 「ああ、そうなんだ。でも良いねぇ、頻繁に入れ替わりがあって。違う国籍の人と一緒に生活してると情報とかも色々入ってこない?」
彼女 「ううん。ちょっと前までは良かったけど、今はもう最低だよ。このフランス人の男が最低でさー」
鷹瀬 「? 何かあったの?」
彼女 「トイレ流さないんだよね
鷹瀬 「は? ああ、でもこっちの人って夜とかだと水が流れる音を気にして流さないこととかあるじゃん。ウチもそういうことあるよ」
彼女 「違うの。夜とか関係なく………………大きい方も流さないの
鷹瀬 「ええ?! マジっすか?! え? 何で? それって文化?! 国民性?!」
彼女 「ああ……そうか……そうなのかなぁ……。いやさ、アイツが流さなくなったのって理由があるのよ」
鷹瀬 「大便流さない理由って一体どんな理由よ……」
彼女 「ちょっと前にね、アイツ、トイレ詰まらせて大変なことになっちゃった事件があってさ。水が溢れちゃってバスルームが糞尿まみれになっちゃったことがあったのよ……。それ以来、ヤツ絶対流さなくなっちゃって……」
鷹瀬 「じゃあナニ、大きい方でもそのまま放置しておくの?! 臭くない?!」
彼女 「うん。もう最近では毎回便器の蓋閉じたまま一度流してから使ってるよ」
鷹瀬 「それでもしこっちが流して詰まったらこっちの責任?!」
彼女 「……そうかも。でも、フランス人ってそうなのかなぁ。これが国民性の違いってヤツ?
 最初は流していたと言うのだから違うでしょう。ある意味カルチャー・ショックには違いありませんが、水洗トイレでないならいざ知らず、水洗トイレがある国では大便を流すのは世界常識と考えてイイんじゃないでしょうか?
 いや、本当に国民性と個性の差異を見分けるのは非常に困難です……。


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2002年6月14日(金) 人生いろいろ
 後で書きます。

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2002年6月15日(土) キンセールに行く
 コークからバスで約50分の郊外にある港町、キンセールに行って参りました。今までコークからバスや電車で30分程度の郊外のミドルトン、コーヴ、ブラーニーと観光してきて、このキンセールだけは少々遠いため後回しにしていましたが、誰に聞いても「キンセールが一番良い」と言うのでいつ行こうかとその時を楽しみにしていました。
 そして昨日、急遽「明日キンセールに行こうと思っているんだけど、どう?」と誘われ、少々躊躇いましたが私に残された時間も少ないため、参加させてもらうことにしました。
 少々躊躇った理由は天気です。金曜日は天気が悪く、この天気が土曜日まで続くようなら行きたくないなぁ……と考えていたのですが、アイルランドの天気は非常に変わり易く、朝大雨でも昼には晴れというようなことは日常茶飯事なので、こんなことで諦めていてはどこにも出掛けることができなくなってしまいます。
 腹を決めた一方で、「キンセールは本当に素晴らしいところだけれど、天気によるね」という非常に冷静な意見を言っていたスペイン人男性の言葉が心に引っ掛かってもいました。

 そして当日の朝……文学的に表現するならば、「今にも泣き出しそうな曇り空」。ま、まぁそれでも天気は本当に信じられないほどの速さでコロコロ変わるので、一条の希望を見出しつつ3人でキンセールに向かいます。

 さて、実際港町キンセールに着いてみると、曇り空のため見所である海が全く映えず、強風に荒れる港を前に3人とも押し黙ってしまいました。
「…………Who said that Kinsale was really nice?」
 私たちのその時の心情を明確に表したオーストリア人青年の不穏な一言により、私たちのリアリー・バッドなキンセール観光が幕を開きました。

 取り敢えずインフォメーションセンターに赴き、キンセールの見所を探ります。おおよそ20分以内で端から端まで歩けそうな市内に大きな見所が3ヶ所。徒歩40分程度の市内から少々離れた場所にある大きな見所が1ヶ所。取り敢えずこの少々離れた大きな見所から観ようということで、3人はアップダウンを含む道をひたすらに歩きます。
 しばらく歩いて市内から離れたところで市街地を振り返ると、なるほどこれで青空が広がっていれば青い空に青い海、白い雲にカラフルな家と非常に美しい景観だろうと想像できる風景が広がっていました。しかし生憎の曇り空。海に面した港町のせいか風が強い強い。しかも傘を差さなくてもいい程度の小降りではありますが、雨まで降り始めてきました……。

 目的地であるチャールズ・フォートという要塞の遺跡に辿り着く頃には、雨脚が少々強まっていました。本来なら写真を撮るであろう場面でも、カメラを出すのが億劫になるほどの降りになることもあり、3人とも強風に煽られながら大雑把に敷地内を観光して周ります。
 もしも天気が良かったら恐らく倍の時間を掛けて観光したであろう結構な見所でしたが、雨風に晒された3人は早々に「じゃ、帰ろっか」と遺跡を後にします。

 長い長い帰り道の途中にもどんどん雨脚は強まっていきます。私たち3人はびしょ濡れになりながら来た道をひたすら引き返します。
 その道中、私ともう1人の日本人の女の子で「ヒッチハイクとかしたいよねー」などと冗談で言っていると、オーストリア人青年が「OK、やってみよう」と後ろから来た車に親指を立てて見せます。
 ――え? マジでヒッチハイクするつもり?
 車は当然止まらず、「アハハ駄目だったね」という感じで再び歩き出します。しかし彼はそれ以後、車が来る度に親指を立て、ヒッチハイクに挑んでいるではありませんか。

 よく旅先でのこういった行動を冒険心や武勇伝のように誇らしく感じる人がいますが、私はそうは思いません。もちろん旅先での触れ合いや親切な人との出会いは素晴らしいことだと思いますが、それでも見知らぬ他人に自分の身の安全を預けるような真似は、出来るだけ避けるべきだと思っています。
 しかし今回は強そうな男性も一緒だし、いざとなったら彼に任せて私たちは逃げよう……と思いつつも、止まらない車に正直ほっとして歩き続けます。
 5台目の車が通り過ぎても彼はまだヒッチハイクに挑戦し続けています。

 毎回内容は違えど以前にも何度か思ったことがあるのですが、ヨーロッパ人(具体的にはフランス人2名とドイツ人1名と今回のオーストリア人の彼)の諦めの悪さというか果敢に挑戦する様というか、とにかく彼らの物事に対する態度や目的意識の静かな強さには、時々「コレって文化の違いかなぁ」と思うほど強い印象を受けることがあります。何気ない場面なのですが、「やるぞーっ!」というような力んだ雰囲気ではなく、ごくごく自然に静かに、しかし目的を達成するまで諦めないのです。
 今回のヒッチハイクというお題目に関しては、黙々とやる以外にどんなやり方があるんじゃい、という感じもしますし、過去の例もたまたまかもしれませんが、何となく強く「日本人にはない気質だな……」と思いました。日本人は勢い込んでやるか、諦めるかの両極端のどちらかのパターンが非常に多い気がします。もちろん個性もありますが、傾向の問題としての話で。

 さて、6台目の車にも見放された彼は、おもむろに「よし、次は君がやってみて」ともう1人の日本人の女の子にバトンタッチします。
 これで止まったらちょっと笑えるな……と思った早々1発で車が止まり、一同大喜びっ! ヒッチハイクに成功した車は、女性ドライバーとその子供という非常に理想的なメンバー構成で、安心しながら市内に戻ることができました。
 散々お礼を言って車を降りる頃には雨もどしゃ降りに昇格しており、ニアリー嵐状態です。そんな訳で市内の観光はロクにしないまま、皆が薦める港町キンセールを後にしたのであります。

 ――以上のような経緯でキンセール観光をしたため、写真らしい写真は序盤のチャールズ・フォート分しかありませんが、取り敢えず簡易写真集(3)〜Cork編に写真をアップしました。



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2002年6月16日(日) ワールド・カップの幕引き
 後で書きます。


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2002年6月17日(月) 日本食の美学
 以前にも書きましたが、私のホームステイ先は心底当たりのご家庭で、食事もとても美味しいです。しかし本当に正直に話すならば、日本食とこちらの食事が並んでいて私がこちらの食事を選ぶことは恐らく一生涯ないでしょう。
 フライドポテト、マッシュポテト、ベイクドポテト……毎日形を変えて出現するポテトも大好きです。と言うか、ポテトが嫌いな人にとってアイルランドは滞在するには厳しい国かもなぁ……と思ってしまうくらい、ポテト三昧の日々です。それはいい、私はポテトが大好きなので問題ない。問題は油を使わない料理がない、もしくは非常に稀、ということです。

 ご飯、味噌汁、お新香、焼き魚、煮物……考えてみると、日本食は油を使わないでも料理が成り立つんですよね……。これって凄いことだと、こちらに来てしみじみ思うようになりました。こちらでは油を使わない料理を作ることは不可能なのかも……と思うくらい、毎日必ず油を使った食事が出ます。そしてすべてが柔らかいのです。硬い食べ物が好きな私としては、これは意外に厳しい食生活なのです。
 とにかく不思議なほどすべてが柔らかく、歯ごたえという英語は存在しないのでは、と思うほど根底からその存在が伺えません。添え物の野菜は必ずくたくたに煮てあり、シャキシャキという食感には今のところお目にかかれていません。ボリボリ、ゴリゴリ、ガリガリ、バリバリという濁音が混ざる食感など、夢のまた夢です。
 また、味がとてもシンプルです。ポテトはどこまで行ってもポテトの味がしますし、肉は肉の味が、ブロッコリーはブロッコリーの味が、カリフラワーはカリフラワーの味が、マッシュルームはマッシュルームの味がします。視覚的に料理を捉えた瞬間にその味を正確に予想でき、そこには驚きも新鮮さもありません。

 今まで普通に日本食を食べていましたが、ヘルシーな素材にヘルシーな調理法、様々な食感に複雑な味。多国籍の料理を上手くアレンジしてヘルシーに仕上げるのもお手のもの。よく欧米人(※フランス人を除く)が日本食を食べて「美味しい!」とか言っているのを聞くと、「えー、君にこの味の深みが解るのー?」とか失礼な疑いをしばしば抱いていますが、そのくらいレベルが違うのです。なんてったって、アイルランドにいると日清のカップ麺が複雑な味に感じるくらいですしね……。

 この食文化のレベルの高さは心底誇るべき文化だと思います。日本食よ、永遠に……。


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2002年6月18日(火) 頑張れ韓国
 後で書くでしょう。


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2002年6月19日(水) 携帯電話購入
 半年の滞在であれば絶対に購入しなかったであろう携帯電話ですが、1年滞在でしかも各地を転々とする身としては、様々な予約や書類記述の際に一定の連絡先が提示できず、この際だからと言うことで少々値は張りましたが購入することにしました。なるべく安いモノをと思って購入したプリペイド携帯ですら定価129ユーロ。重くてゴロンとしてる可愛げのない携帯電話――ハイテクの国から来た者にしてみれば「こんなんで……」という渋い思いに苛まれますが、どうせ途中で必要になるのなら、定価には60ユーロ分の通話料が含まれるため、これを使い切る予定が恐らくない私としては早く購入した方が良さそうだと考え、結局購入するに至ったという経緯です。


負けてもらって112.5ユーロで購入した133gの携帯電話
(約13,200円/初回60ユーロ分の通話料を含む)
Talk time:2h30min−4h30min
Standby time:55h−260h
通話料金(1分間):昼63c、夜19c、土日祝13c

 ……しっかし高価な代物です。通話料も高いし……。恐らく日本にいるとき同様、最低限の使用しかしないでしょう。

 そうそう、追記として電話代の話を。こちらは電話代が何気に高いです。公衆電話の初回料金は40セント(約47円)で、10秒話そうと1分話そうとこの料金です。しかもお釣りが出てこないシステムなので、ウッカリ多めに入れてしまうと、それはイコール募金ということになります。当初このことに気付かず、多めに入れてしまった小銭がまったく戻ってこないことに驚きました……。
 公衆電話が上記のような感じなので、場合によっては携帯を使用する方が安く上がるようです。携帯からであれば、アイルランド国内のどこから掛けても同一料金なので……。日本は物価が高いと思い込んでいましたが、どうしてどうして、土地以外はそうでもないのかもしれません。
 ――と言うか、アイルランドでは少なくとも食品や文具、日用品、書籍など決して安くありません。コンタクトの保存液オプティフリーは355mlで14ユーロ(約1640円)、大袈裟に言って日本の倍です。私が日本のように安く売っている場所を知らないと言うこともあるのでしょうが、それでも高いんですよね……。
 ここでも節約は最大の課題のようです。


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2002年6月20日(木) 物価のお話
 「日本は物価が高いんだ。アイルランドは日本より安いに決まっている」という固定観念を抱いて渡愛したせいか、現在、様々な場面で「日本より高いじゃん……」と感じショックを受けています。
 さて、本題に入る前に、今回話の中に金額が多く出てきますので最初に現在のユーロを明記しておきます。

1ユーロ≒118円

 まず、食べ物関係から。
 スーパーなどにあるどうでもないサンドイッチが平均3ユーロします。こんな貧相なサンドイッチ、日本ならコンビニで220円程度で買えるな……と思ったら最後、手を出すことが出来なくなりました。
 基本的に昼食はスーパーでの出来合いを購入するよりパブで食べた方が安く上がるケースが多いのでパブを利用しますが、最低でも3ユーロ、平均して4ユーロは覚悟しなければなりません。量や味に関しては本当に店様々なので、一概にこの値段がどうこうとは言えませんが、共通して言えることは「半分の量で半額にしてくれ……」と言うことです。
 パブと勘違いしてレストランに入ってしまったらもう大変です。レストランはサービス料などが含まれるため、最低でも4.5ユーロ、平均して5.5ユーロ程度かかってしまいます。パブより高いからと言ってパブより美味しいとは限らず、店によっては「値段は高いが量は少なく、味は同じ」という最悪の事態に陥ることもあります。

 上記のパブやレストランの料金ですが、これらはすべて最も安いジャンルである「スープ」か「サンドイッチ」の値段であり、その他の料理など味的にたかが知れている、または量が多すぎてトライする気にもなりませんし、飲み物さえ頼まないことが90%以上です。ですから日々の昼食の平均支出は4ユーロということになります。
 4ユーロ=約500円――こう考えると日本での昼食代とそう変わらない気もしますが、日本での昼食はもっとバリエーションがあり、ほかほか弁当の「おかずのみ」を選べば290円で満足できるランチを取ることが出来たのに……と思うと、現在の「毎日サンドイッチで500円」はかなり厳しい選択肢です。

 カロリーや体型を気にするフランス人の女の子は、どのサンドイッチにもマヨネーズがこってり入っていることを嫌い、自分でパンとレタスとトマトとピクルスを購入し、毎日特製サンドイッチを作って来ています。それもいい手だな……と思いつつ、それよりも昼食を抜かす方が手っ取り早いため、私は隔日おきに昼食を抜かすという怠惰な逃げ道に逃げ込みつつあります。
 もともと「お腹が空いている状態が好き、ぐーぐー鳴ったらもう最高!」という病的な性癖の持ち主なので、昼食を抜かすのもそう苦ではありません。しかしこちらに来て明らかに胃が大きくなっているようで、初めは朝食はシリアルだけで胸一杯(※注:お腹ではなく……)という感じだったにも関わらず、今ではシリアルだけでは飽き足らずトーストを1枚加えていると言うのに、昼前にはもうお腹をグーグー鳴らしている毎日です。

 飢餓状態が好き、というのは日本での美味しい夕食を更に美味しく感じるからであり、アイルランドで飢餓状態に陥ると、それは単なる飢餓状態にしかすぎないと気付き始めた今日この頃……。空腹の絶頂時に油っぽいものを食べると胃へのダメージが少々強く、満腹にはなるけれど満足はしないという嫌〜な結果に終わることもしばしばです。しかもアイルランドでの食事を鑑みると野菜が決定的に足りず、どうも身体が酸性になっているような気がしてなりません。また偏った(……というか毎日同じような)食生活のため、適切な栄養が取れているのか不安もあります。
 安くて健康的な食事を……と思っても、今はホストファミリーに滞在しているため根底から食事を変えることは出来ず、私の努力の及ぶ範囲は昼食のみです。そしてその昼食もスープかサンドイッチか抜かすかという寂しい選択肢しかありません。

 ここまで追い詰まってついに本日、昼食はバナナ1本と牛乳という料理から素材へと移行を果たしたのであります。バナナ(6本)1.65ユーロ、牛乳(555ml)0.55ユーロ。……少々日本より安いかな……。その他を見ても食材は恐らく日本よりも多少安い感じはします。

 他にもスコーンや菓子パンなど1〜1.5ユーロ程度で日本と同程度か少々高く、500mlのペットボトル入りのジュースも1〜1.5ユーロ程度で日本より少々高く、何を見ても「同程度」か「少々高い」という感じです。冷凍食品の日本食は、「え? 何これ賄い飯?」という焼きそばと酢豚が混ざったような訳の分からない何かが6ユーロと非常に高く、手が届きません。また「Japanese Rice」として売られている米は明らかにタイ米です。
 アイルランドは島国なので、輸送費などの余分なコストがかかるのかもしれませんが、それにしたって……と魅力のない食料品の前で考え込んでしまう毎日です。

 さて、次に文具ですが、やはり高いです。ペン類に関しては1.5〜2倍の価格と考えて良いでしょう。具体的にはハイブリッドのペンが1.65ユーロでした。買う気が起きません。
 安いものは質が良くありません。悪いとは言いませんが、良くはないのです。現在日本では100円ショップでおおよその文具など揃えることができ、それと比較してしまうので高く感じるのかもしれませんが、それでも何かを買うときに「……高いなぁ」と感じることがしばしばです。
 製品の質については恐らく日本は世界でトップレベルでしょうから、それと比較するのもどうかと思うのですが、それでも不思議なほど質の悪いガムテープには非常に驚かされます。粘着力が弱いのに一度くっつくと剥がれない、でも本当に貼り付いて欲しい時にはアッサリ剥がれるという嫌がらせのような特性を持つガムテープには苛立ちを通り越して感心すらします。そんな小憎たらしいガムテープが約4ユーロもします。

 もちろんガムテープだけではありません。ボールペン……血気盛んな若者なのでしょうか……インク出過ぎです。うんざりしながら出過ぎたインクをノートの切れ端などで拭き取ると、今度は拗ねて全く出て来なくなります。血気盛んな若者かと思いきや、実は気難しい貴婦人のようで扱いに困ります。日本の控えめな筆記用具を、息絶えるまで大事にしようと心に誓うには充分過ぎるほど、ほぼすべてにおいて日本製品が優っていると考えて良いでしょう。
 蛍光ペン、軸が太すぎです。どうしてこういう形にしたのか、メーカーの商品開発担当者と一度じっくり話してみたいと感じるほどです。一昔前に日本で売っていたようないまいち垢抜けていない、しかし普通のタイプもありますが。

 ハサミ、イギリスで入国審査前に没収されてしまったのでこちらで購入しようと文房具屋を探せども探せども、「安くてしっかりしたハサミ」は探すことが出来ません。没収されたハサミは100円ショップで購入したものなのですが、大きくなく、小さくなく、刃はしっかりしていて非常にお役立ちの逸品でした。それに引き換えこの国は……「これで肉でも切るンかい」というほどどデカくしっかりした7〜9ユーロのハサミか、「え? コレ鼻毛用のハサミ?」という1ユーロのハサミか、両極端なモノしか見付けることが出来ず、結局諦めました。納得の行く価格でこじんまりとしたハサミを見付けたら購入する予定ですが、恐らく私はアイルランドでハサミを購入しないまま1年を終えるでしょう。

 化粧品やシャンプー・リンスなどの日用品は1.5〜2倍の値段と考えて良さそうです。先日も書きましたが、コンタクト用品もほぼ倍の値段でした。生理用品もほぼ倍の値段でモチロン質は良くありません。ビバ・ウィスパー! ビバ・ロリエ!!って感じです。少なくない留学生が化粧品や生理用品を日本から送ってもらっているほど、価格と質に差があります。
 衣服に関しては上限はどこの国でも天井知らずだと思うので、低価格のもののみに注目しますが、日本にはユニクロという偉大なブランドがあるため、何を見ても高く感じます。もちろん質は良くないです。アイルランドにもユニクロのような店があるのですが、そこで安いTシャツを探していて、どうでもない半袖のTシャツが20ユーロ以上しました。

 他にも書籍ですが、詳しくは分からないのですが、定価というものは存在しないようです。――と言うのは価格がプリントされておらず、すべてスーパーで売られる生鮮食品のようにシールで価格が表示されており、しかも店によってその価格がまちまちなのです。とある本がA店で19ユーロ、B店では17.8ユーロと結構な価格の差があるので油断できません。
 また、これは書籍に限らず文具店やCDショップでもよく見かけるディスカウント方法なのですが、アイルランドでは(もしかしたらコークという都市固有のものかもしれませんが)「3 for 2」つまり、「3冊買ったら2冊分の値段」というような割引が目立ちます。具体例としては、ノートを5冊買ったら4冊分の値段、DVDを3本買ったら2本分の値段などです。
 またCD、DVD購入時に学生証を見せると10%割引などの学生割引も用意されており、学生への保護は手厚いように感じます。

 交通費、安いと思います。――と、言うか様々な割引制度が設けられており、更には恐らく地元民に有利なように設定されているのではないかと感じます。
 まず、多くの場合において片道と往復の料金がほとんど変わりません。具体的に言うならば、コークからとある都市まで片道12ユーロ、往復15ユーロ、という感じです。バスと電車ではバスの方が格安で、本数も多く、稀に速いこともあります。おおむねアイルランドはバス文化ですので、余程の理由がない限りバスを使います。日本ではバスを使う生活をしていなかったので料金比較は出来ませんが、例えば片道1時間30分の距離のバス料金が、往復で13ユーロ程度です。これって安いのでしょうか……?

 宿泊費は完全に安いと言えるでしょう。B&B(Bed & Breakfast)の発祥地でもある訳ですから、格安で清潔で質の良い民宿が各地にゴロゴロあります。下手なホテルに泊まるよりも余程居心地の良い思いが出来て、料金は15〜30ユーロ程度です。交通費も相俟って、この国では国内旅行が非常に気軽に出来ます。日本ではちょっと遠い温泉に1泊2日で行こうものなら交通費を含めて2万円程度出て行きましたが、こちらでは1泊2日ならば1万円以内で豪華な旅が約束されます。

 映画の入場料、これも文句なく安いです。一般人5ユーロ、学生4ユーロ。他の国も、様々な共通点を持つ韓国でさえも同じくらいだと言っていたので、日本がズバ抜けて高いのかもしれません。だからかもしれませんが、他の国の子は映画をたくさん観ています。
 インターネット・カフェ使用料、深夜や土日は少々安くなりますが、通常は1時間5ユーロ(学生4ユーロ)。決して安くありません。
 そして写真の焼き増し代……驚くなかれ、1枚0.45ユーロです。サイズも少々大き目なのですが質はそんなに良いとも思えず、それで金額が倍以上と言うのは厳しいものがあります。

 住居代は、全世界同様、都会は高く、田舎は安いといった感じです。しかし首都ダブリン市内地近辺は日本並みに高く、とても私は住めません。第2の都市であるコークでは、シェア・フラットで週60ユーロという情報を得ました。アイルランド第3の都市リムリックでは週40〜60ユーロ程度という情報もあります。またコーク・シティセンターまで徒歩5分という便利な場所での完全な1人暮らしのアパートになると、日本のワンルーム・マンションよりひと回り大き目で月450ユーロという情報もあります。
 総じて言うなら、「日本より安いことは安いが、思ったほど安くはない」という感じでしょうか。

 現在アイルランドは景気が良く、日本のバブル期のような感じらしいので、色々と物価も高騰しているのかもしれません。一昔前までは「物価が安いので語学留学にアイルランドを選んだ」という人も多かったようですが、今ではオーストラリアの方が安いのでは……と思います。


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2002年6月21日(金) 独立心と社交性
 私はハッキリ言って……と言うか、ハッキリ言わなくても社交性がない人間です。そして私の友人も社交性のないタイプが少々多く、しかも他人に依存せずに行動できる人が割合的に多いため、ベタベタした付き合いは小学校を卒業以来したことがありません。
 また、本当に信頼できる友人を持っているため、方々で取り繕うような真似をせずとも常に本音で快適に付き合うことができ、「何だかなぁ……」と思う人と努力してまで付き合おうとしたことがほとんどありませんでした。
 「ありませんでした」……そう、過去形です。最近分かったことですが、私が今まで自分に正直に生きてこれたのは、本音を話せる相手が常に身近にいたからだと気付きました……。

 本音を話せる相手がどこにもいないと、自然とそんなに好きでもないAさんにBさんの愚痴を言いそうになったり……と、日本にいた頃の私からすると「うわ、最低」と嫌悪する態度を取りそうになって、イカンイカンと思うことが時々あります。
 日本にいた頃、私は「友達」と「知り合い」の線引きを非常にハッキリとしており、そのライン基準で行くと当然アイルランドには「友達」がいないことになってしまいます。日本での「友達」は言葉が100%通じ、更には選り取りみどりに選べる中から数年以上かけて築き上げた信頼関係の基に成り立っているものなので、そういう人たちと同じような深い絆など一朝一夕に築ける訳もありません。

 そんな経緯で、現在進行形で「友達」の定義が変わりつつあります。
 日本での友達は別格扱いとして、取り敢えず一緒にいて楽しい人、自然と一緒に行動することが多くなる人、何となく好きだなぁと思える人、連絡を取り合う人はもうみんな「友達」と、そういう新しい定義が私の中に出来上がりつつあるようです。これを「諦め」と取るのか「社交性の成長」と取るのかはよく分かりませんが、こういうのも良いもんだな、と素直に思えるようになりました。恐らくこんなことは、多くの人がもっと早い段階で自然と身に付けていることなのかもしれませんが……。
 多くの人の考え方や立ち振る舞いを知ることで、自分の中に様々な反応が生まれることが楽しく、同時に日本での友達がまさに選りすぐりの一生涯モノであることを再認識しています。本当に気の合う友達を見つけることは、恐らく伴侶探しと同程度に難しいことなんだろうな、と思います。

 さて、そんなこんなで新定義での友達が出来つつある今ですが、それでもやはり日本での「あ・うん」の呼吸が成立していた友達とは勝手が違い、ぐったりすることもあります。今まさしくその状況下に置かれている筆頭項目として挙げられるのが、ドイツ人の同居人ティナ(25)なのであります。上手くやっているのは良いとして、何かにつけて
「トーコが行くなら私も行く」
という厄介な態度を取るので、独りで気ままに行動したいことがある私としては、少々気が重くなることがあります。
 夜のパブなども、最初は行くと言っていたのに、私が「私は今日は疲れているから止めておくわ」と言うと、「……じゃあ私も止めようっと」と言い出すことがしばしばあり、頼む……私の行動に関わらず、行きたいなら1人で行ってくれ……と思う毎日です。

 私は実際に外人と付き合うまで、ごく自然に「外人の方が社交性があって、独立心が強くて……」と思っていましたが、最近本当にそうなのかなぁ……とよく分からなくなることがあります。こちらにいる限り、日本人の方が個人行動している人が多いような気がするからです。例えばどこか観光地に行ったという話になったときに、日本人からは「独りで行った」という回答を聞くことが結構ありますが、ヨーロッパ人からはほとんどありません。
 国内旅行の延長に位置する場所にホリデー感覚で留学するヨーロッパ人と、会社を辞めて長期で遠い場所に留学してくる日本人という比較なので、一般的な国民性の比較ではなく、かなり偏った構成になっている可能性もあります。
 実際、ヨーロピアンは夏休みを利用した学生の1〜2ヶ月程度の留学か、有給を利用した社会人の1ヶ月以内の留学というケースがほとんどで、日本人の場合は「会社を辞めて3ヶ月〜1年」というケースがほとんどです。飛行機で2〜3時間のヨーロピアンと、13時間の日本人という物理的な距離感の覚悟もあり、ここにいるような日本人は比較的独立心が強いタイプである、というフィルタリングが成立しているのかもしれません。
 ただ、独りで行動するというのが「独立心がある」ということの表れなのか、単に「社交性に乏しい」という結果なのか、これは非常に難しいところではあるでしょう。独立心と社交性は両立できる項目ですが、両立できているのか、単に片方の欠落なのか、その見極めが難しいケースがあり、まさしく今回のような話はどちらなのか私にはよく分かりません。

 さて、ここで少々話がズレますが……。
 今の学校は非常に良いルールを設けており、同じ国籍同士でも英語以外で話してはいけないことになっています。こういうルールがあるお陰で、学校の外での集まりでもお互い英語を使うよう心掛けており、また日本人に英語で話し掛けてもそれを茶化すようなことはありません。
 しかしやはり日本人だけで会うと、最初は英語で話すよう努力しているのですが、段々と「……ちょっと今だけ」と日本語を話し出すこともあります。これはお互いストレス発散ということで、そんなにしょっちゅうという訳でもないので、私的にはこのバランスが気に入っています。

 そして本日、日本人のカオリ(23)と週末に遠出する計画を立て、最初は誰か他のメンバーも誘うかと話していたのですが、「久し振りに日本語で思う存分語りたいよね、今回は私たちだけでコッソリ行こう」ということになりました。彼女も大人数で行動するのが余り好きではない、というタイプで、しかも私と同じく「日本ってオカシイよ。もっと人間らしく生きたい」という動機の元に留学した子で、話していて視点が似ており、前から一度がっぷりと長丁場でマシンガン・トークをしてみたかったことも相俟って、私は今週末の遠出を非常に楽しみにしていました。
 毎日夕食が18時と少々早く、そのときに今晩の予定や今週末の予定を聞かれるのですが、先日ティナが「今週末はミドルトンに行く」と言っていたので、こちらも準備万端です。

 ………………しかし今晩の夕食時……。
HF 「明日の土曜日はティナはどこに行くんだっけ?」
ティナ 「ミドルトンに行こうと思ってるの」
HM 「トーコは?」
鷹瀬 「私はキラーニーに行きます」
ティナ 「あ、じゃあ私もキラーニーに行こうかな」
 え? えええぇぇぇぇ?! そんな私の了解も得ず、しかもホストファーザー&ホストマザーの前で……。
HF 「トーコ、明日は何時のバスに乗るんだい?」
鷹瀬 「8時30分にバスターミナルから出るバスに乗るので、7時45分のバスに乗ろうかと……」
HF 「じゃあ、2人を車でシティセンターまで送るから、朝はゆっくりしていいよ。8時頃に家を出ればいいだろう」
ティナ 「7時30分頃に起きればいいのかな」
 話進んでるよ。ちょ、ちょっと待って〜私の意見は……?
鷹瀬 「あ、えっと、ごめんなさい。明日のキラーニーってカオリと2人で行く予定なんだけど、あの、カオリに何も言わずに決めちゃうのはちょっと……」
ティナ 「? 何で? 私が参加すると何かマズイの?」
鷹瀬 「えっと、明日はその……日本語を使いたいなーって思ってて……」
ティナ 「使っていいよ。私は気にしないから」
 ………………いや、私とカオリが気にするんですが……。
 どうしよう……なんだか凄くマズイことになっている気がします。ホストマザーにホストファーザーも「何で? 何がマズイの?」という顔をしていますし、何だか私が物凄く意地悪な人みたいじゃないですか……。

 実は今朝もこんなことがありました。
 近くのバス停が工事のため閉鎖されていて、私たちはここ数日間、2つ先のバス停留所まで歩かねばならなくなっていました。しかし2つ先のバス停留所までたかだか徒歩で15分程度、運動不足で学校からの帰りはいつも50分ほどかけて歩いている私にしてみれば、こんなことはどうでもないことです。しかし、ウチのホストファーザーは非常に親切で、朝、車で2つ先の停留所まで送ってくれると言うのです……。シティセンターまで、と言うなら話も分かるのですが、徒歩15分程度の距離に車って……。親切なのは物凄くありがたいのですが、15分早く家を出れば解決することなので、そんなことで手を煩わせたくない、正直な話、こちらが気を使ってしまうので放って置いて欲しい……という気持ちになってしまいます。
鷹瀬 「いや、本当に、歩いて15分くらいの距離だし車なんて……。お願いですからゆっくりして下さい」
HF 「トーコ、ティナも君と同じ意見なのかい?」
 ぐは……っ。私が言い淀んでいると、タイミング良く2階から降りてくるティナ。
HF 「ティナ、工事でバス停が使えないそうだね。車で2つ先のバス停まで送ってあげるよ」
ティナ 「ありがとう!」
 車での送迎、決定ーっ!

 さて。こんな経緯が今朝あったことを踏まえつつ……。
 恐らくカオリに事情を話せばカオリは勿論OKすると思いますが、それでも何も告げずにいきなり明日の朝、私とティナが現れたら……少なくとも逆の立場で考えた場合、私は「え……?」と思います、確実に。なので、私的にはカオリに何も言わずに勝手に決めてしまうことを避けたかったのですが……。
鷹瀬 「これは国民性だと思うんだけどね(←もう必死)、例えばAとBの2人でどこかに行くと決めて、Aの友達のCがそれに加わることになったとするでしょ。でもね、それをAだけで勝手に決めてしまうのはとっても失礼なことなの。ちゃんとBの了解を得てからでないと、もしかしたらBは『嫌だな』って思うかもしれないでしょ? カオリはきっと『構わない』って言うと思うけど、まずは確認しないと、それはカオリに対してとても失礼なことでしょ? っていうか、日本ではこういうのはとても失礼なことに値するのね。私はそういうことはしたくないから」
 恐らくこんなことを気にしない日本人などゴロゴロいるでしょうが、少なくとも私の友人は気にするタイプが多いことに加え、「説明するのが難しいことは取り敢えず日本文化ってことにしとけ!」という乱暴な解決法を用い、どうにかその場を逃げ切ろうとしたのですが……。この解決法は中途半端だったようです。
ティナ 「じゃあカオリに連絡してみようよ」
鷹瀬 「今カオリと連絡を取ろうとしているんだけど、捕まらないの」
ティナ 「……なんで? 私が一緒に行くと何か不都合なの? カオリは私のことが嫌いなの?」
 返答いかんによってはカオリに迷惑がかかってしまいます……。何でこんなに大事になってしまったのでしょう……。私はただ、カオリと2人でキラーニーに行きたかっただけなのですが……。
ティナ 「……どうしてこんなに複雑になるのか分からない」
 ……私にも分かりません……どうしてここまで渋い態度を取られても引き下がろうとしないのか……
 恐らく相手が日本人ならここまで話が複雑になる前に、私の言い方や「うーん」と渋っている態度を見て、自分から「あ、じゃあいいや」と申し出を引っ込めるでしょう、100%確実に。
 しかしこういう「相手の気持ちを推し量る」「行間を読む」などという奥ゆかしい振る舞いをダイレクト万歳文化の国で育った外人に期待するのは間違っていたようです。話には聞いていましたが、本当に外人相手に「言い渋る」という態度は通用しないんだなぁ……と骨身に染みた21時。めっちゃ疲れました。

 このままでは私は完全に悪者になってしまう……と言うことで、それとなくホストマザーに私の気持ちを……。
鷹瀬 「いや〜、最初は他にも友達を誘って行こうか、って言ってたんですけど、途中で2人だけで行こうって約束したんですよ。ティナは英語が出来るし、言いたいことも言えるけど、私たちは毎日英語で言いたいことも全然表現できないから、今週末は思う存分日本語を使ってリラックスしたいね、ってカオリと話してたんですよね……」
HM 「トーコ、気持ちは分かるけど、ティナは今週末が最後の土日なのよ」
 いやだから……行きたければ行けばいいじゃん……。止めてないってば……。私だってコークでの週末は最後だもん……。

 結局23時頃にカオリから電話があり解決しました。
カオリ 「うん、私の方は全然構わないよ。って言うか、これでダメとか言ったら私のせいになっちゃうじゃん……。『もう大歓迎! すっごく喜んでた』って言っておいて」
 ――こうして私たちのマシンガン・トーク計画は丸潰れになったのであります。
 しかし「カオリから連絡があって、OKだって」と言ったときに「当然でしょう、何を今更……」という感じの態度を取られたのには少々驚きました……。ってか、普通は途中で諦めると思うので、今回のすべての態度に驚いているのですが……。

 これがドイツ人の特性によるものなのか、単なる個性なのか分からないのですが、以前ダブリンに留していた子がドイツ人のハウスメイトに対してこんなコメントを言っていたのを思い出しました。
「ハウスメイトもね……途中で凄く嫌だなぁ、って思ったこととかあったよ。ドイツ人のおじさんなんだけどね。朝学校に行くのとか、私が朝食を終えるまで待ってて一緒に行こうとするんだよね。『私は私のペースで行動するので、先に行って下さい』って言っても毎回待ってるの。こっちが先に朝食を終えた時には先に行っちゃったりしてたけど、帰りとかも学校の前で待ってることとかあってさ……。
 それとかエクスカーションでアイリッシュダンスのコンサートかなんかあった時に、私は興味ないから参加するつもりなかったのに、夕食の時にホストマザーに予定聞かれて『私たちはアイリッシュダンスのコンサートに参加します』とか勝手に言い出してさ。私は行かない、とか言ったんだけど、ホストマザーまで一緒になって『行くべきよ』とか言い始めちゃって……そういうこととかあったなぁ……」

 ………………国民性なのでしょうか……? 文化の違いって本当に思わぬところに現れるんだなぁ……としみじみ感心しました……。


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2002年6月22日(土) キラーニーに行く
 昨日のすったもんだの末、キラーニーに行って参りました。「もう気にしないっつーんだからイイよ」と思って途中途中で日本語で話していましたが……。
 広大な国立公園で大自然を満喫し、部分的に楽しかったのですが、色々あって自由度はかなり低かったです……。カオリも6ヶ月アイルランドに滞在する予定なので、「今度こそ2人でどこかに行こうね」とこっそり約束して1日を終えました。
 取り敢えず恒例の簡易写真集(3)〜Cork編に写真をアップしました。

 そう言えばキラーニーの町で「韓国人? おめでとう!」と言われたことで韓国の勝利を知ったのですが……。凄いですね、韓国。イタリアに引き続きスペインを破ってベスト4進出! そして彼らの喜びようを見ていると、素直に「優勝して欲しいなぁ」と思います。

【おまけ】
 キラーニーのショッピングセンターで見付けた変なTシャツ……。クリックすると拡大図が見られます。


日本のイメージって……


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2002年6月23日(日) 反省と繰り返し
 昨日、キラーニーでの道中で色々あって結構露骨にティナに冷たく接してしまい、その一連の出来事と鬱憤を昨晩母に1時間、本日の昼に友人に1時間、国際電話を掛けて物凄い勢いで吐き出しました。
 今までにアイルランド到着報告も含めて4回しか母に電話をしておらず、しかも毎回10分以下。最初の2回は電話を切った後に少々涙ぐんだりもしていましたが、その後は本当に電話の必要性がなく、ホームシックにもなっていないので、まさか友達にわざわざ国際電話を掛けるなどとは夢にも思っていませんでした。しかしメールを書くには余りにも面倒、加えてとにかく今すぐこの猛る愚痴を吐き出したい!ということで、メールで「日曜日の夜に電話するから」との宣言の下に、まずはウォーミングアップに日本時間の日曜早朝に愛しの母親に、そして日本時間の日曜夕方に友人にと電話したのです。
 安い国際電話を見付けておいて本当に良かった……。現在円高のため1時間話しても約1500円。私の精神安定のためなら3000円くらい払いまんがな。GlobalTel 国際電話.JP 万歳! こちらで出会った日本人留学生の多くは1分120円程度の高価な国際電話を使用しており、ことある毎に GlobalTel を薦めています。私は恐らく余り電話を掛けない方ですが、それでも重宝している GlobalTel ……もう一度言います、GlobalTel 国際電話.JP 万歳!!

 さて、母と友人に合計2時間、2日に渡ってマシンガン・トークをぶちまけたことで大分スッキリし、母からは「あなたの方が年上なんだからそのくらい我慢してあげなさいよ」と諭され、友人からは「あともう少しなんだからイイじゃん」と意外な形で現実を突き付けられ、取り敢えずは自分の気持ちを落ち着かせることに成功し、一時的に反省しました。
 でも母さん……私の方が年上ったって、28歳と25歳の関係に年上も年下もあるのかしら……。10年前ならいざ知らず、どっちも大人しかも社会人だぞ……。

 まぁさ、悪い子じゃないのはよーく分かってるし、私の度量が狭いのもよーく分かっているんだけど、私は独りで勝手に行動する人が好きなのよ。何でもちゃっちゃとやる人が好きなのよ。対偶を取ると独りで行動出来ない人とかのろのろしてるのって苦手なのよ……。もうこれは英語力とか国民性を超えて、単に相性、好みの問題だと思うんだけどどうだろう……。
 往生際悪くそんなことをぶちぶち思いつつも、やはり私の態度は子供っぽいよね、と反省し、電話を切った後には心を入れ替える気構えで準備を整えます。
 本日はホストファミリーが郊外に出掛ける際、ティナを連れ立って行ったので(※私も誘われましたが電話の途中だったので断りました)、独りで優雅な休日を過ごすことができ、気持ちのリフレッシュもばっちりです。

 そして夕方。「楽しかったよ!」という感じで帰ってきて、良かった良かった。お互い良かった。
 夕食の最中にホストファーザーが「今晩の予定は?」と聞いてきて、ティナは「どこかパブへ……」と言いましたが、私は「私は家で21時からのドラマを観るつもり」と言うと、一瞬肩を竦めて「OK、じゃあ私も家でドラマを観るわ」とティナ。
 ――OKくない。なぜだ……なぜ独りで行こうとしてくれないのでしょう……。
 ホストマザーもホストファーザーも「トーコが家にばかりいるからティナは遊びに行けないね」などと冗談っぽく言っていますが、どことなく目がマジです。でもコレって私の責任なんですか……? なんとなーくちょーっと腑に落ちないカンジなんですが……。

 また、今日は何やら特別な日で、庭などで焚き火をするという慣わしがある、という話になりました。何時から始まるのか詳細は分かりませんが、窓から煙が見えるだろうとのことです。するとティナが言うのです。
ティナ 「So we should go to watch that after the dinner!」
 ……「we」=「私たち」……「should」=「〜すべき」……ふーん……。あ……何でしょう。せっかくの決意が崩れて行く音がします。
 もしかしたら「should」というのは友人間で使う「行こうよ」的なニュアンスがある普通の言葉なのかもしれませんが、英語に不自由な私は思わずひらめく直訳に少々わだかまりを覚えます。英語できるのに「Would you〜?」とか「Could you〜?」とか、少なくとも「Do you〜?」とか……取り敢えず疑問形でないことは確かなようで……。
鷹瀬 「Sorry, I can't decide it now.」
ティナ 「Come on, To-ko. It's exercise!」
 うわ……15分の距離も車に乗ろうとした君がそれを言うか?!(※6月21日参照)
 私もここで取り敢えず黙っておけば良かったものを、思わず言ってしまったこの一言。
鷹瀬 「If you want to watch it, you should go. You don't need to wait my answer. I'll decide to go or not at that time.」
HM 「……To-ko, you are lazy.」
 うんざりしたような口調で少々語気荒く言ってしまった私に、笑顔ながらも注意するような目で優しく話を中断するホストマザー……。
 えー……やっぱり私が悪いんですか……?

 素敵な家族に人懐こいハウスメイト。それに対してどうこう思う私の方に咎があるのでしょう。他人と上手くやって行くのって大変なようで簡単ですが、簡単なようで大変なんですね。
 ちなみに私は「厄介だなぁ」とは思っていますが全然ヘコんでいませんし、今のホストファミリーが最高だと思っていますし、今の環境はベストだろうと思っていますし、別の場所に移りたいなどとは微塵にも思っていません。ただ自分を抑え切れずに素っ気無い態度を取ってしまう私にティナが気を遣っているようで、それが可哀想だな……と思うだけで。まぁ「そう思うならその態度直せよ」って感じなのですが、なかなかどうして……難しいですね。

 ――と言うことで、他人に対してどうこう思うというよりも、自分の懐の狭さにガックリ来ている毎日です。
 すべてのタイプの他人に優しい人を見ると、心の広さ云々もさることながら本当にその精神力に感服します。自分の感情を抑えるというのは私にとって一番難しいことのようですから……。自分を曲げない方の精神力は結構強いと思うのですが……それって余り推奨されない気がしますし。
 出来ればこの1年で自分を抑える方の精神力を鍛えたいものです。

【追記】
 それにしても友人に「いやぁ、全然ホームシックとかになってなくてさー」と言うと、秀逸な答えが返ってきました。
「ってか、あんたアイルランドに旅立つ数週間前にホームシックになってたよね
 そっかーっ!! アレがホームシックかーーっっ!! 確かに涙ぐみながら胃をしくしく痛めてたわ。「行きたくないよう……」って。自分の部屋で。そうかアレかぁ。いやぁ納得。私ってばホームシックを日本で既に克服してたのねー。
 こういう捻りの利いた会話が英語で出来ればねぇ……もっと生活も楽しくなると思うんですがねぇ……。それまでの道のりは険しそうです……。


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2002年6月24日(月) アイルランドゴミ事情
 ヨーロッパのリサイクル事情はドイツを筆頭に、しかし国によらず日本よりも多かれ少なかれ進んでいると思い込んでいましたが、驚いたことにアイルランドではゴミの分別を全くしていません。「全く」というのは少々言い過ぎですが、「ほとんど」とは言っても良さそうです。正確に言うならば、紙はリサイクルしているのですが、その他はペットボトル、ビニール袋、生ゴミ、可燃ゴミ、ビン、缶すべて一緒くたです。
 これには非常に驚き、「まさかそんな筈は……。回収後に分別しているに決まっている」と良きに解釈していたのですが、ホストマザーに確認したところ、回収後も特に分別はしない、との返事が返ってきました。

 アイルランドのスーパーでは手提げ袋は有料(約18円)で、そういう面があるのにゴミの分別が著しく遅れているというのは、とても不思議に映るのでした。

【追記】
 その後、ゴルウェイに移り住んだ今、スーパーマーケットの近くにビンや缶の分別ゴミ箱を見かけました。数年前からアイルランドに何回も来ている方が、こんなことをおっしゃっていました。
「数年前まではこんなのなかったし、スーパーの袋も無料だったし、分別なんて勿論なかったし、電池すら普通にゴミ箱に捨ててたんだけどねぇ。で、それをそのまま埋め立ててたし、この国は。さすがに分別する必要性が出てきたのかも」
 ……日本は環境後進国だと思っていましたが、なかなかどうして、下には下がいるようです……。


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2002年6月25日(火) アジアと欧州と謙遜と
 韓国対ドイツ戦……惜しくも0対1で韓国が敗れました。前回18日の韓国対イタリア戦のときと同様に、丁度半分が韓国人&韓国サポーター、残りの半分がドイツ人&ドイツサポーターという構成員のパブのど真ん中で韓国サポーターとして観戦していたのですが、まぁ色々とアジア人と西洋人の違いを見せ付けられて面白かったです。

 対イタリア戦の際、韓国が得点を入れると露骨に不愉快そうな顔をするイタリア応援団。韓国の勝利が決定したと同時にに席を立ち、唾を吐かんばかりの渋い顔をして帰って行く人あり……。
 それに引き換え、本日ドイツが得点を入れた際、気落ちしつつも敵のファインプレーに拍手をする韓国応援団。そしてドイツの勝利が決定したときですら、暗く沈みつつもしばらくすると敵に拍手を送る韓国人。私も後ろにいた大喜びしているドイツ人に「おめでとう」と言ったのですが、私を韓国人と勘違いしている彼の態度たるや……。
鷹瀬 「Congratulations.」
ドイツ人 「We were better than you.
 うわ〜……もービックリ……。負けた人が祝福しているというのに、「俺らの方が君らより良かった(良いプレーだった)」と面と向かって言い切ってしまうこの神経!! これ、逆だったら……つまり韓国が勝利してドイツ人が祝福したら、多くの韓国人は「Thank you.」と言うでしょう。というか、実際に言ってました。前回の対イタリア戦で。
 たまたまこの人がこういう人だった、という話かもしれませんが、この話を同国籍のティナにすると、
「それって男の人でしょ。女の人ならそんなふうには言わないと思うよ。女性の方が男性より礼儀正しいから」
と言っていたので、じゃあ男性ならこういうことを言っても不思議ではないんですね、という感じです……。

 優しくないとかそういう訳ではなく、やっぱ肉食の人種ってのは根本的に違う思考回路、違う振る舞いをするんだな、としみじみ思った午後2時。色々面白いです。

【追記】
 本日23時20分に夕日が地平線に沈んでゆくのを見ました。アイルランドの夏は日が長くて得した気分になります。


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2002年6月26日(水) 不法滞在10日目
 詳細は後日まとめますが、今月の16日で滞在許可の期限が切れており、何度も入国審査に行っているというのに日本人留学生の中で有名な「コーク入国審査意地悪おばさん」の関門を突破できず、何をどうしても滞在許可を貰えません……。
 次のゴルウェイにて希望を託すことになりました……。


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2002年6月27日(木) 韓国戦論議
 25日の日記でドイツ人に驚くようなことを言われた旨を書きましたが、それに対して「共同開催国日本では全く放送されていない」という事実を含む韓国戦に対する各国での抗議に関する内容のメールを何通か頂きました。
 私のようによく分かっていない方のために、とても明快に事態を説明してくださった方のメールの一部を抜粋させていただきます。(Mさん、ありがとうございます。非常に分かりやすくて参考になりました)
 鷹瀬さんが話したドイツ人は、恐らく鷹瀬さんのことを韓国人と誤解したので、「We are better than you」という言葉で、苛立ちをぶつけてきたのだと思います。
 今回の件は、決して人種差別からきているわけでもなく、韓国人差別でもないと思います。
 韓国戦の審判に圧力をかけ、試合を韓国有利にすすめさせたと思われる人物または団体がいるとの疑惑があり、それが純粋にサッカーが好きな人々の気持ちを踏みにじったことに対して、苛立ちを覚えているというのが本当のところではないかと思います。
 そして苛立ちをぶつける対象となっているのが、韓国人と韓国チームのサポーターとなっているのだと思いますよ。

 対スペイン戦のときの「おいおい、これはゴールだろ」というシュートのノーカウントの現場は見ていましたが、私的にはこれは審判のミスだよなぁと思っており、私の周囲も韓国を責めるのではなく審判を責めていたのでのんびりと構えていたのですが、審判買収の噂やらインターネット上での激しい討論やら、事態は殊の他深刻なようです。

 さて、私は単に目の前にある試合を楽しんだに過ぎない一介の観戦者であり、純粋なサッカーファンではないため事態の深刻さについて行くことがいまいち出来ないのですが、私はあのドイツ人の
We were better than you.
という発言を、差別発言と捉えた訳ではなく、無礼と捉えた訳でもなく、例え上記のような苛立ちの事情があろうとも、とりあえず目の前の本人に向かって言えてしまう強さ(?)に非常に驚いたのです。
 この人が普段はこんなことを言わない人かもしれない、という可能性はこの際横に置いておいて、例えば逆の立場で日本が疑惑を抱えたドイツに勝ったとして、心の中で「当たり前だ、ザマアミロ」と思っていたとしても、目の前のドイツ人が私に「おめでとう」と言ったら、私はえっへらと笑って「ありがとう」と言ってしまうと思うんですね。頑張って「ありがとう」と言わずに苦笑いで渋い思いを表現できたとしても「私たちの方がアンタらより良いプレーだった」とは絶対に言えません。絶対に。そしてこういう態度を取ってしまうのは、私だけではないと思うのです。
 つまりはこれこそが国民性の違いではないかと、そう思う訳です。突飛な話をするならば「これが肉食と草食の違い?」とか思ってしまう訳です。(まぁ韓国人なら言えるかもしれませんが……)

 馬鹿みたいに笑って「ありがとう」と言ってしまえるのが礼儀正しいとは毛頭思いませんし、私はあの話を無礼云々というつもりで書いたのではないのです。ただもう本当に、基本姿勢が違うとしみじみ思ったのであります。
 面と向かって抗議が出来ない日本人というのも厄介な国民性ですからね……。奥ゆかしさは時として良くもあり、悪くもあり。恐らくどこの国にもこう言った「良くもあり、悪くもあり」という面があるのでしょうが、それにしても国民性って面白いです。

【おまけ】
 本日ローカル・パブで見つけた面白い男女トイレ識別標識。洒落てる……。

 
写真を撮っていたら胡乱な目で見られました……。


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2002年6月28日(金) さよならコーク
 短いだろうと覚悟していた6週間でしたが、本当にあっと言う間でした。最高レベルのホストファミリーに恵まれ、学校の方はまぁそこそこでしたが初めに通う学校としては良かったかなと思える学校で、恐らく長く付き合うことになるだろうな、と思える友人に出会うことができ、環境を変えたいという気持ちは多少あるのですが、30kgの荷物を前に今はもうコークを離れたくありません。
 しかし良くも悪くも次なのだ!と言うことで、明日バスで4時間掛けてゴルウェイに引越します。

【追記】
 別れの日、驚いたことに私ってば泣きました。絶対泣かないと思っていたのですが自分にビックリ。どうやら私は心に健康的な生活を送っているようです。……もとから感動気質が強いのですが。


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